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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第二章 ロゼリアとチェリシア

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45/58

第45話 正直に

 ロゼリアがスミレと入れ替わるように部屋を出た頃、ペシエラは父親であるプラウスに呼ばれて村長の家にやってきていた。この時のプラウスの雰囲気には、ペシエラも思わず逃げ出したくなっていた。

 一度大人まで経験した少女であっても、今は七歳の少女だ。大人である父親の前となると委縮してしまうようである。

 朝食の後からずっとこの雰囲気であり、さすがにペシエラも少々限界を迎えそうになっていた。


(お、お父様ってこんなに怖い方でしたかしら?!)


 完全に体を強張らせて、ばつが悪そうにまったくプラウスと目を合わせようとしていない。だが、プラウスからの無言の圧力は注がれ続けていた。

 そんな時だった。扉が唐突に叩かれる。


「失礼致します。ロゼリア・マゼンダです」


 タイミングよくロゼリアがやって来た。思わぬ援軍に、ペシエラが少し気持ちが安らいだ。

 許可が下りて、部屋の中に入ったロゼリア。


「チェリシア様はスミレさんにお任せしております。ご安心下さい」


「そうか。ちょうどよかった。君からも聞きたいことがあるので、少々付き合ってくれないかな」


「はい、私でよろしければ」


 侯爵家の令嬢相手であるため、プラウスは笑顔を装ってはいる。だが、まとっている空気は怒髪天そのもの。それでも、プラウスは怒りを抑えて、冷静に話を切り出す。


「昨日、君は予知夢でやって来たと言っていたね?」


「はい、その通りでございます」


 質問に対して静かに淡々と答えるロゼリアだが、プラウスの雰囲気に押されてか、少し迷いのある雰囲気が漏れてしまう。


「悪いが、それは嘘だな。私が見かけた魔法は、短期間で身につくようなものではない。となれば、もっと前から知っていて、あらかじめ準備を重ねていたことは明白。それに、子どもたちだけでここまでやって来たということも説明はできまい? なにせ、君たちが王都から消えたのは十数日前の話なのだからな」


 プラウスからの指摘に、ロゼリアもペシエラも言葉に詰まってしまう。ここまでしっかりとした矛盾を指摘されると、何も言えないというものだ。


「考えれば考えるほど、お前たちのことに関してはおかしなことばかりが出てくる。怒らないから、正直に話してくれないか?」


 追及をしてきたかと思えば、プラウスは最後に優しい表情を見せていた。

 プラウスにこのような表情をされてしまっては、二人はいよいよ腹をくくったようだ。


「お父様、これからお話することは、他言無用でお願い致しますわ」


 ペシエラは、プラウスに対してそのように切り出した。

 この言葉を皮切りして、ロゼリアとペシエラの口からはとてもじゃないが、信じられない話がたくさん飛び出てきた。

 王都から消えた方法、カイスまでの移動手段、それと、ロゼリアとペシエラの時間遡行についてだ。さすがにチェリシアの転生の話だけは秘密にしたようである。


「なるほどな。それならばロゼリア嬢が八歳で魔法が使えたこと、ペシエラのその口調や所作にも納得がいく。貧乏な我が家では、家庭教師など雇う余裕などないからな」


 これらの話を聞いたプラウスは、これまでの違和感というものが一気に解消したようだ。しかし、あまりにも突飛な内容ばかりだったので、消化しきるまでには少々時間がかかりそうである。

 そのため、顔を押さえてしまっている。


「それと……。魔物氾濫を予見できたのは、ペシエラが一度経験をしていたからなのだな」


「その通りですわ、お父様。ですが、さすがに厄災の暗龍の出現は想定されていませんでしたわ」


 表情を曇らせるプラウスが確認するように尋ねると、ペシエラもまた渋い表情をして答えている。

 しばらく黙り込んでしまう三人。

 そこへ、唐突に扉が叩かれる音がした。


「誰だ。大事な話の最中なのだが?」


 プラウスが反応する。


「スミレでございます。大切なお話し中、大変申し訳ございません。ですが、領主様に至急お知らせしたいことがございますので、失礼をさせていただきます」


「どうしたというのだ」


 至急にというものだから、プラウスは気になったようだ。


「実は先程、チェリシア様が一度目を覚まされました」


「なんだと?!」


 チェリシアが目を覚ましたと聞いて、プラウスがかなり勢いよく食いついている。扉を挟んで立っているはずのスミレは勢いに少し怯んだようで、少し声を震わせながら続きの報告を始める。


「ですが、まだ本調子には遠いようでして、しばらくして再び眠りにつかれました」


「そ、そうか……」


 また眠ってしまったと聞いて、プラウスは近くにあった椅子に元気なく腰掛けている。チェリシアのことが、それだけ心配だということなのだ。

 だが、いつまでも落ち込んではいられない。領主である自分が今の状況で動かなくてどうするのだ。

 プラウスは奮い立つ。


「ならば、スミレはそのままチェリシアの面倒を見てくれ」


「承知致しました。それでは失礼致します」


 プラウスの指示を受けたスミレは、再びチェリシアの世話へと戻っていく。


「さて、私たちは魔物氾濫のあった現場に向かおう。解体処理ももうそろそろ終わるだろうからな」


「はい、お父様」


 チェリシアのことは心配ではあるものの、プラウスは領主としてやるべきことをするために、まずは魔物氾濫の発生したくぼ地へ向かうことにしたのだった。

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