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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第二章 ロゼリアとチェリシア

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第5話 令嬢の交流

 未来を変える約束をして以降、ロゼリアとチェリシアは時折交流するようになっていた。二人とも王都にいるということもあり、会うこと自体はとても容易だった。

 これから迎える様々な境遇を変えるべく、ロゼリアたちのやることは何も対策を話し合うことだけではない。

 時戻りの前のロゼリアの記憶では、チェリシアにはとにかく教養が足りていなかった。知識と魔力だけは一人前にあっただけに、かなり周囲の評判もよろしくなかった。ここまで話をしてきた様子を見る限り、今のチェリシアにもどうしても不安が付きまとってしまう。

 危機感を覚えたロゼリアは、チェリシアを家に招いた時には、自分が受けている家庭教師の指導を一緒に受けさせることにしたのだ。


「そこっ! 背筋が曲がっています。もっとしゃんと胸を張りなさい!」


「はいっ!」


 家庭教師である婦人の厳しい指導がチェリシアを襲う。

 教養の浅いチェリシアには当然だが、一度十九歳まで生きたロゼリアにもまったく容赦はない。

 あまりの厳しさに、ロゼリアはチェリシアのことをつい気にしてしまう。ちらりと視線を向ければ、あまりの厳しさにチェリシアは涙目になっていた。

 チェリシアの様子を確認したロゼリアは、心の中で謝罪するのだった。


 厳しい淑女教育が終わると、ようやくロゼリアとのお茶の時間を迎える。ようやく重圧から解放されたチェリシアは、さっきまで受けていた教育は何だったのかという勢いでテーブルに突っ伏してしまっていた。


「厳しくてごめんなさいね。私ってばこんな厳しい教育を受けていたのかしら」


 あんまり覚えがなかったロゼリアは、改めてチェリシアにじかに謝罪している。

 しばらくすると、侍女のシアンと給仕のメイドがやってくる。シアンの淹れたお茶と侯爵邸の料理人が作ったお菓子が振る舞われるのだが、これを見たチェリシアはようやく表情が明るくなっていた。


「ああ、さすがマゼンダ侯爵家のお菓子はおいしいわぁ」


「コーラル子爵家は、爵位の割には貧乏な方ですものね。海と山に挟まれた不毛な広大な土地だから仕方はないですけれど、いくらなんでも厳しすぎるわね」


 逆行前の記憶が少し曖昧だったこともあり、ロゼリアはコーラル子爵家についてちょっとばかり調べていた。

 海からの風と、山からの季節風とで、農業はかなり不安定。海に面した街を持つものの、これといった産業はなし。収入がとても乏しい領地であった。

 子爵家もできる限り支出を抑える方向でいるため、財政はどうにか食つなぐくらいを保ててはいるものの、先行きははっきりいって不安しかない状態だった。

 ロゼリアの目の前に座るチェリシアは、同い年である自分と比べてみても明らかにやせている。健康的な問題もそうだが、財政的にもいつコーラル子爵家がつぶれてもおかしくない状態だった。

 改めて、逆行前のチェリシアのことを思い出してみる。学園に通えるくらいには生活を取り戻していたし、見た感じは今よりも健康的だった。となれば、これから五年の間にチェリシアの能力が開花して、状況を改善するに至ったのだろう。


(ふむ……)


 思い悩んだロゼリアは、シアンたちに向けて目配せをして下がらせると、紙の束を取り出してチェリシアに声をかける。


「チェリシア、ちょっといいかしら」


「はい、なんでしょうか」


「私が経験したこれからのことを記したものよ。ちょっと目を通してもらえるかしら」


「はい、承知しました」


 紙の束を受け取って、チェリシアは順番に目を通していく。すべてに目を通し終えたチェリシアは、ロゼリアへと顔を向けると感想を述べ始める。


「ロゼリアが体験した時間軸での私は、ずいぶんと世間知らずのわがままな子のようですね。どう見てみても、逆恨みを爆発させたようにしか思えませんよ」


「やはり、そう感じるかしら」


「はい」


 驚いたことに、転生者であるチェリシアはロゼリアとまったく同じ感想を抱いたようである。


「どうかしら。私たちの関係に変化が生じたことで、それらのことが変わる可能性はあるかしら」


「十分にあると思います。第一、私がロゼリアに対して敵対心を持っていません。それに、ゲームは進め方によってストーリーや結末が変わるマルチエンディングですからね」


 ロゼリアの問い掛けにはっきりと答えたチェリシアだったが、すぐさまあごに手を当てながら何かぶつぶつと言い始める。


「いえ……。変わらない可能性も否定はできませんね。この手の類の話にはゲームの強制力とかあったりしますし」


 そうかと思えば、顔を上げてロゼリアを再び見る。


「私も、ゲーム内容を覚えている限り書き出してみます。そうすればもっと対処のしようが出てくると思うんです」


「ええ、分かったわ。起こることと状況が分かっているのなら、対策はいくらでも練れるものね」


 納得してこくりと頷くロゼリアに対して、チェリシアは両手を握って気合いを入れている。

 そうかと思えば、再びロゼリアの顔をじっと見つめてくる。


「そうだ。私の領地の状況も改善しませんとね。今のままでは本当にいつ潰れるか分かりませんからね」


「ええ、何か案はあるの?」


「そうですね。海に面した場所があるわけですから、海水から塩を作ったり、釣った魚を干物などに加工して保存が効くようにしたりと、方法はいくらでもあります。それに、私には前世で勉強した農業の知識もありますし」


 チェリシアはそこまでいうと、ロゼリアへと顔を近付けていく。


「そうだ、ロゼリア。芋やトマトとかありますかね。あれなら多少水が少なくて寒くても育てることができますから」


「い、芋やトマト? それなら、王都の市場を覗けばあるかもしれないわ。あとで探しに行ってみましょうか」


「はい!」


 破滅の未来を回避するために、状況を改善できるのか。

 こうして、ロゼリアとチェリシアによるコーラル子爵家の立て直し計画が始まったのだった。

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