第82話 ロゼリアとの合流
思わぬ出来事が起こったものの、チェリシアたちは無事に教官たちが投げ捨てたというふたつの宝珠を回収することに成功する。
便宜上、召喚の宝珠と名付けられた青色の宝珠、どうやら召喚できるのは魔物くらいで、神獣や幻獣を召喚できるような代物ではないらしい。蒼鱗魚たちの証言でもそうだし、チェリシアの鑑定魔法による結果でもそのような結果となっていた。
ところが、この召喚の宝珠は、魔力を込め直せば再利用が可能というわけで、仕組みを解明したいとかいうチェリシアの収納空間行きという結果に落ち着いたようである。
調査を終えて一泊をしたチェリシアたちは、アクアマリン子爵に挨拶をして、二日間かけて、王都まで戻っていった。
王都に戻ったチェリシアたちは、マゼンダ商会へと赴き、ロゼリアと合流する。
「お帰りなさい。目的は達成できたかしら」
「ええ、ばっちりよ」
商会長室にいたロゼリアを訪ねると、開口一番、結果について尋ねられてしまう。Vサインを作りながら、チェリシアは満面の笑みで答えている。
そんなチェリシアに呆れた視線を向けながら、ペシエラはロゼリアに話しかける。
「ロゼリア、いろいろと報告したいことがあるのだけれど、時間は大丈夫かしら」
「ええ、問題ないわ。サファイア湖でのことよね?」
ロゼリアは質問に答えながら、確認をしている。当然ながら、ペシエラは首を縦に振る。その様子を見たロゼリアは、応接用のテーブルへと進んでいく。それに同調するように、チェリシアたちも同じようにテーブルを囲んで座った。
「まあまあ、口で説明するよりも、これを見た方が早いわ」
テーブルに座るなり、チェリシアがにこやかに両手を上げてにこやかに笑っている。
「アイリスさん、頭の飾りを取ってもらっていいかしら」
「え、ええ」
アイリスはチェリシアに頼まれていたヘアバンドを取り外す。
どのヘアバンドをごそごそといじると、なんと飾りの一部が取れてしまった。
「ふふん。ペシエラがカメラを作ったもんだから、私も対抗して密かに作っていたのよね。私の前世の世界にあったドライブレコーダーっていうものをヒントにして、写真魔法を発展させた録画魔法をこの魔石には施しておいたのよ」
「ぜ、前世? ど、どら、ドライブ……?」
チェリシアの話す内容を聞いて、アイリスはちんぷんかんぷんになっている。
「ただ、音はまだ録れないのよねぇ。映像だけになるけれど、確認してみる?」
「ええ、見た方が早いならそれで」
チェリシアがウィンクしながらロゼリアに尋ねると、即答が返ってきた。
というわけで、早速サファイア湖での出来事を再生する。
ペシエラに教えた探知魔法の画像化の要領で、魔石に記録された映像を映し出す。ちなみにこれは、アイリスの目に連動して動画を保存しているらしい。
どこから映し出されたかというと、水着に着替えたところからだった。チェリシアがヘアバンドの装着を頼んだのがこの時だったのだ。
水着にはしゃいだり、エアリアルソーサーで水中に飛び込む様子など、ロゼリアはその様子に思わず口をへの字に曲げてしまっている。逆行を経験しているとはいえ、ロゼリアの感覚はまだまだ普通なのだ。
いろいろとツッコミを入れたいところだったが、途中から現れた大きな魚に言葉を失ってしまう。
大きな魚を指差しながら、パクパクと口を動かしている。まるで魚になってしまったかのような状態だ。
とはいえ、ひとまず流れを見せるのが重要と、サファイア湖から出ていくまでの様子をロゼリアに見てもらった。
「途中に出た魚だけど、蒼鱗魚っていう幻獣らしいわ。私すらも聞いたことのない存在よ。ロゼリアは知ってた?」
魔石を収納魔法に片付けながら、ロゼリアに確認するも、ロゼリアの答えはノーである。
蒼鱗魚も神獣使いもまったく見聞きした覚えがないとのこと。
少し悩んだ結果、王家に報告するということに決定した。自分たちだけで抱え込むにはあまりにもことが衝撃的すぎるのだ。
「はっきり言えるのは、私たちの持つどんな知識も、もうほとんど役に立たないだろうってことかしらね。あとは、アイリスさんの証言から、敵はパープリア男爵家だろうっていうことくらいかしら」
「それは間違いないですわね。夏の合宿の場にあんな罠を仕掛けていたんですもの。間違いありませんわ」
三人が意見を一致させると、そろってアイリスの方へと視線を向ける。
急に顔を向けられたものだから、アイリスは思わずぎょっとしてしまう。
「アイリス、私たちの話は理解できないことが多かったでしょうけれど、あなたをただの駒扱いしたパープリア男爵の企みを止めるため、私たちに協力してくれないから」
ロゼリアから強いまなざしとともにかけられた言葉に、アイリスは考え込む。
だが、その結論は、思った以上に早く出た。
「どうせ一度死んだはずの身です。ぜひとも協力させていただきますとも」
この三人は、決して敵に回してはいけない。アイリスの中にはそんな考えがあったからだ。実の父を敵に回すのとどちらがマシか。その結果が、この結論なのだ。
だが、この時の選択が、紡がれることのなかったアイリスの人生を驚くべきものに変貌させるとは、誰しも思わなかったのである。




