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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第三章 学園一年目

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第80話 蒼鱗魚

 お昼を済ませたチェリシアたちは、探索を再開する。

 目的の宝珠はサファイア湖の中を動き回っており、どうやら一筋縄でいかなさそうだ。


「エアリアルソーサー!」


 チェリシアは空飛ぶ空気の受け皿、エアリアルソーサーを発動してこれで水中を探すことにしたようだ。周りを別の魔法で囲むことで、水中でも動けるようにしたようである。こういう時の発想力は、相変わらずといったところだ。

 まずはサファイア湖の上を、目的の場所の近くまでエアリアルソーサーで移動する。そこで潜水モードに切り替えてから、湖の中へと入っていく。

 この短時間の間に、チェリシアはひとつ、ペシエラにアドバイスをしていた。


「ソナーモニター」


 ペシエラが魔法を使うと、目の前に人の顔ほどの四角い窓が出現する。これが、チェリシアがアドバイスした魔法である。


「変な点が点滅してますね」


「そう、これが私たちの位置。で、こっちで青く光っているのが、探しものの位置。いやぁ、ペシエラは天才だわ。前世の魚群探知機のようなものを再現してみようと思ったんだけど、こんなに簡単にやってのけるだなんて」


 アイリスの反応に、チェリシアが答えている。かと思ったら、ペシエラの能力の高さにものすごく喜んでいる。相変わらずの姉バカを披露している。

 こういう流れで、ペシエラの探知魔法で周囲を探りながらサファイア湖の中の探索を再開させる。

 しばらくすると、探知魔法が何かを捉えた。黒い影のようなものが魔法に映り込んだのだ。

 かなり近いので、防護魔法をしっかりと強化をした上で周囲をぐるりと見回す。そんな三人の視界に、体長が三メートルはあろうかという大きな魚の姿が映る。


「さ、蒼鱗魚(サファイアフィッシュ)……っ!」


 魚の姿を見た瞬間に、アイリスが声を漏らしている。どうやら、この魚のことを知っているようである。


「アイリス、この魚のことをご存じなのかしら」


「はい。パープリアの家にいた頃に薬学を勉強していた話はしたと思います。その時にほぼ必ずと言っていいほど出てきた、毒物への特効のある鱗を持つ魚の名前が出てきます。それがこの蒼鱗魚なんです。まさか……実在しているなんて!」


 ペシエラの質問に答えながら、アイリスは少々興奮をしているようだった。

 獰猛なケルピーに続いて、万能薬になる鱗を持つ蒼鱗魚。サファイア湖の中は、不思議に満ちあふれているようだ。


「ペシエラ、宝珠の反応はこの蒼鱗魚のお腹の中からするわね」


「そのようですわ。でも、どういたしましょうかね」


 チェリシアから声をかけられたペシエラは、目の前の大きな魚を見ながらどうすべきか考えていた。大きさを考えれば、自分たちなど一飲みなのは間違いないのだから。

 考え込んでいると、蒼鱗魚がこちらに気が付いたのか突進してくる。ものすごい勢いだったので、ペシエラたちは身構えてしまう。

 ところが、蒼鱗魚はぶつかる寸前にぴたりと動きを止めていた。


「おやおや、お前さん方、不思議な魂を持っているねぇ」


「えっ?」


「しゃ、しゃべったぁーっ!」


 魚が口を利いたことで、チェリシアたちはそろって慌てふためいている。


「私のお腹のものを回収しに来たのかい? ちょっと待ってておくれ」


 蒼鱗魚は完全に落ち着いている上に、チェリシアたちの目的を知っていた。

 ぐぐっと体を丸めると、口からポンっと宝珠を吐き出している。その宝珠は、どういうわけかアイリスの手に転がり込んできた。


「なんだか危険な感じがしたんでね、私が回収しておいたのさ。いやはや、取りに来たのがいい子ばかりで安心したさね」


 蒼鱗魚はなんとも年寄りくさいしゃべり方をしている。


「まあいいかね。もうひとつも回収してもらって、話はそれからにしようかい」


 チェリシアたちが落ち着かないうちに、蒼鱗魚は後ろに回ってチェリシアたちの入った防護壁を唐突に押し始める。


「ちょっとぉおっ!」


 急に押されたものだから、チェリシアたちは勢いに押されてバランスを崩して倒れてしまう。エアリアルソーサーは柔らかいのでケガはなかったが、アイリスの身につけているものに当たったらただでは済まなかっただろう。


「いやぁ、少しでも早い方がいいと思ったからねぇ。すまなんだね」


「で、できれば合図が欲しかったわよ……」


 蒼鱗魚は謝罪しているものの、倒れた時に少し体を打ったのでチェリシアたちは体を擦っている。

 目を開けて前を見てみれば、蒼鱗魚がもう一匹いるではないか。巨大な二匹の魚に正面から見つめられるという状況に、三人は思わず震えてしまう。


「あんた、お客人だよ」


「おや、お前。ああ、なるほどなぁ。ちょっと待っておくれ」


 夫婦のような会話を交わしたと思ったら、あんたと呼ばれた蒼鱗魚も、同じように体を丸めて口から宝珠を吐き出していた。これもどういうわけか、アイリスの手に落ちてきた。


「これで目的達成ですわね。それじゃ、さっさと戻りましょう。ありがとうございましたわ」


「ちょいと待ちなさい」


 蒼鱗魚にお礼を言って、チェリシアに頼んで帰ろうとするペシエラだったが、なんと蒼鱗魚に呼び止められてしまう。

 なんだろうとかと思って振り返ったチェリシアたち。そこにあったのは、アイリスの顔をじっと見つめる蒼鱗魚の姿だった。

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