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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第三章 学園一年目

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第50話 四角を作って

 ロゼリアたちが学園に足を踏み入れる。

 敷地内に入った瞬間から、周囲から視線を向けられる。ものすごく目立っているのだ。

 ロゼリアとチェリシアの二人は、王子であるシルヴァノの婚約者候補になっている。もう何年も前に決まっていることゆえに周知のこととなっているため、学生たち注目を集めてしまっているのだ。一部ではどちらが婚約者に決まるのかという賭けも行われているくらいらしい。

 ただ、それだけであればここまでの注目にはならないだろう。

 そう、ここにはもうひとつ目立つ要因があった。

 それは今年で十歳になるチェリシアの妹のペシエラだ。

 十歳ということは、それだけ周囲より明らかに背が低い。

 それに加え、十三歳から通うという規則が学園には存在している。特例であるとはいえ、十歳の少女が入学してきたのだ。嫌でも目立つというものなのだ。

 周囲からの視線は思った以上にこたえたらしく、ロゼリアたちは学園の中を足早に進んでいき、人気の少ない場所へとやって来た。


「予想はしていたけれど、ものすごい視線だったわね」


「私も注目されるということには慣れていないので、ちょっと困りましたね」


 ロゼリアとチェリシアは、困った表情を浮かべながら、愚痴をこぼしている。想像はしていたものの、それ以上だったということだ。

 そんな中だった。


「ロゼリア、ちょっとよろしいかしら」


 ペシエラは不意に声をかけている。


「ちょうど人のいないところに来ましたので、お姉様が開発した魔法を、ここでひとつ披露させていただきますわ」


「魔法を、開発?」


 どう反応していいのやら、ロゼリアは困った表情を浮かべる。ちらりとチェリシアに視線を向けるも、チェリシアはただ笑っているだけだった。

 ペシエラは首を捻るロゼリアに構うことなく、直角に広げた両手の親指と人差し指を組み合わせて四角形を作ると、ロゼリアの姿が収まるように構えている。

 ペシエラの手に魔力が集まったかと思うと、パシャという音ともに、明るい光が放たれる。

 あまりにもまぶしい光だったので、ロゼリアは両目をチカチカとさせながら、驚いた表情で固まってしまっていた。


「な、なんなのかしら、今のは……」


「お姉様が開発した写真魔法ですわ。お姉様、紙をよろしいでしょうか」


「ちょっと待ってて」


 ロゼリアに簡単に説明したペシエラは、チェリシアに紙を要求している。収納魔法から四角い紙を取り出したチェリシアは、それを自分の前で構えている。


「それでは、参りますわよ」


 ペシエラは先程と同じように指で四角形を作ると、紙に向かって魔力を集めて放出する。

 するとどうしたことだろうか。チェリシアの持っている紙に先程のロゼリアの姿と背景が浮かび上がってきたのである。


「え、どういうこと?」


 目の前で起きたことが理解できずに、ロゼリアは混乱している。


「これが写真魔法なのよ。指で作った四角形を通して見える景色を光魔法に焼き付けて、それを紙や板に再現させる魔法なの。今はまだ一度に一枚しか記憶できないので、このようにすぐに現像しないといけないんだけど」


「ちなみに写真というのは、この写し出された絵のことを言いますのよ。この魔法を初めて見た時、わたくしはとても興奮を覚えましたわ」


「お父様とお母様も、とても喜んでいらして、その姿はとても印象的だったわ」


 ロゼリアの驚く姿に満足したのか、チェリシアとペシエラはそろって興奮気味に話している。

 二人の興奮具合にロゼリアも興味を覚えたようだ。


「その魔法は、コツさえつかめば誰でも使えるのかしら」


 ロゼリアが尋ねてみるものの、チェリシアは首を横に振っていた。


「残念ながら、光魔法が使えないと無理みたい」


「そうなのね……」


 はっきりと言われてしまい、ロゼリアはとても残念がっている。どうやら、すでにもういろいろと試した後のようだった。結果がある以上、ロゼリアは諦めるかしかないようである。

 ただ、マゼンダ商会は魔道具を作っていることもあってか、今後の研究次第では誰でも写真魔法を使えるような魔道具が作れるかもしれない。ロゼリアはそこに期待をかけることにしたのだった。

 それと同時に気になることがあったので、ロゼリアは二人に確認してみることにした。


「その写真魔法って、どのくらい残せるものなのかしら」


「魔法で写し取った段階なら、次に魔法を使うまで残るわ。紙などに移したものは、焼き付けると同時に保存魔法をかけているので、台紙自体がなくならない限りは残るわよ」


「そう、そうなのね」


 チェリシアの回答に、ロゼリアはほっとしたようだった。

 ただ、紙に写してしまうまでは安定性に欠ける魔法のようである。それを考えると、魔道具の製作は急いだ方がいいのかもしれない。

 しかし、いつまでもこんなことをしている場合ではなかった。そろそろ入学式も始まる。移動をしないと遅れてしまいかねない。

 そのことに気が付いたロゼリアは、きゅっと一度表情を引き締める。


「さぁ、何事も最初が肝心よ。学園生活の最初の式典、早く向かいましょう」


 チェリシアとペシエラに視線を向けながら、ロゼリアはにっこりと微笑みを浮かべたのだった。

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