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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第三章 学園一年目

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第55話 試験 その3

 魔法試験で最後の方に出番が回ってきたロゼリアたちは、ものすごく手加減をした上で魔法を使っていた。だが、気の利かない教官のせいでいろいろと魔法を使わされてしまう。

 最初にペシエラが雷(実物)を落としていただけに、拍子抜けするようなしょぼい魔法を使ったことで怪しまれたようだった。結果として、自分たちの使える属性を全部披露することになったのだ。

 教官はとても満足していたようだが、ロゼリアたちはものすごく精神的に疲れたのだった。


 こうして、魔法試験が終わり、続けて武術試験へと移る。

 女性の方が少し多かった魔法試験に比べると、武術試験は男性陣がメインのようだ。

 さて、この武術試験は一対一による模擬戦だ。

 会場内には魔法試験の会場と同じように防護の魔法が、使用する武具にも負傷を抑える魔法がかけられている。この徹底した対策のおかげで、長らく武術試験においての死亡事故は発生していない。


 この武術試験の一番手は、なぜかペシエラが選ばれている。

 まさかの十歳の少女が一番手となって、会場内からは動揺が起きている。

 そんな中、当のペシエラはまったく動じていない。

 なぜなら、当のペシエラは逆行前のチェリシアだった時代に、亡国の戦いにおいて魔法剣士として前線に立ったからだ。王族ですら前線に出て戦わないといけないほどの激戦。その中をサーベルを振るい、果敢に戦った。

 このような体験があるために、武術試験の模擬戦など児戯も同然なのである。

 ペシエラの試験の対戦相手は、もちろん十三歳。立った人物は、いかにも筋肉自慢の脳筋というべき男爵家の子息だ。体格差は見れば一目瞭然である。

 ところが、模擬戦が始まれば決着は一瞬。気が付いたらペシエラは相手の背後に立っていた。背後に移動したペシエラが、剣をひと払いする。


「あ……が……」


 その瞬間、情けない声を出しながら相手はその場に倒れてしまう。


「まったく、見掛け倒しですわね」


 あまりの圧勝劇に、その場にいた誰もが開いた口がふさがらなかった。

 戦いを終えたペシエラは、ロゼリアとチェリシアのところへと戻ってきた。


「ふふん、これでもアイヴォリー王国の女王を経験しましたからね」


「すごいわ、ペシエラ」


 周りに聞こえないように小声で話すペシエラだったが、次の瞬間、チェリシアが抱きついて頭を思いっきり撫でてきた。


「ちょっと、お姉様。人前ですわよ、やめて下さいませ!」


 ペシエラは恥ずかしがりながら怒っている。しかし、周囲には仲の良い姉妹だとほっこりした顔をされてしまっていた。

 その隣では、ロゼリアがペシエラの剣の腕前に驚いていた。逆行前は学園での生活までしか知らなかったので、あそこまで剣が扱えるとは思ってもみなかったのだ。なにせあの時のペシエラは典型的な魔法型の人物だったのだから。本人のいう通り、あの後に相当な苦労があったのは間違いないだろう。最終的には、納得した表情を浮かべていた。


「おい、そこの小娘」


 この状況で、ぶしつけに声をかけてくる者がいた。

 くるりと振り返った視線の先にいたのは、ペイル・モスグリネだった。

 その瞬間、ペシエラの表情が一気に強張る。


「ほう、いい顔をするな。相手にとって不足なし、俺と勝負しろ!」


 教官側で決められた順番を無視して、ペイルがペシエラに勝負を仕掛けてきた。普通ならば咎められるところだが、隣国の王子とあっては誰も文句が言えずにいた。

 勝負を仕掛けられたペシエラも、まったく断るような動きを見せない。


「いいですわよ。受けて立ちましょう」


 ゆっくりとペイルの方へと体ごと振り向かせるペシエラ。かと思えば、同時に煽りを入れる。


「ですけれど、わたくしはまだ十歳。しかも女性。万一、わたくしに負けるようなことがございましたら、モスグリネ王国にとって、とても不名誉なことではなくて?」


 態度から察せられるとおり、ペシエラはものすごく不機嫌なようである。見た目は可憐な美少女でありながら、その中身は修羅のようである。

 あまりにも不穏な雰囲気が漂っており、武術試験の教官はこの戦いを認めざるを得なくなってしまったようだ。


「大丈夫なの、ペシエラ」


「ええ、心配しなくても大丈夫ですわよ、お姉様。ちょっと、逆行前の恨みを晴らしたくなってしまいましたわ」


 チェリシアの問い掛けに、青筋を立てて笑っている。

 あまりにも露骨な怒りを見せるペシエラを見て、ロゼリアとチェリシアは悟った。逆行前のペシエラが死ぬ原因となったアイヴォリー王国の滅亡は、モスグリネ王国によって引き起こされたのだと。

 しかし、だからといって見過ごせない。ロゼリアとチェリシアは改めて止めようとする。


「ペシエラ、逆行前は逆行前よ」


「そうよ。今のペイル殿下とは関係ないわよ」


「分かっていますわよ。ただ、どうしてもあの顔を見ると怒りが抑えられなくなってきますの。ここはひとつ、仕返しをしてやりませんとね」


 分かったというわりには、ペシエラの表情はまったく変わらない。

 完全に止められないと悟った二人は、ペシエラの意思を尊重することにした。

 こうして、止める者のいなくなったペシエラとペイルによる戦いが、今まさに始まろうとしていた。

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