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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第二章 ロゼリアとチェリシア

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第46話 再びくぼ地にて

 プラウスたちがくぼ地までやって来ると、くぼ地の近くで大勢の村人たちが解体作業を終えて休んでいる姿があった。


「こ、これは領主様」


「うむ、ご苦労。解体は終わったかね」


「はい。あとはあのでかいドラゴンくらいですね。領主様と一緒に来られた部下の方が必死になって解体をしております」


「そうか」


 プラウスを見つけた村人が立ち上がり、報告を行っている。その話によれば、残っているのは厄災の暗龍くらいだという。それ以外は無事に解体が終わり、不要な部分の処理にあたっているところだった。

 ちなみに魔物たちは肉と魔石、皮などの使える部分以外は、すべて地面に埋められていた。放っておくと瘴気にがあふれ出てしまい危険なのでしょうがない。


「手の空いている者は、部下の作業を手伝ってやってくれ。あのでかさを数名で片付けるには厳しかろう」


「承知致しました。では、すぐに向かいます」


 プラウスの指示を受けて、村人たちは厄災の暗龍の解体作業の手伝いに向かう。

 それにしても二日もかけながらも解体が終わらないとは、どれほどの魔物がいたというのだろうか。改めて、このくぼ地だけで終わってくれたことに安心を覚えるプラウスである。

 朝の時間を目いっぱい使い、ようやくすべての魔物の解体を終えることができた。


「みなさま、お疲れ様です。料理をお持ちしましたよ」


「ちぇ、チェリシア?!」


「ちょっとお姉様。起きて大丈夫ですの?」


 ちょうど食事を取りたいと思っていたところへ、すっかり元気になったチェリシアが姿を見せていた。これにはロゼリアとペシエラもびっくりである。


「ええ、もう大丈夫よ。心配かけたわね、ロゼリア、ペシエラ」


 よく見ると、料理の入った重そうな鍋を抱えている。そんな状況でありながら、チェリシアはウィンクをしながらしっかりと答えていた。

 ただ、周りにはチェリシアのことを心配する村人たちの姿が見えるので、まだまだ本調子というわけではなさそうだった。

 ちなみにだが、村人とスミレはチェリシアのことは必死に止めたらしい。それでも、目が覚めたのだから、自分だけおとなしくしているのは嫌だと、まったく止める声を聞かなかったのだそうだ。

 だが、さすがに配膳となるとロゼリアとペシエラがいたためにがっちり止められていた。病み上がりなんだからおとなしくしてなさいと怒られて、チェリシアは渋々二人に挟まれるように座っていた。


 食事も終わりに近づいた頃だった。


「うん?」


「どうしたの、ペシエラ」


 突然、ペシエラが表情を歪めたので、隣で座っていたチェリシアが気になって声をかけている。


「今、何か聞こえたような気がしますわ」


「どこからなの、ペシエラ」


「お姉様、肩をつかまないで下さい。痛いですわよ」


 ペシエラが何か聞こえたというので、チェリシアがお皿を置いてペシエラの両肩を思いっきりつかんでいる。

 急なことだったのでペシエラとロゼリアは困惑している。


「落ち着きなさい、チェリシア。それで、何がどこから聞こえたのかしら、ペシエラ」


 チェリシアをなだめながら、ペシエラへと質問をしている。

 チェリシアが離れたので、ペシエラは肩を擦りながらロゼリアの質問に答える。


「あっち、くぼ地の中の方からですわね。不思議な声が聞こえたようですわ」


「むむむっ、これはもしかしたら精霊かもしれないわ。二人とも、くぼ地の中に向かいましょう!」


「ちょっと、チェリシア?!」


 唐突にチェリシアが走り始める。ただ、病み上がりということもあって、あまり速度が速くないのが救いだろうか。


「お父様、ちょっと散歩に行ってきますわね」


「お、おいっ!」


 ペシエラは勝手にいなくなるのはよろしくないと、プラウスに一言だけ伝えると、止めるのも聞かずにチェリシアの後をロゼリアと一緒に追いかけた。


 そうしてやって来たのは、くぼ地の中心。ここに倒れていた厄災の暗龍の姿も、すでに撤去されてなくなっている。

 二日前、ここには厄災の暗龍を含め、多くの魔物がひしめき合っていた場所だ。とてもそんなことがあったとは思えないくらい、今は静まり返っている。


「まったく、何もないではありませんの、お姉様。本当に精霊などいますの?」


 追いついたペシエラは、チェリシアに疑問を投げかけている。ところが、チェリシアは自信たっぷりにいると答えている。

 しかし、辺りを見回してもそのような様子はまったく感じられない。勘違いだったのだろうかと思えるくらい静かなのである。


「まったく、二人揃って速すぎよ……」


 少し遅れて、ロゼリアが追いついてきた。疲れたようで、膝に手を当てながら必死に呼吸を整えている。

 その時だった。

 三人が揃うのを待っていたかのように、いきなりその場の雰囲気が変化を始める。

 全身をピリピリと刺激するような魔力が満ち、その不思議な状況によって、三人の髪の毛が風もないのにふわりと浮かび上がる。


「何か来るわ」


 ロゼリアが警戒を強めて口にすると、三人の頭の中に直接声が響いてきた。


『やぁ、よく来たね。運命に抗いし者たち』


「だ、誰なの?」


 あまりにも突然のことだったので、辺りをきょろきょろとしながらロゼリアが問いかけている。


『誰かって? さっきまで君たちは、ボクのことを話していたじゃないか』


「もしかして、精霊?」


 返答を聞いたペシエラが、ぽつりとつぶやく。

 次の瞬間、目の前に光が集まり始め、パンと弾ける。


『そうさ。ボクは精霊だよ』


 三人の目の前に、背中に羽を生やした小さな存在が姿を見せたのだった。

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