第63話 紫の髪の少女
それからというもの、かなりの日数が経過する。
特例として学園に来なくてもよいと言われていたペシエラも、さすがに学園へと顔を出すことに決めた。なんといっても、ロゼリアとチェリシアの話を聞いていたら、顔を出さずにはいられなかったのだ。
あれから春のふた月間はが過ぎているので、ストーカー騒ぎも落ち着いているだろうと考えたし、やはり学園の雰囲気になじんでおきたいのだ。
逆行前も田舎貴族ということであんまり相手にされなかった悲しい学園生活を繰り返したくないペシエラは、覚悟をもって学園にやって来た。
ペシエラはいろいろと身構えたものの、意外とすんなりとクラスの中になじんでいた。
そもそもチェリシアがかなり社交的だったこともあってか、あれだけ入学後の試験で目立っていた話題性もあってか、学園生活はスムーズに送れそうだった。
「ふぅ……。特に問題がなさそうで安心しましたわ」
「ふふっ。ペシエラがいつ登校してきても大丈夫なように、私が頑張っておいたからね」
「ありがとうございますわ、お姉様」
どうやら、ペシエラが無事に学園になじめた背景には、チェリシアと、逆行前のライバルであるロゼリアの尽力があってのことのようである。
この話を聞いたペシエラは、前回とは違った充実した学園生活を送れそうで、ちょっと涙が出そうになったのだとか。
そんなこんなで無事に学園生活に戻れたペシエラは、ロゼリアとチェリシアの二人とともに、初日のお茶会で会ったメンバー中心として学園生活を楽しんでいる。
学園に再び通い始めたペシエラの前に、ある日のこと、一人の女子学生が姿を見せた。
軽くウェーブした紫の髪の毛が肩くらいまである女子学生は、ペシエラを見つけて瞳をうるうるとさせている。
「ようやくお会いできました」
目の前に現れるなり、両手をしっかりと組んだ状態でペシエラに視線を向けている。唐突に現れた少女に、ペシエラは強く警戒している。
だが、目の前の女子学生の姿には少しだけ見覚えがあったので、警戒しつつもペシエラは一生懸命思い出そうとしている。
「あっ、ごめんなさい。自己紹介をさせていただきます」
ペシエラの様子を見て、目の前の女子学生はしっかりと姿勢を正している。
「私はアイリスと申します。アイリス・パープリア男爵令嬢です」
少し不格好ではあるものの、アイリスと名乗った女子学生は、しっかりと淑女の挨拶をこなしていた。
「そう……。アイリス様ですのね。それで、わたくしに一体どのようなご用件なのかしら」
声をかけてきたアイリスに、ペシエラは用件を尋ねている。
「はい。ペシエラ様の魔法を見せていただいて、教えていただきたいと考えておりました。ですが、しばらくしてペシエラ様は学園に来られなくなってしまいまして……、本日まで我慢をしておりました」
アイリスの訴えを聞いて、なるほどと思ったペシエラである。
ところが、ペシエラはすぐさま教えないことにした。覚悟があるのなら、コーラル伯爵家まで休みの日に来るように伝えると、ひとまずこの場は別れることにした。
理由としては、アイリスの名前を聞いてからというもの、ペシエラの中に何かが引っかかっていたからだ。
(パープリア男爵……。何か聞いたことがありますわね)
「ペシエラ?」
ものすごく真剣に悩んでいるものだから、チェリシアが心配になって声をかけてしまう。そしたら、ペシエラには珍しく驚いた反応を見せていた。
この反応にはロゼリアとチェリシアの二人は驚いたものの、なんだか聞きづらい雰囲気だ。今日の授業もあるので、二人はペシエラを黙って見守ることにしたのだった。
そして、今日の授業が終わり、マゼンダ商会にやって来た時だった。
「そうですわ! パープリアって、あのパープリアではありませんの!」
唐突にペシエラが叫んでいた。
さすがにこれにはロゼリアやチェリシアもびっくりである。目を丸くして、ゆっくりとペシエラの方へと視線を向けている。
「ど、どうしたのよ、ペシエラ」
チェリシアは姉として、ゆっくりとペシエラに近付きながら質問をする。
「パープリアの名は、逆行前の女王親衛隊の中にありましたわ。確か、名前はヴィオレス・パープリアでしたわ」
先程のアイリスと同じようにパープリアの名を持つ者が、なんとペシエラの関係者の中にいたのである。
ペシエラが思い出した内容には、そのヴィオレス・パープリアが十四歳の時に、一つ下の妹を魔物の襲撃によって亡くしているのだという。
一つ下ということは、当時十三歳ということだ。
「まさか、その魔物の襲撃って……」
「おそらく、わたくしたちが経験した魔物の襲撃のことですわね。名前は伺っておりませんでしたけれど、女子学生が一名亡くなられたということは記憶しておりますわ」
「それじゃ、まさか……」
ここまで話を聞いて、さすがのチェリシアもピンと来たようである。
この時のチェリシアの反応を見て、ペシエラはこくりと頷いている。
「そうですわ。わたくしはそのヴィオレスから、妹の名前を聞いていたことを、先程思い出しましたの。その名前こそが、先程わたくしたちがお会いしたアイリス・パープリア男爵令嬢なのですわ」
「な、なんですって?!」
ペシエラが思い出した内容を聞いて、ロゼリアたちの間に大きな衝撃が駆け抜けた。




