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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第三章 学園一年目

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第57話 呼び出し

 本編が始まってすぐのイベント『能力試験』。

 このイベントでは魔法試験に臨んだチェリシアが、魔力を暴走させて倒れてしまうということが起きていた。

 その話を聞いたシルヴァノが興味を示し、医務室で目覚めたチェリシアに「これからが楽しみだ」と声をかけるのが本来のイベントである。

 ペシエラは本来のチェリシアであり、シルヴァノが微笑みかけながらこの声を発したので、このイベントは達成したと思われるというわけだ。

 そんなペシエラたちの様子を、チェリシアは慌てて写真魔法で撮りまくっている。かなりペシエラの写真が増えたので、チェリシアはとても満足そうである。チェリシアの様子を見ていたロゼリアは、あまりの浮かれっぷりに呆れていた。


「さて、全員試験が終わった。結果は明日、講義棟に入り出されるから各自で確認してくれ。以上、解散!」


 武術試験の教官の声が響き、学生たちは帰り始める。……はずだった。


「ペシエラちゃん、すごい! かっこよかった」


「あの剣捌きはどこで覚えたんだよ」


「魔法もすごいらしいじゃないか。本当に十歳なのか?」


 解散の合図と同時に、ペシエラは学生たちに囲まれてしまっていた。あれだけの剣術を見せつけた上に、ペイルに勝つという大金星まであげたのだ。こうなるのも仕方がない。

 ペシエラがちょっと困っていると、ロゼリアが颯爽と現れる。


「ペシエラ様、ガレン先生がお呼びですから、早く参りましょう」


「そうでしたわね。それではみなさん、ごきげんよう」


 ロゼリアの顔を見たペシエラは、学生の方へと振り向き、にこりと笑顔を見せて優雅に歩き出す。


「天使だ……」


「あれだけの才能を持ちながらも鼻にかけない。なんて素晴らしいんだ」


「ああ、こてんぱんにされたい」


 立ち去るペシエラを見ながら、学生たちが何かをつぶやいている。その一部からおかしな単語が聞こえた気がするのだが、ペシエラは気にすることなく、ロゼリアとチェリシアとともにガレンの待つ職員室へと向かった。


 ロゼリアたちがやって来た職員室の中では、教官たちが採点に追われている。この日は全学年次で試験があったのだ。こうなるのも当然である。

 ガレンは奥の方に座っており、すでに採点を終えたのか、とても涼しげな顔をして座っている。

 ロゼリアたちの姿を確認したガレンは、立ち上がって部屋を変えようと声をかけてきた。それを了承すると、ガレンはどこかへと向かって歩き出す。

 そうしてやって来たのは空き教室。中に入るなり、ガレンは何か魔法を展開している。


「防音魔法をかけましたので、これで私たちの声は外には漏れません。では、そちらにおかけになって下さい」


 ガレンはロゼリアたちを椅子へと座らせる。

 緊張した様子の三人の前へと移動したガレンは、そっと手を置いて静かに口を開く。


「君たちは、一体何者かな」


 この時のガレンの雰囲気は、先程までとは一変している。声色や口調が変わり、ロゼリアたちに圧力をかけるような雰囲気を放っている。


「私たちは、普通の侯爵令嬢と伯爵令嬢ですけれど」


「……あんな不思議な魔法を使い、ただならぬ魔力量を保有しながらも、普通というのか?」


 ロゼリアが弁明するも、ガレンからは鋭い指摘が飛んでくる。

 まるで別人のような圧力に、ロゼリアとチェリシアは雰囲気にのまれてしまいそうになっている。


「これでも私は、他人の魔力を見ることができる。君たちには二人分の魔力が見えているんだ」


「二人分とは、どういうことなのかしら」


 ただ一人平然としているペシエラが反応する。

 意外な反応を返されながらも、ガレンには驚いた様子は見られない。淡々と詳しいことを話し始める。


「通常、一人には一つの魔力しか存在しない。だが、君たちはその魔力の層が二つ存在しているんだ。これは一体どういうことなのか、それを問うているというわけだよ」


 ガレンがいうには、一人一人違った魔力のオーラというものが存在しているらしい。通常は、一人にはその魔力のオーラがひとつしか存在しない。

 ところが、ロゼリアたち三人には、大小の違いはあるものの、その魔力の層がふたつ重なって見えているらしい。ガレンは、そのことを追及しているのである。

 魔力試験の時は穏やかな感じだったというのに、今はかなりのプレッシャーをかけてきている。このままではロゼリアとチェリシアに危険が及びかねないと見て、ペシエラは覚悟を決めたようだ。


「はぁ、分かりましたわよ。ロゼリアはまだ平気でしょうけれど、お姉様は胃に穴を開けかねませんわ。ガレン先生、ここはわたくしが答えさせて頂きますわよ」


 このまま隠し通せるものでもないだろうと見たペシエラは、二人をかばうためにガレンに対して言葉を返している。

 そう、ペシエラはついに覚悟を決めたのだ。

 ロゼリアとチェリシアにも具体的に話していなかった逆行前のペシエラの、アイヴォリー王国の女王となりながらも悲惨な末路をたどることになったチェリシア・コーラル・アイヴォリーの話を。

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