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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第三章 学園一年目

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第70話 襲い来る魔物たち

 ザバーンという音が聞こえると同時、魔物が出現する。

 そこにいたのは、青色の馬ケルピーだった。

 ケルピーというのは地上では青色の体を持つ普通の馬で、水中では後ろ足が魚に変化する。さらには気性がとにかく荒く、獲物を水中に引き込んでは食い殺すという、危険度の高い魔物である。

 そんな危険な魔物が修験したことも驚きだが、ペシエラはそれよりも重大なことに驚いていた。

 ペシエラは常に魔物の気配を探っていたにもかかわらず、その感知に引っかかることなく魔物が出現したのだ。ゆえにペシエラのショックは計り知れないものである。


(三年前の魔物氾濫といい、今回といい……。まったく想像のつかないことばかりが起きますのね!)


 逆行前とはまったく違う展開の連続に、ペシエラは焦っている。

 ペシエラのいる休憩所には他にも学生がいる。この状況で、みんなを守りながら戦えるのか。否、守らなければならない。

 逆行前の女王になった経験から、ペシエラはケルピーを目の前に怯むことなくしっかりと身構えた。


 一方のその頃、後発隊であるロゼリアたちも別の休憩ポイントで休んでいた。そこにも数班が合同で休憩をしており、とても楽しそうに過ごしている。

 ところが、こちらの様相も、一瞬で変化してしまう。

 ペシエラたちのところと同じように、魔物が出現したのだ。


「なっ、魔物?」


「どうして。感知魔法にはまったく反応がなかったのに」


 チェリシアを含めた休憩ポイントにいた学生たちが騒めく。


「どうやら、この魔物たちは召喚されたようね」


「召喚魔法?!」


 なぜか動かない魔物たちを見たロゼリアの冷静な声に、チェリシアが驚いている。

 ロゼリアが指差した先、魔物が出現したあたりからは黒いもやが上がっているのが確認できる。つまり、事前に休憩ポイントを狙って、誰かが罠を仕掛けていたというわけである。

 これは逆行前では確認できなかったことだ。あの時のロゼリアは他の学生と同じように慌ててしまったためである。

 それが今回指摘できたのは、起きることが分かっていたので、心構えが違っていたことが大きいと思われる。

 そして、ロゼリアはチェリシアに感知魔法を広範囲に適応することを指示する。すぐさま感知魔法の範囲を広げると、休憩ポイントの周囲にだけ魔物の反応がたくさん出ていることが判明した。

 明らかに学生たちを狙った計画的犯行である。


「まったく……。なんて殺意の高い計画なのかしら」


 ロゼリアはギリッと唇をかみしめる。


「チェリシア、魔物の数は?」


「ここだけで五十くらいよ。他も同じくらい。でも、ペシエラのいるあたりにいる魔物が一番強いみたい」


「……ケルピーね」


「ケルピー?」


 チェリシアはみんなを守るために防護魔法を展開しながら、ロゼリアの反応を聞いて聞き返している。


「シアンから聞いたことがあるわ。アクアマリン子爵領でうわさされている馬の形をした魔物よ。ペシエラなら大丈夫でしょうけれど……」


 ロゼリアが説明をしていると、先程までまったく動こうとしなかった魔物たちが動き始める姿が見えた。

 どうやらゆっくりしている場合ではなさそうだ。


「チェリシア、エアリアルソーサーで他の休憩ポイントの支援を」


「ロゼリアは?」


「ここの魔物を倒すわ。さぁ、早く行って!」


「了解」


 ロゼリアに言われたチェリシアは、エアリアルソーサーを出して飛び去っていく。

 チェリシアを見送ったロゼリアは、改めて目の前の魔物たちに視線を向ける。


「さぁ、あなたたちの相手は私よ。これでも鍛練を積んできたんだから、あなたたちになんて後れは取らないわ」


 ロゼリアはそういうと、地面に向けて魔法を使い、剣を取り出した。

 チェリシアの使うエアリアルソーサーに影響を受けて、合宿に向けて行ってきた鍛練で新たに身につけた魔法だ。土属性だけではなく、風属性と水属性でも行える。

 作り出した土属性の剣を握りしめたロゼリアは、魔法を併用しながら魔物へと立ち向かっていく。

 今いる魔物たちは、それほどの強さを持っているようではなく、ロゼリアはしっかりと対応できている。だが、それでも一対多数という状況なので、どうしても討ち漏れが出てしまう。

 だが、ここにはシェイディアとプラティナもいて、二人も参戦して魔物たちを倒していっている。

 思ったより連携がうまく取れており、このまま討伐が終わる。そう思った時だった。


「なっ、第二波ですって?!」


 なんということだろうか。召喚魔法が再発動し、新たな魔物を呼び出したのだ。どうやら念入りに計画されていたようである。

 ざっと見た感じは数は先程とあまり変わらない。だが、魔物の強さは今回の方が強そうである。

 これは接近戦は危険と判断し、魔法を主体とした攻撃に切り替える。近付いてきた魔物のみを剣で撃退する。

 他の学生は魔物に不慣れのようで、まったく戦力にならない。自分たちが倒れれば、すべての学生が危険にさらされる。ロゼリアの表情が険しくなる。

 第二波の魔物も、最初と同じでしばらく戸惑っていたために、第一波の魔物はほぼ討伐が終わる。だが、交戦の音で気づかれたのか、休む間もなく第二波が押し寄せてくる。

 第一波の討伐で思ったより消耗してしまったロゼリアたちでは、第二波の襲撃に耐えられるか分からない。それでも、みんなを守ろうとして、ロゼリアは剣を構える。

 覚悟を決めたロゼリアだったが、魔物を蹴散らすように、どこからともなく魔法が飛んでくるのだった。

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