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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第三章 学園一年目

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第60話 落ち着かないペシエラ

 入学式とその翌日の試験さえ終えれば、しばらくはこれといってイベントはない。次に控えているのは夏ということもあって、ロゼリアたちはのんびり学園生活を送る……はずだった。


「むむむ……」


「ペシエラ?」


 この日もペシエラは険しい表情を浮かべている。それというのも、背後から妙な気配を感じているからだ。

 実は、試験の際に目立ちすぎてしまったことで、ペシエラに惚れてしまった学生がいるらしく、その学生がペシエラをつけ回しているのだという。まったく迷惑なことである。

 ロゼリアとチェリシアだけの時にはそのようなことはないので、ペシエラがターゲットなのは間違いない。

 頭にきたペシエラは、ガレンに相談を持ち掛けることにした。

 その結果、期末試験さえ合格できればいいということで、入学十日目にして、ペシエラは学園に登校しなくてもよいということになった。どうせ一年次の授業は女王教育でクリアしているわけなので、影響はなさそうである。

 ペシエラが学園を休むことになったと聞いた学生たちががっくりしていたのだが、その原因を作ったのは学生たち自身だ。この反応にはロゼリアどころかチェリシアも呆れてものが言えなかったそうな。


 そんなわけで、問題解決まで学園に通えなくなったペシエラは、ものすごく暇になってしまった。

 せっかくだからと、ペシエラは姉のチェリシアの真似をして、魔道具の開発に着手することにした。

 マゼンダ商会の取り扱う魔道具としては、王家にも納品した万年筆以外にも、ろうそく代わりになる照明の魔道具や、持ち運びのできる魔石を使った加熱調理器具といった、生活に密着したものを開発してた。

 あまりにも暇ということもあり、ペシエラも何かを作ってみようと考えているようである。

 商会長の部屋で休んでいたペシエラだったが、唐突に扉を叩く音が聞こえてくる。


「失礼します、シアンです」


「ああ、ロゼリアの侍女の……。入っていいですわよ」


 退屈にしていたペシエラのところに、シアンがやって来た。ペシエラをしても、この元子爵令嬢であるシアンの表情は読み取れず、ペシエラはちょっと苦手意識を持っている。とはいえ、今は学園の講義中であるので、自分で対応をしなければいけなかった。


「何の用かしら」


「はい。以前に頼まれておりました、お茶会に参加された方々の調査報告がまとまりましたので、持って参りました」


 どうやら、調査報告がまとまったようだ。


「お姉様とロゼリアが戻ってくるまで、ひとまず預かっていて下さいな」


「承知致しました。それでは、また夕刻にお持ちいたします」


 一人では判断ができないと、ペシエラはやむなくシアンを下がらせた。いくら女王経験があるとはいえ、さすがに二人に内緒で話を進めるのはよろしくないと考えたからだ。

 再び一人となったペシエラは、椅子に肘をつきながらお行儀悪くもたれかかって考え込んでいる。どういったものを作るのがいいのだろうかと。

 しばらく考え込んでいたペシエラは、何かを思いついたかのように背もたれから離れる。


「そうですわ。写真魔法を扱える魔道具ですわよ。せっかく時間ができたんですもの、やってみない手はありませんわ」


 そう、以前にチェリシアと話をしていたことを思い出したのだ。

 思い立ったペシエラは、すぐさま魔石と木材を持ってこさせる。

 逆行前には領地の足しになればといろいろ内職をしていた関係で、実はペシエラはとても手先が器用である。

 魔石を磨いたり、木材を魔法で器用に削っては枠に加工したりと、それはせっせと作業に打ち込んでいる。

 ここでペシエラが一番頭を悩ませたのは、指で魔法を使った場合、一度に一枚しか光景を記憶できない問題だった。

 せっかく写真魔法を組み込んだ魔道具なのだ。一度に何枚もの写真を写せるようにしたい。さらにいえば、撮影した写真をいつまでも残せるようにしたいと、ペシエラはその欲望を膨らませていっていた。

 だが、最初からが大問題だ。写真魔法は撮影と現像が対になっている。写真を撮って現像してしまえば、その写真が失われてしまう。そこの改良からが戦いだった。

 ところが、そこはさすがは乙女ゲームのヒロインというチート枠。あーだこーだとしている間に、あっという間に改良方法を考え出してしまった。

 撮影から現像して消去までの一連の流れを別々の魔法として切り離し、それらを意図的に発動できるようにしてしまったのである。

 ロゼリアとチェリシアの二人がやってくるまでの間に、自らの手で写真魔法を改良して組み込んだ試作機を作り上げてしまっていた。なんとも恐ろしい子である。


「まだ簡単な枠組みだけですけれど、そこはお姉様と相談して参りましょう。そういうのはお姉様の方が詳しいでしょうからね。ふふっ」


 あまりのできばえに、珍しく笑いをこぼしてしまっている。それだけペシエラは、やり切ったことを嬉しく感じているようなのである。


「さぁ、動作確認ですわよ」


 自らの手で完成させた写真魔法を組み込んだ魔道具を手に、ペシエラは嬉しそうに部屋の中のものをあれこれ撮影して動作確認を行うのであった。

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