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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第二章 ロゼリアとチェリシア

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第37話 暗い空の中

 翌日、チェリシアが魔物の討伐への苦手意識を克服したということで、目的地であるカイスへの移動を再開させる。

 眠る前は晴れていた空模様だが、この日はどうにも雲行きが怪しい。このままでは雨が降り出しそうな感じだ。

 エアリアルソーサーでの移動に不安を覚えるロゼリアたちだったが、チェリシアは自信たっぷりに大丈夫と言い切っていた。そんなわけで、チェリシアの言葉を信じて、空の旅を再開させることとなった。

 しっかりと自分たちのいた痕跡を消して、エアリアルソーサーに乗り込んで宙へと浮かび上がる。

 カイスの方向へとエアリアルソーサーを進ませていると、目の前に断崖が迫ってくる。


「あの高台の上が、コーラル子爵領のカイスがある場所ですわよ」


 断崖を見つめるペシエラが、指を差しながら叫んでいる。


「よーし、一気にあの上まで昇ってしまうわよ」


 目的地だと分かると、チェリシアはここぞとばかりに気合いを入れている。

 天候自体はしばらく前から雨が降り出してしまい、視界はそれほどよろしくない。だが、チェリシアの展開するエアリアルソーサーは、そんな雨すらもまったくものともしない。

 降り続く雨を切り裂くように飛ぶエアリアルソーサーは、その高度を徐々に上げていっている。

 高度が上がると、周りの風景もよく見えるというものだ。後ろを振り返れば、ずいぶん前に通り抜けてきたシクラメアの街が、小さくながらもしっかりと見えている。

 十分な高度まで上がったエアリアルソーサーは、無事に高台の上へと移動している。


「まだカイスは見えないわね」


「ええ、まだまだ先ですわよ」


 上昇した後にチェリシアがつぶやく。同時にペシエラが地図を確認していたのだが、まだ目的地は遠いようだった。

 かなり暗くなってきた上に、急激な上昇でチェリシアが魔力を消耗したこともあって、高台に登ってしばらくのところで一時的に休息を取ることにする。

 雨でぬかるんでいるために、チェリシアは魔石で結界を作った後に、その中だけを蒸発の魔法でぬかるみを消し去ってしまっていた。疲れてはいるようだが、このくらいはできるようである。いや、疲れていても快適な野宿のために頑張ったのかもしれない。どちらにせよ、その日の野宿も快適なものだった。


 目を覚まして翌日を迎えるも、天候は相変わらずの曇り空。雨は夜中のうちに上がったようだが、なんとも不安な空模様だ。

 朝食を無事に済ませると、しっかりと片付けをすると、目的地のカイスへと向けての空の旅を再開させる。


「ようやく見えてきましたわね」


 王都を出発してから七日目にして、遠くに目的地であるカイスが見えてきた。

 馬車であるならば、ほぼ東にあるシェリアまで十日、そこからほぼ真北に上がって十日とかかるカイスの村。だというのに、エアリアルソーサーによって地形をガン無視して進むと、半分以下の日数で到着してしまった。

 目的地が見えてきて安心しているはずなのに、このあまりにも常識外れの移動に、ロゼリアもペシエラもなんといっていいのか分からない感じだった。


「ペシエラ、魔物氾濫の正確な場所は分かるかしら」


「お姉様は起きることは知っていても、場所はご存じありませんのね」


 村の見える位置で一時的にエアリアルソーサーを停止させたチェリシアは、ペシエラにこんな質問をしている。どうやらペシエラの指摘通りに、魔物氾濫の発生場所を知らないようだった。


「仕方ないわよ。ゲームでは攻略対象との会話の中で語られるだけだったんだもの。しかも、カイスの村の近くでとしか語られなかったわよ」


 チェリシアが言い訳をしていると、ペシエラは呆れた様子を見せている。


「ロゼリアは感じているみたいですけれど、カイスの村の東側から不穏な魔力を感じられると思いますわ。そこが、問題の魔物氾濫の発生した場所ですわよ」


「そうなのね。それじゃ、村に行く前に一度確認してみましょうか」


 ペシエラの言葉が気になったチェリシアは、二人が強く感じる不穏な魔力の発生源へと向かう。

 向かった先には、大きなくぼ地が見える。そこの中心には、なにやら不穏な魔力が集まりつつあるようだ。


「これは、完全に瘴気が集まり始めていますわね」


「光魔法の浄化を使えば消し去れるけど、どうするの?」


「それはおやめくださいませ、お姉様」


「あら、ダメなの?」


 光魔法も使えるぞとアピールするチェリシアだったが、ペシエラは強い口調で止めていた。


「魔石は魔物から採取できますの。瘴気の段階で浄化してしまっては、魔石が手に入りませんのよ。だから、このまま魔物氾濫の発生を待つのが最適なのですわよ」


「そ、そうなのね」


 ペシエラの強い口調に、チェリシアは言いくるめられてしまった。

 魔石というものは、瘴気が集まり凝縮されることで発生すると伝えられている。書物などに記録が少々見られる程度なので、そのメカニズムは詳しくは解明されていない。

 だが、魔物の体の中には必ず魔石が存在している。だからこそ、魔物氾濫の発生を待たねばならないというわけだった。


「……見ているだけというのも、歯がゆいものね」


「ええ、目的のためとはいえ、仕方ありませんわ」


 早く着いてしまったがゆえに魔物氾濫の発生を潰せる好機ではあるが、目的が目的であるために、ロゼリアたちはやむなく瘴気をこのまま放置することになった。

 ここまでの移動でたったの七日程度しか経過していない。ゲームは逆行前の記憶と照らし合わせると、まだ二十日以上の長い期間が残っている。

 カイスの村の近くで、魔物氾濫の発生の時を息をひそめて待つことにしたのだった。

間に合わなければ更新しない予定でしたが、展開上、時間合わせより毎日更新を優先しました

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