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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第三章 学園一年目

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第86話 プライベートビーチ

 チェリシアが進んでいく先は、シェリアの街を出て岩場へと向かったところにあった。

 そこはしっかりとした杭が打たれて仕切られたスペースとなっており、その中には小屋が建っている。


「ふふん、これは私たちのプライベートビーチよ」


 入口を前に振り向いたチェリシアは、ドヤ顔を披露しながらロゼリアたちに発表している。だが、困ったことに誰一人としてプライベートビーチを理解してくれない。やることなすことすべてが裏目に出るチェリシアである。


「お姉様、ちゃんと説明して下さいませ。ここはわたくしたちコーラル伯爵家の専用の浜辺だと。みなさま、このように他の人が立ち入れない浜辺のことをプライベートビーチというのですわ」


「なるほど」


 見かねたペシエラの説明でみんなが理解してくれた。

 そもそも、この世界には水場で泳ぐという風習がないのだから、分かるわけがないのである。

 だが、チェリシアはせっかく水着を作ってきたのにとぶつぶつと文句を言っていた。


 プライベートビーチに足を踏み入れると、見えていた小屋へと入る。ここには休憩設備のほかに更衣室などが備え付けられている。男女別になった更衣室はカギがかけられるようになっていて、中には水魔法を込めた魔石が設置してあり、水浴びができるようになっている。

 女子用の更衣室に入ると、チェリシアが以前に採寸をして作ってもらった水着を取り出す。それぞれ着替えるわけだが、初めて着る水着にはみんなが悪戦苦闘。なんといってもその露出の高さには抵抗があったようだ。


「さぁ、着替えたらこのビーチサンダルを履いてね。ブーツじゃ歩きにくいし、裸足だとケガをするかもしれないからね」


 チェリシアは備え付けのビーチサンダルを善人に履かせている。もし変なものを踏み抜いたらいろいろ大変だからだ。

 水着に着替えて浜辺に出てくると、チェリシアはさらに収納空間からいろいろと取り出している。大きな日傘のようなものに、木で作られた椅子。そう、ビーチパラソルとビーチチェアである。

 どうやらチェリシアは、みんなに海での楽しみ方というのをたっぷり教える気のようだ。

 それ以外にもビーチボールやらシャベルやら、いろいろと取り出している。


「チェリシア、このシャベルで何をするのよ」


「こうするのよ」


 どう見ても園芸用のシャベルを見たロゼリアが問いかけている。そしたら、チェリシアはみんなの前で座り込み、砂をいじり始めた。

 砂を集めて何かの形へと固め始める。細かいところの調節にシャベルを使っているようだ。


「じゃーんっ! 砂のお城よ!」


「おーっ」


「チェリシア様、素晴らしいですね」


 一生懸命作り上げた砂の城に、みんなが感動しているようである。

 貴族令嬢といえばあんまり土いじりをすることはないのが普通である。とはいえ、チェリシアが砂で作り上げた城というのは、不思議と令嬢たちの心を捉えたようである。

 そこに、すかさずチェリシアはまだ試作品であるカメラを取り出して、パシャリと砂の城を撮っていた。


「チェリシア様、それは?」


「これはカメラというものですよ。まだ試作段階のもので調整は必要なんですけどね。ペシエラが作り出したんですよ」


「お、お姉様。ここで言いますの?!」


 チェリシアにばらされてしまい、ペシエラが呆れてしまっている。

 ペシエラの反応を見ながら、チェリシアは可愛く舌を出している。いわゆるてへぺろである。

 次の瞬間、打ち寄せてきた波がチェリシアの作った砂の城を崩してしまう。


「ああ、せっかく作り上げましたのに……」


 プラティナがとても残念そうにつぶやいている。


「砂を簡単に固めただけですから、ほうっておいてもいずれ崩れてましたよ。それが早いか遅いかだけの話です。だから、こうやってカメラに収めたんじゃないですか」


 そういってチェリシアは、収納空間から紙を取り出している。そこにカメラを向けて、現像モードにしてカメラを使用する。すると、先程撮ったチェリシアの作った砂の城がはっきりと写し出された。


「まあ、カメラってすごいですわね」


「むむむ、ドール商会としては負けていられません。もっと素晴らしいものを作り出さなければ……」


 プラティナは単純に感動していたものの、ブラッサは対抗意識を露わにしていた。さすがは王国一の商会の関係者である。

 ここまでできるカメラもまだ未完成というのだから、今後どうなるのか分かったものではない。

 カメラの実力を披露できたチェリシアは、カメラと写真を収納空間へとしまい込んだ。


 それ以外にも、チェリシアが取り出した獣の皮で作ったビーチボールなるものでも遊んでみた。風魔法で膨らませ、土魔法でしっかりと栓をしたボールは、思いの外、重量があった。

 魔法を使わずにボールをいつまで浮かせ続けられるか、アイリスも含めて七人で試しにやってみた。ここで意外な力を発揮したのが、グレイアとアイリス。さすがは鍛冶屋の娘であるグレイアと、裏の仕事をこなしたことのあるアイリスである。

 こうして、ロゼリアたちは日が暮れるまでの間、それは楽しく過ごすことができたようである。

 水着を含めていろいろと発表のできたチェリシアはとにかく満足そうだ。

 遊び疲れた一行は、シャワーを浴びてから服を着替え、ゆっくりとコーラル伯爵別邸へと戻っていったのであった。

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