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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第三章 学園一年目

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第52話 安心できない未来

 無事にお茶会を終えたロゼリアたちは、帰宅の途に就く。……はずだった。

 今日のお茶会のことで話があるため、三人はそろってマゼンダ商会へと足を運んでいた。外部に聞かれたくない話ゆえに、そうなったようだ。


「無事に殿下たちとの顔合わせは終わりましたね」


「ええ。ですけれど、わたくしがあの場にいられたのは不思議な話ですわよ」


「あれっ、ペシエラの時は呼ばれていなかったの?」


 ペシエラの反応に、なぜかチェリシアが驚いている。


「当たり前ですわよ。田舎令嬢のわたくしが、どうして王太子殿下方と同じ席に座れると思いますのよ」


「でも、ペシエラにはとんでもない魔力が……」


「お姉様、入学時点でわたくしの魔力は知られていませんでしたのよ。あの時のわたくしは、一人寂しく子爵邸に戻りました」


「子爵? あっ、そっか。コーラル家って元々子爵だったわね」


「しっかりなさってくださいませ」


 チェリシアの意味不明な反応に、ペシエラは頭が痛そうである。当時のことを思い出したせいもあって、余計にといった感じだ。

 どうもチェリシアは、現在と逆行前とゲーム中の話がごっちゃになっているような感じである。


「それと、ロゼリア」


「なにかしら、ペシエラ」


 ペシエラは何か思うところがあるようで、ロゼリアに声をかけている。


「当面は、お姉様がお書きになられた未来予知の通りに進めていきましょう」


「それもそうね。下手な手を打てば、将来がどのように変化するか分かりませんものね」


「そういうことですわ。もっとも、現時点でもすでに十分おかしいのですけれどね」


「……それもそうね」


 ペシエラが考えたのは、とにかくゲームのシナリオをなぞること。ゲームの通りに事を進めれば、一番最悪な状況でも、ロゼリアの国外追放までで済むからだ。逆行前のようにマゼンダ侯爵家断絶から国家滅亡というようなシナリオにはならないはずである。

 とはいえ、すでにヒロインであるチェリシアと悪役令嬢であるロゼリアの関係は、対立ではなく友好となっているので、そこだけを見ればそもそも国外追放すらなさそうである。

 ひとまずは、最初のスチルイベントである王子のお茶会はクリアしている。このイベントは、ヒロインと悪役令嬢が初めて顔を合わせる場面であり、シルヴァノが優しく微笑む場面がスチルとして用意されているとのことだった。

 まあ、他にも攻略対象やらいろんな令嬢やらがいたので、いろいろと賑やかな場面になってしまってはいたのだが……。

 それでもチェリシアがいうには、ゲーム通りに事を起こそうとする謎の力、いわゆる強制力というものが働く可能性があるらしい。なので、まったく気が抜けない状態なのである。

 どこからどのような介入があり、状況が悪化するか分からないというわけだ。

 そこで、まずは一番危険性の高いライバル商会であるドール商会との関係をさらに良好なものをにすべく、策を講じることにした。

 ロゼリアたちが抱える懸念は、自分たちや攻略対象、その周りの人物たちに危害が及ぶことだ。その点において、ドール商会の力を利用することにしたのである。


「ロゼリア、お姉様。危険から身を守るためにドール商会を利用しましょう」


「それって、どういうことなのかしら」


 ペシエラの発言を受けて、チェリシアが聞き返す。


「お姉様が得意とする防護壁を、魔道具として利用しますのよ。いざという時に、その身を守るためにですわ」


「なるほど、それはいいわね。王子であるシルヴァノ殿下は当然だけど、婚約者候補である私たちや王家に近しい人間には、いろんな危険が付きまとうものね」


 ペシエラの提案を聞いて、ロゼリアはとても感心している。そんなこと、思いつかなかったからである。


「そうですわ。そして、お姉様の魔法を封じ込めた魔石を、ドール商会の技術を用いて装飾品にいたしますの。幸い、本日のお茶会でわたくしたちは顔見知りになっています。ちょっとお声掛けすれば、みなさま、受け取って下さると思いますわ」


「その案、乗ったわ。魔石に魔法を込めるのは任せてちょうだい」


 チェリシアはものすごく気合いが入っている。

 同時に、ロゼリアは使用人を呼ぶベルを鳴らして、自分の侍女を呼び寄せる。


「お呼びでしょうか、ロゼリアお嬢様」


「シアン、すぐにドール商会に使いを出してちょうだい。お話がありますから」


「かしこまりました。では、私が直接参りましょう」


 シアンはロゼリアの言いつけを受けて、すぐさまドール商会へと向かっていく。

 その様子を見たロゼリアは、チェリシアに頼んで魔石を出してもらう。収納魔法からざらざらと魔石を取り出して並べていく。その魔石は大きさなどがまちまちの上に、お世辞にもきれいとはいえない状態だった。

 魔石を見たロゼリアは、自分の使える土、水、風の属性を駆使して、魔石をきれいに磨き、宝石に見えるように加工していく。


「器用ですわね、ロゼリア」


「あれから三年間、自分磨きは怠らなかったものね」


 ペシエラが褒めてくる中、ロゼリアはさも当然という風に答えている。逆行前のペシエラなら癇癪を起こしただろうが、今のペシエラにはそんなことが起きるわけもなく、ただ笑っているだけだった。

 そうしている間にも、魔石の加工が終わる。


「さっ、チェリシア。これらの魔石に防護の魔法を施して」


「了解。任せてちょうだい」


 ロゼリアたちは、シアンがドール商会から人を連れて戻ってくるまでの間に、あっという間に防護魔法の込められた魔石を作り上げてしまっていた。

 逆行前の不幸を繰り返さないための下地が、少しずつ整えられていく。

 これでも安心できないロゼリアたちは、ドール商会に魔石を預けた後、シアンに命じて今日のお茶会に集まった人物たちの身辺をこっそりと調べさせることにしたのだった。

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