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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第三章 学園一年目

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第71話 それは雷のように

 どこからとも飛んできた魔法が、魔物たちを襲う。

 突然の攻撃に、魔物たちは怯んでいるようだ。


「大丈夫か!」


 この声とともに、まだ休憩ポイントに姿を見せていなかった攻略対象たち五人が姿を見せた。属性から考えると、どうやらシルヴァノの放った魔法のようだ。


「なんなんですか、この魔物たちは」


 状況を見たチークウッドが叫んでいる。

 魔物がほとんど出ないはずのアクアマリン子爵領でこれだけの魔物が姿を見せたのだ。驚くなという方が無理である。


「どうやら、休憩ポイントに魔物のを召喚する罠が仕掛けられていたみたいです。今いるのは第二波ですので、まだ油断はできません」


 チークウッドの声に、ロゼリアが答えている。


「学生たちの集まる現場に罠を仕掛けるとは、確実に俺たちを狙ったというわけか。なんて手の込んだ真似を」


 怒りを露わにしながら、ペイルは剣を構えて魔物を見据えている。


「ここはチェリシア様の張った防護魔法がありますので、みなさまはそれほど危険ではないと思われます」


「そのチェリシア嬢は?」


「他のポイントの援護に向かっていただきました」


「そうか」


 ロゼリアから状況を聞き取ったシルヴァノは、こくりと頷いてペイルと同じように魔物へと向き合っている。


「はっ、ちょうど暴れたいと思っていたんだ。どこの馬鹿か知らないが、せっかく用意してくれた獲物だ。遠慮なくやらせてもらおう」


「ご無理はなさらないで下さいね」


 やる気十分なペイルに、ロゼリアは冷静に忠告をしている。

 前衛はペイルとオフライト、後方の討ち漏らしをシェイディアたちと一緒にシルヴァノとチークウッドが対処をする。

 さすがは攻略対象たち。見事な連携で魔物たちを次々と打ち倒していった。


 再び、ペシエラ。

 ここにもたくさんの魔物が集まっているが、ケルピーの存在がかなり大きく、魔物たちは怯んでいる。その上、ケルピーはまだこちらに気が付いていない。時間的余裕はありそうだが、ペシエラはこれだけで済むような気はまったくしなかった。

 それというのも、感知魔法で他の場所の状況も把握していからだ。他の休憩ポイントの魔物の数はどんどんと減っていっている。おそらくロゼリアとチェリシアによるものだろうと思われる。


(再び魔物の数が増えましたわね。となると、召喚魔法自体を崩さないと終わらない可能性がありますわね)


 そう考えたペシエラは、休憩ポイントにいる学生たちを自分の周りに集め、防護魔法で囲む。この時、とにかく音を立てないように注意をしておく。

 次の瞬間、ペシエラは防護魔法の外側に、慎重に魔力の糸を展開していく。ヒントにしたのはクモの巣だ。

 気づかれないように張り巡らされていった魔力の糸は、やがて魔物たちに触れていく。そうなると、順番に魔物がペシエラたちへと攻撃を仕掛け始める。

 ケルピーもほぼ同時に触れたようで、ペシエラに気が付いて水を集めて攻撃を仕掛けようとしている。


「気づくのが、遅いですわよ!」


 ケルピーが水球を放つよりも先に、張り巡らせた魔力の糸に雷の魔法を走らせる。クモの巣状に張られた魔力の糸に触れていた魔物たちは、ペシエラの強力な雷の魔法に打ち据えられていく。

 特にケルピーは水属性のために雷の魔法が面白いほどに効く。あっという間に真っ黒こげとなり、その場に倒れてしまう。

 多くの人間を自分の領域に引き込み屠ってきた恐怖の魔物ですらも、ペシエラの前にはまったくなすすべがなかった。

 それと同時に、周囲から何かが爆発するような音がたくさん聞こえてくる。魔力が弾け飛ぶことを感じたペシエラは、これが魔物たちを召喚した魔法陣だとすぐに分かった。あまりの数の多さに、さすがのペシエラも血の気が引く。


「ぺ、ペシエラ様。これは一体……」


 魔物をすべて倒してほっとした学生のうち、アイリスが左手を差し出しながら、ゆっくりとペシエラに近付いてくる。

 ところが、その姿に違和感を覚えたペシエラは、少し後ろに下がって収納空間から剣を取り出し、それをアイリスに突きつけた。


「な、何をなさるのですか、ペシエラ様」


「それは、こちらのセリフですわよ、アイリス様。わたくしが気付いていないとでも思いまして?」


 魔物をすべて倒してやっと安心できると思ったのも束の間。目の前で繰り広げられるペシエラとアイリスのやり取りに、グレイアたちは理解が追いつかなかった。

 次の瞬間、ペシエラの剣先から微弱な雷の魔法がほとばしる。


「きゃああああっ!」


 雷に打たれたアイリスは、悲鳴を上げている。


「ペシエラ様、一体何をなさって……っ!」


 グレイアが疑問をぶつけるも、その瞬間、目の前で起きたことに驚かされてしまう。

 アイリスの右手からナイフがこぼれ落ちたのだ。護身用だったとしても、相手に見えないような状態で持ったまま近づくのはおかしな話である。

 さらに、時間差で倒れ込んだアイリスの服から、宝珠のようなものが転がり出てきた。

 こうなると、いよいよアイリスへの疑惑が強まっていく。


「アイリス・パープリア。あなたを魔物による襲撃の実行犯として拘束させていただきますわ」


 倒れ込んだアイリスへと、ペシエラから蔑みの目と非情の言葉が放たれたのだった。

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