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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第二章 ロゼリアとチェリシア

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第32話 来る戦いに備えて

 とんでもないことを思い出したロゼリアたちだったが、とにかく課題が多かった。

 問題が発生するカイスまではとにかく遠いというのに、自分たちだけで解決しようとするとか本当に無茶苦茶すぎる話である。

 おとなしく馬車での移動となった場合、その移動は二十日間ほどかかるので、猶予としてはほぼ一か月だった。

 その期間中に、どうにかしてこの移動の問題を解決しないといけなかった。

 三人は、その解決に向けてあれこれと解決を模索することとなる。


 大問題を思い出してから一週間が経った。

 この日はマゼンダ商会に集まり、ロゼリアたちは対策を話し合うことにした。


「テレポート、……転移魔法はどうかしら」


 話を始める否や、チェリシアが明るい声でとんでもないことを言い出した。


「それは、どういったものかしら」


 わけがわからないので、ロゼリアはチェリシアに意味を聞いてみる。

 チェリシアの説明によれば、一瞬で別の場所へと移動できる魔法だという。さらに聞けば、前世で超能力というものに憧れていたらしく、魔法が使えるのだから試してみたいということだった。


「さすがにカイスまでは遠すぎるので無理だとは思うけれど、王都の外までなら飛べると思う。そうしたら、外に出たことを悟られずに、こっそりと出ていけるわ。問題はそこからの移動だけど、空飛ぶ魔法でも使えればと思うのよ」


 真剣な表情で、チェリシアがとんでもないことを話している。これにはさすがにペシエラが口を挟んだ。


「お姉様。魔法で空を飛ぶとか本気で思ってますの? 第一そんな魔法を使えたところで、王都からカイスまでの移動を可能にできると思っていますの? 距離と地形を考えて、現実を見て下さいませ」


 凄まじく辛辣である。

 王都からカイスの移動は、馬車を使ってシェリアまで十日、そのシェリアからカイスまでも十日だ。さらに、カイスは高台の上にある。

 それに加え、飛行魔法など、今まで誰も使ったことのない魔法。そもそも、そんな発想すらも持たれたことがない。まったくの未知の魔法ゆえに、ペシエラが慎重になるのも無理もなかった。


「まあまあ、見ててよ」


 そうかと思えば、チェリシアはおもむろに立ち上がると、大きく息を吸っている。

 次の瞬間、ロゼリアとペシエラの前で信じられないことが起きた。

 突然、チェリシアの姿が消えたのだ。

 そうかと思うと、一瞬でチェリシアが再び姿を現した。どういうことなのか、まったくもって理解が追いつかない。


「ああ、実際に人前で成功させるとすごく快感。あれ以来ひそかに練習しておいてよかったわ」


 どうやらチェリシアは、魔物氾濫のことを思い出してからというもの、魔法の特訓をしていたらしい。そして、憧れのひとつである瞬間移動魔法を習得してしまったというのだ。とんでもない話である。好きこそものの上手なれというやつだ。


「場所のイメージさえできれば、今の状態でも短距離なら飛べるみたいなのよね。ちなみに今飛んだ先は商会の屋根の上よ。見つかりそうになったから慌てて戻ってきたわ」


「あ、ああ、そう、なのね……」


 もはや何を言っているのかまったく理解できない。そのくらいにロゼリアたちは驚いていた。


「どうやら私も、他の異世界転生者の例に漏れず、反則的な補正がかかっているみたいだわ。なので、移動手段はお任せちょうだい」


「え、ええ。頼むわね」


 もはやチェリシアの言い分にどう反応していいのか分からずに、ロゼリアたちはもうそのままお任せすることにしたようだった。

 しかし、だからといって何もしないわけにはいかない。

 出発の時までにできる限りの準備をしておく。

 魔物氾濫を相手にするとなれば、魔物と戦うための攻撃魔法は必須。ロゼリアは講師についてもらって、とにかく魔法を鍛えていた。

 チェリシアの方は魔法をあんまり鍛える様子はなく、こそこそと何かをしているようだった。ペシエラは気になるものの、年上の二人にばかり頼ってられないと、自分にできることを考えて過ごしていた。


 そうして、春の三の月が残り二十日となった日のこと、いよいよ行動を実行に移すことになる。


「お待たせしたわね。チェリシアに言われた通り、着替えだけは用意してきたわ」


 大きなカバンを持ったロゼリアが、コーラル子爵邸を訪れている。


「おはよう、ロゼリア」


「おはようございますわ、ロゼリア」


 使用人を伴わず、姉妹そろってのお出迎え。二人はロゼリアとともにチェリシアの部屋へと向かう。

 部屋へと入った三人は、円を描くようにして集まっている。


「食事の用意はいいとは言っていたけれど、どうするつもりなのかしら、チェリシア」


「それは、後のお楽しみ。ひとまず、王都の外まで飛ぶので、荷物を持って私につかまってちょうだい」


「え、ええ」


 質問に答えてもらえなかったので、ロゼリアは戸惑っているようだ。

 とはいえ、ゆっくりもしていられないので、おとなしく三人で手をつなぎ合う、


「では、行くわよ!」


 チェリシアが集中して、魔法を使おうとしている。それと同時に、ロゼリアもペシエラも体が湧きたつような感覚を覚える。

 次の瞬間、周囲の景色が一変する。

 遠くには王都を取り囲む防壁が見えている。つまり、王都の外まで一瞬で移動してしまったのだ。


「まさか、三人まとめて一瞬で移動してしまうなんて……」


 信じられないできごとに、ロゼリアは心臓がバクバクといっている。

 チェリシアの言葉で念のために荷物を確認するが、特になくなったものはないようである。すべてが大成功だった。

 ところが、そんな余韻をぶち壊すように、チェリシアが次の行動に移る。


「さぁ、私がこの日のために用意した移動手段の発表よ!」


 うきうきとした様子のチェリシアは、すっと両手を体の前に突き出している。

 次の瞬間、三人の目の前には、円形の不思議な物体が浮かんでいたのだった。

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