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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第二章 ロゼリアとチェリシア

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第28話 ヒントは兄

 商会の開業日には、酢やソースとともに、石けんも献上された。

 説明書を同封していたものの、その翌日にはお城に呼び出されていた。商会が本格的に稼働したはいいものの、当面の間はとても忙しくなりそうだ。

 開業翌日に城に呼び出された際、ロゼリアたち三人は女王とともにシルヴァノともお茶会で顔を合わせた。

 その時には、新たにジャムという秘密兵器を投入していた。

 ジャムを作るのに使ったのはマゼンダ侯爵領の果物とアクアマリン子爵領の砂糖であり、これもチェリシアの前世の記憶で作り出したものだった。

 このジャム、意外にもシルヴァノの心をつかんだようで、なおさらロゼリアたちは婚約者候補としてのアドバンテージを得ることになってしまったのだとか。どうしてこうなった。


 扱うものが限られてはいるものの、チェリシアの前世の記憶を元に生み出された商品は、そこそこ評判を呼んでいる。

 商会の出だしは順調である。

 そんな折、今日もチェリシアの部屋に集まって三人で作戦会議の予定のロゼリアは、馬車に乗ってコーラル子爵家へ出かけようとする。

 ところが、その馬車に同行する人物がいた。


「ロゼリア、俺も同行していいだろうか」


 ロゼリアの兄であるカーマイルである。

 来年には学園に入学することが決まっているカーマイルだが、父親である侯爵から入学前にも少し体験をしてもらおうということで、仕事の一部を割り振られていた。今回は、コーラル子爵との交渉である。

 その話を聞いたロゼリアは、表情を歪ませている。

 単純な話、商会という始めたばかりのことにおいて、その交渉に十二歳という子どもを立たせるという行為に不安を感じているからだ。

 とはいえ、ロゼリアだって現在は九歳の子どもだ。人のことが言えなさすぎる。それゆえに、カーマイルの同行を拒否できず、一緒にコーラル子爵家へと向かうことになった。


 コーラル子爵家に到着したカーマイルは、執事のリモスを伴ってプラウスのところに向かっていく。

 再び一人となったロゼリアは、話し合いの場となっているチェリシアの部屋へと向かっていった。

 部屋の中には、当然のようにペシエラも待ち構えている。三人寄らば文殊の知恵とはいうものの、果たしてどんな話し合いになるのだろうか。


「ロゼリア、誰か一緒に来ていたのね」


「ええ、お兄様が同行していたわ」


「まぁ、カーマイル様がですか」


 チェリシアの質問にロゼリアが答えると、姉妹そろって同じ言葉を返してきていた。まったくの別人であるというのに、なぜ同じ言葉が返ってきたのか。これにはロゼリアも笑ってしまう。

 この反応にペシエラが不快感を示しているものの、話し合いのために集まっているためにぐっと我慢している。


「そういえば、ロゼリア」


「なにかしら、ペシエラ」


「カーマイル様って、来年から学園に通われるのですわよね?」


「ええ、そうね。十三歳になる年を迎えると、貴族は基本的に全員通わされるからね」


 ペシエラが確認するように問いかけると、ロゼリアがはっきりと答えていた。


「そっかぁ。この乙女ゲームの舞台となる学園かぁ。……そっか、学生が使うような物品を作ることができれば、それでさらに商会の価値が高められそうね」


 ロゼリアとペシエラの話を聞いていたチェリシアが、なんとも悪い顔をしている。何かを思いついたかのような表情である。


「チェリシア、何かいい案でもあるの?」


「ええ、まぁね。私の前世において、学生であればだれもが使ったことが……、いや、学生でなくてもほとんどの人が使うことになるあれがあるわ」


「あれって何よ」


 なにやら濁した感じに話すチェリシアに対して、今度はロゼリアとペシエラが声を合わせていた。同時に同じことを言ったとあってか、ペシエラは再び嫌そうな表情を浮かべている。この一年でだいぶ仲が良くなったとはいえど、さすがに言葉がかぶることはまだ嫌なようである。

 その後、チェリシアは二人に思いついたアイディアを話す。その内容に二人は真剣に耳を傾けている。


「またずいぶんなものを思いついてくれましたわね」


「アイディアとしては面白いと思うんだけど、それを作ろうとしたら、いろいろと大変じゃないかしらね」


 ロゼリアもペシエラも興味を示したようだが、作戦として難色を示している。

 その理由のひとつが、まったく想像のつかないことだったからだ。

 だが、チェリシアはやると決めたからには燃えているようだった。


「確か、魔力のこもった石、魔石っていうものがあるのよね。それを使えば、多少の無茶は実現可能なはずだわ。カーマイル様がご入学なされるまでに、なんとしても完成させるわよ」


 右手をがっつりと握りしめて、チェリシアのやる気は十分なようである。

 こうなってくると、もう止めることはほぼ不可能。ロゼリアとペシエラは互いの顔を見合わせて、大きなため息をついている。


「よーし、早ければ今夜にもお父様に掛け合ってみましょう。お父様とカーマイル様が話をなさってられる間、アイディア出しを頑張るわよ」


「え、ええ」


 ロゼリアはかなり引き気味だし、ペシエラはかつての自分の姿で奇抜なことを口走られて頭を抱えている。

 さてさて、チェリシアは一体何を思いついてくれたというのだろうか。

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