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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第三章 学園一年目

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第54話 試験 その2

 ロゼリアたちは魔法試験の会場に到着する。

 学園内に数か所ある訓練場のひとつであり、建物の内部には、魔法を防ぐための防護魔法がかけられている。


「本日の試験は、新入生の適性を確認するための試験だ。よって、遠慮なく本気で魔法を使ってもらっても構わない」


 魔法試験を担当する教官から、大きな声で説明している。どうやら魔力量をも確かめるためなのか、全力で来いと言っている。考え方が脳筋のそれっぽい。

 魔法試験の会場には、思ったよりも人が集まっていない。それだけ、魔法に適性を持つ新入生が少ないのかもしれない。ちょっとがっかりするチェリシアである。

 ただ、そんな少ない人数なこともあってか、その場に立っているペシエラがものすごく目立つ。なんといってもたった一人の十歳だ。背が低い上に目立つピンク色の髪で、かなりの注目を集めているようだ。


「なんだ、あのチビは」


「どう見ても同い年の子じゃないわよね?」


「うわさで聞いた特待生かしら」


「そんなこと知るか、さっさと追い出せ」


 一部の新入生が騒めき始める。

 普通に考えれば十歳の少女が学園にいるわけがないから当然だろう。魔法というのは十歳から十二歳で発露する能力。その最低年齢である十歳の少女がこの場にいるなどおかしいと考えるのは当然だろう。

 しかし、特待生という言葉が出てきたように、ペシエラはちゃんと許可を得て入学してきているのだ。

 それでも最後に聞こえてきた罵声には、ペシエラの堪忍袋が切れたようである。


 ズドン!


 大きな音が響き渡る。

 何かと思えば、遠くに置いてある魔法試験用の的に雷が落ちたのだ。

 ところが、空は晴天。とても雷が落ちるような状況にはなかった。


「な、なんだ、今のは……」


「うるさいですわよ、あなたたち。ああなりたいのかしら?」


 動揺する新入生たちが見たのは、怒りをにじませた表情で、天に向けて手を掲げているペシエラの姿だった。

 そう、ブチ切れモードになったペシエラが、魔法で雷を落としたのである。


「え、えっと、ペシエラくんといいましたかな。い、今のいったい?」


「光属性の攻撃魔法ですわよ。雷を魔法で再現してみましたの。よくできていましたでしょう?」


 おそるおそる尋ねてくる教官に、ペシエラはにこやかな表情を浮かべて答えている。ただ、まだ怒りがにじんでいるだけに、その笑顔がかえって怖いというものだ。

 その表情と声のトーンのギャップに、試験会場の中はしんと静まり返っている。頭を抱えるロゼリアと目を輝かせるチェリシアを除いて。

 さすがに暴言を吐かれ続けて黙っているほどペシエラは大人ではない。牽制として放った魔法のとんでもなさに、周囲は絶対怒らせてはいけないと強く誓っていた。


「ふむ、これはなかなかな魔法ですね」


 そこへ、説明を行っていた教官とは別の教官が顔を出してきた。


「攻撃魔法の乏しい光魔法で、このような危険な魔法を使うとは、どういうつもりなのですかね」


 やって来た男性教官は、丁寧な口調ながらもペシエラを咎めようとしている。

 そもそも光魔法は、回復や防御、それと浄化に長けた属性だ。攻撃魔法は存在するものの、そこまで高火力なものは存在しないはずなのである。

 ところが、ここでペシエラが使ったのは間違いなく光魔法である。なおかつ、雷を落とされた的は、強力な一撃だったこともあり燃え上がっている。教官が咎めるのも当然なのである。


「普段の研究の成果を、ここでひとつ披露したにすぎませんわ。あまりにも愚痴が多いですから、牽制に使ったまででしてよ」


 まだ相当に腹を立てているのか、ペシエラは教官に対してもかみついている。


「なるほどね。ですが、このような魔法を使われたのですから、要注意人物として記録させてもらいますが、よろしいですかな?」


「構いませんわよ。むしろ、わたくしの行動はよく見ていただいた方がよろしいですもの」


 教官からの脅しにも、ペシエラはまったく動じていない。どちらかというと正面から受けて立っていた。


「ふふふっ、それは楽しみですね」


 そうとだけいうと、教官はすぐにペシエラから離れていった。

 まったく、とんでもない幕開けである。

 他の学生たちが魔法試験を受けている中、チェリシアが怪しい動きを見せる。唐突に紙を取り出したかと思うと、パシャリと魔法を使っている。

 紙には先程のペシエラが文字通り雷を落とした瞬間が写し出されていた。


「何を撮っているのよ……」


「だって、可愛い妹の凛々しい姿よ?」


 呆れるロゼリアに対して、チェリシアは大まじめに答えていた。姉バカムーブ、ここに極まれりである。


「ほほう、面白い魔法を使っていますね」


「ひゃう!?」


 唐突に声をかけられて、チェリシアは驚いている。誰かと思えば、さっきペシエラに声をかけていた教官である。


「なんですかな、この魔法は」


「えっと……」


 チェリシアは目を泳がせてごまかそうとするも、教官の圧が強すぎて逃げられそうにない。チェリシアは観念する。


「写真魔法っていう、私が編み出した光魔法です」


 説明をしながら、チェリシアは教官に対して写真魔法を使う。すぐさま別の紙にその姿を写し出す。


「ふむふむ、これはすごいですね。光魔法はこんなこともできるとは……」


 丁寧語を話す教官は、なにやら考え込み始めた。いくらもう一人の教官が採点しているとはいえ、これでいいのだろうか。

 考え込む教官は、少し離れた位置に立っているペシエラと目の前のチェリシアを見比べている。


「なるほど、姉妹ですか。ふむ」


 なにやら一人で結論付けたらしく、じっとチェリシアたちへと視線を向ける。


「私は魔法科の教官でガレン・クリムゾンと申します。チェリシア・コーラル、ペシエラ・コーラル、ロゼリア・マゼンダの三名は、すべての試験が終了した後で、私のところまできて下さい」


「へ?」


 なんということだろうか。ペシエラのことが発端とはいえ、なぜかロゼリアまで呼び出しを食らってしまった。

 唖然とする二人に構うことなく、ガレンはそのまま持ち場へと戻っていったのだった。

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