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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第三章 学園一年目

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第69話 サファイア湖オリエンテーリング

 初日からいろいろとあったアクアマリン子爵領のサファイア湖で行われている、サンフレア学園の夏合宿。

 心配とは裏腹に、特に問題もなく順調に日程を消化していっている。

 ただ、食事に関してはチェリシアとペシエラがしょっちゅう手伝いに出ていっており、貴族令嬢としてどうなのよと、ロゼリアの頭を悩ませていた。


 そして、合宿はいよいよサファイア湖の周囲を探索して回るオリエンテーリングの日を迎える。

 このオリエンテーリングは、湖の周囲を歩き、ところどころに配置されたチェックポイントに用意されている課題をクリアして、出発地点に戻ってくるというものである。


「さすがにお姉様とは分かれてしまいましたか」


「ペシエラ、頑張りましょうね」


 オリエンテーリングの班分けは、剣と魔法の実力などから割り振られている。

 ただ、ロゼリアの班はチェリシアとプラティナにシェイディア、ペシエラの班はグレイアにアイリス、それと男爵令嬢が二名。バランスはいいのだが、かなり偏りがあるように思える組み合わせとなっていた。

 こんな組み合わせになったのも、このオリエンテーリングの場で魔物の襲撃が起きるという情報を得たからこそ。ガレンが一方的にこの組み合わせを通したのである。

 班分けが終わり、いよいよオリエンテーリングが始まる。直前に感知魔法を使って周囲を調べたものの、これといって危険なものは何もなかった。すんなわけで、安心してスタートである。

 順番もあらかじめくじで決められており、ペシエラの班は最初の方、ロゼリアの班は最後で、本当のラストのシルヴァノたちの班の直前である。その後ろに三名ほどの教官と護衛がついて行くという体制だ。

 ひと班ずつ時間を少しずつずらしながら出発していく。

 探索のチェックポイントには課題が設置されている場所と休憩ができる場所があり、休憩ポイントでは食事をすることも可能である。

 課題は知力や技術を必要とするものが用意されており、結構な学生たちが苦戦しているようである。

 そんな中、ペシエラの班が最初のポイントに差し掛かる。チェックポイントには立札があり、そこに課題が書いてあるようだ。


『看板の位置から、木々に用意された的を魔法で撃ち抜け』


 課題を見たペシエラが周囲を確認する。そこには、色とりどりな的がつけられた木があった。

 なんとも簡単な課題であり、ペシエラは看板よりも離れた位置から、的に向かって水の魔法を放つ。かなりの勢いをつけたこともあってか、撃った瞬間に構えたペシエラの腕が軽く押し返される。

 放たれた水は的を見事に撃ち抜いている。その瞬間、アイリスに持たせていたチェック用紙が光を放つ。これは、課題を突破できたという証である。

 あまりにも簡単にペシエラが成功させてしまったので、先に来て手間取っていた学生たちは目を丸くしている。

 その様子を見ていたペシエラは、お節介にも他の班のクリアを手伝ってあげた。以前のペシエラなら考えられなかったことだ。

 みんなが使う魔法に、ちょっとだけ魔力を乗せてあげると、他の班の学生たちも次々と的に魔法を命中させることができたのだった。


「こ、こんなに簡単に当たるものなのか?」


「こういうのはちょっとしたコツがありますのよ。それを実現するには日々の研鑽がものを言いますの。努力を怠らないことですわね」


 唇に人差し指の背を当てながら話すペシエラの姿は、とても十歳とは思えない。

 その場にいた誰もが、この時のペシエラの姿に見とれてしまうのだった。


 その後も順調にチェックポイントを突破していくペシエラの班。

 休憩ポイントにやってきた時、ちょうど空の光が高い位置に来ていたので、お昼にすることにしたようだ。

 みんなを休ませて、ペシエラはてきぱきと調理を始めている。ここまでほとんどペシエラに頼ってばかりで申し訳ないとは思いつつも、ペシエラに任せてと言われるとつい任せてしまうのである。

 あっという間に調理を済ませて食事の準備を終えると、早速そこらにある石に腰掛けて食事を始める。

 ペシエラの作った食事は、それはとても好評だった。

 これも、貧しいコーラル子爵時代の経験がよく活きているというものだ。調理器具の有無に関係なく、どんな環境でも料理を作れてしまうのである。

 ようやく休憩らしい休憩に入ったペシエラは、お行儀悪く地図を取り出して、改めてオリエンテーリングのコースを確認している。

 今いる休憩ポイントは、かなり湖から近い場所にあった。


(いえ、ここだけではありませんわね。他の休憩ポイントも、よく見てみると湖のすぐそばにありますわ。逆行前の記憶でも、確かに湖から近かったような気がしますわ。これは、意図的なのかしら……)


 驚いたことに、すべての休憩ポイントがサファイア湖からほど近い場所に配置されている。

 ペシエラがそのことに気が付いた瞬間だった。


 ザバーンッ!


 大きな水の弾ける音が響き渡ったのだ。

 何事かと思って視線を向けると、そこには全身が青色で、体中から水の球がぼこぼこと湧き出る馬のような姿をした魔物が立っていたのだ。


「ケルピーッ?!」


 なんということだろうか。完全に魔物の気配のなかったはずのサファイア湖に、突如として魔物が出現したのである。

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