第53話 試験 その1
学園入学の二日目を迎える。
昨日は入学式と説明だけで終わってしまったので、本格的な学園生活はこの二日目から始まるのだ。
さて、学園二日目では、その適性を見出す一つの場として、全学生に対して試験が課されることになっている。午前中は座学、午後は実技である。
当然ながら、これまでにしっかりと勉強を受けてきたロゼリアたちにとって、午前中の座学はまったく問題なかった。
午前中の試験を終えると、ロゼリアたちは食堂に向かう。
食堂へとやって来たロゼリアたちのところに、ブラッサとグレイアの二人がやって来た。
「あら、ロゼリア様、チェリシア様、ペシエラ様。こんなところでお会いするだなんて奇遇ですね」
「これはブラッサ様、グレイア様。それはこちらの言葉ですよ。商会の方でお食事は用意なされなかったのですか?」
「ええ、学生の方々とご一緒させていただいていますわ。ここは学園ですからね」
「なるほど」
少し会話をしたロゼリアたちは、せっかくだからと同じテーブルに座る。
食事を始めてすぐのこと、ブラッサが三人に対して質問を投げかける。
「一年次生はこの後、実技試験ですよね。武術と魔法、どちらをお受けになられるのですかね」
ブラッサが気にしているのは、一年次生が全員受けるという能力試験のことだった。言葉からすると、全員が受けるとはいっても、両方を受ける必要はなさそうである。
「私は、両方を受けます」
ブラッサの質問に、ロゼリアはすぐさま答えていた。まったく迷いがないようである。ちなみにだが、これにはペシエラも同じように頷いていた。
「あら、それは頼もしいですね」
意外と思いつつも、笑顔を崩さないブラッサである。
「そういえば、学園の二年次からのカリキュラムについてはご存じかしら」
そうかと思えば、三人に対して学園の仕組みについて尋ねてきた。
逆行前に経験をしているロゼリアとペシエラは当然ながら知っているのだが、転生者であるチェリシアが知らないとまずいということで、ここはおとなしくブラッサから教えてもらうことにした。
説明によれば、学園の進路は二年次になってから分岐することになるらしい。
剣術や体術などの武芸に秀でた武術科。
魔法に長けた魔法科。
頭脳労働に特化した文官科。
そのどれにも属さないものの、将来的な選択肢の豊富な一般科。
上記の四つの学科が用意されている。
この四つのうち一般科については、貴族の多くが忌避している。それというのも、将来の進路が使用人だったり、御者だったり、労働作業者だったりと、平民と大差のない職に就くことが多いからだ。言ってしまえば人の下に就いて使われるのが嫌だというわけだ。いかにも貴族らしい理由である。
逆行前のロゼリアとペシエラは、どちらも魔法科に進んでいた。ゲームでもロゼリアは魔法科だったらしいが、チェリシアの方はプレイヤー次第でどの科に所属するか変わるらしい。
「というわけです。ちなみに私ですが、魔法の才能がなかったことで武術の試験を受けました。ですが、こちらもからっきしでして、今は文官科で勉強をしております」
カリキュラムの説明を終えたブラッサは、自分の現在のことも説明をしていた。商会の生まれとすれば、まあ無難な選択である。
「私は武術科に進む予定よ。なんといっても、あそこなら鍛冶のことも勉強できるからね」
ブラッサに付き合うようにして隣に座るグレイアは、すでに進路をしっかりと決めているようだった。実家が鍛冶屋であるのなら、無難な選択というところである。
二人の話を聞いていたロゼリアたちだが、対照的に悩んでいる。前回通りに魔法科を選択するのか、それとも違った選択にするのか。幾分、やれることが増えてしまったがために、悩ましいところである。
ロゼリアたちが悩む様子を見て、ブラッサは先輩としてアドバイスを送ろうと小さく咳払いをする。
「迷われているようでしたら、とりあえず両方の試験を受けてみたらいいかと思いますよ。どのみち、どの学科に進むかは、年次末試験が終わってからのことですからね」
「そうですね。では、そのようにさせていただきます」
まだ十一か月も悩む時間があるのならと、ロゼリアたちは先延ばしの提案をすんなりと受け入れたようだ。確かに、急いで決めるよりはじっくり考えた方がいいだろう。
「午後は魔法試験からでしたね。ふふっ、いい結果を期待していますよ」
「ええ。ぜひとも楽しみにしてい下さい」
ブラッサが笑いながら激励をすると、ロゼリアが代表して言葉を返している。この時、二人の間にかすかではあるが火花が散った気がした。
さすがはライバルとなる商会同士の人間といったところだろう。その様子を見ていたペシエラは、やれやれといった表情を浮かべていた。
こうして、ちょっと怪しげな雰囲気になりはしたものの、無事に昼食を終えることができた。
年次が違うブラッサとはここで別れ、ロゼリアたちはグレイアとともに、先に行われる魔法試験の会場へと向かっていったのだった。




