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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第二章 ロゼリアとチェリシア

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第25話 商会の立ち上げ

 ソースを作り上げた数日後のことだった。


「いや、本当に実行されるとは思わなかったわ」


「私も」


「わたくしもですわ」


 ロゼリアたちが呆然と見上げている。

 実は、貴族街のほど近い場所に、新しい建物が建設され始めていたからだ。

 これは、先日チェリシアたちが話し合っていたものだ。マゼンダ侯爵領とコーラル子爵領の特産品などを流通させるための商会、その本部の建設が今こうやって行われているのである。


「娘たちが考案したのだ。それこそ立派な建物を建てようではないか!」


 建設現場を目の前にして、ヴァミリオが声を上げて張り切っている。

 目の前にいるのは誰かしら。それがロゼリアの率直な感想である。ここまで親バカな行動を取った覚えがまったくなかったからである。


 さて、この商会はマゼンダ侯爵家とコーラル子爵家の共同出資によって設立される。

 この設立にあたっては、マゼンダ侯爵であるヴァミリオが王家と交渉を行った。

 当然ながら、貴族が商会を持つことは、最初はかなり反対をされた。しかし、そのアイディアの出どころがコーラル子爵家の長女であるチェリシアであると分かると、一転、商会の設立が許可された。発案者の権利を保護するというのが基本的な姿勢だからだ。

 その代わり、領内の産物と身内の発案のみを取り扱うという制限はついてしまった。だが、アイディアの宝庫であるチェリシアがいる以上、何も問題はなかった。


 建設現場には、ヴァミリオだけではなくカーマイルとプラウスも姿を見せていた。それというのも、次期マゼンダ侯爵となるカーマイルを仲間外れにしないためだ。

 逆行前では家の中での疎外感を抱いていたカーマイルが、当時のチェリシアと組んでマゼンダ侯爵家を没落させている。それを避けるためにも、積極的に家の事業に関わらせているというわけだ。


「いやはや、ずいぶんと建設の進みが早いですな」


「それは当然ですよ。娘たちのアイディアを活かす場なのです。早々にも完成させねば、もったいないというものですぞ、プラウス殿」


「ははっ、ヴァミリオ殿の行動力には、頭が下がりますわい」


 父親同士は、とても和気あいあいと話をしている。


「いやいや、チェリシア嬢のアイディアあってこそというもの。こんな面白い発想をする娘がいるとは、うらやましい限りですぞ、プラウス殿」


「はははっ。娘を褒められたとはいえ、譲歩は致しませんぞ。私の方が子爵と、爵位に差はあるとはいいましても、商売上では関係ありませんからな」


「ふっ、その通りだな」


 本当に楽しそうな父親たちである。その姿を見て、ロゼリアたちは安心した表情を見せている。


「そういえば、商会の名前はいかが致しましょう」


「プラウス殿には悪いが、ここは我が一門の名を前面に出させてもらおう。ただし、商会の紋は両方をイメージしたものにするつもりだ」


「そればかりは仕方ありませんな。なにぶん、我がコーラル子爵家はあまりいいイメージを持たれていない。表立って名前を出せば、相手に警戒されてしまいますものな」


 ヴァミリオの言い分に、プラウスはとても納得しているようである。

 最初こそ会話の中身は他愛のないものだったというのに、どんどんと内容が交渉じみたものに変化していっている。


「とはいえだ。アイディアをたくさんもらっている以上は、それ相応の見返りは出すから安心をしておいてくれ」


「ええ、助かりますとも」


 いろいろとハラハラしたような内容ではあったものの、結局は穏便にどうにか落ち着いたようである。


 だが、コーラル子爵領はまだまだ問題点が多い。

 それというのも、農地がほとんど存在していないというのが大問題なのだ。

 海からは塩分を含んだ温かい風が吹き、山からはフェーン現象による熱風が吹き下ろす。おかげで、ろくな作物の栽培が行えないという状況はまったく改善ができていない。相手が自然現象ゆえに、対処のしようがないというものだ。

 コーラル子爵の一族も、よくそんな土地を手放さないものである。聞けば、生まれ故郷ゆえに見捨てられないということらしい。それだけ、愛着が強い土地というわけなのである。

 とはいえ、かなり広大な領地であるので、土地の改善が行えれば、それだけ繁栄する余地がある。様子を見ながら徐々に改善策を講じていくことに決定したようだ。


 建設現場の視察を終えたヴァミリオとプラウスは、侯爵邸に移動する。いよいよ商会で働く人員の選定に入るためだ。

 珍しいアイディアによる商品が多数あるし、商会という場所ゆえに大金が動くことになる。となれば、それなりに信用の持てる相手でなければならない。人員の選定はとても慎重に行われた。

 当面は両家から使用人を数人ずつ出して運営を行うことに決まった。外部から人を雇うのは、その後になるようである。


 この話し合いの結果は、ロゼリアたちにも伝えられる。まだ幼いとはいえども、今回の計画の発案者であるので知る権利はあるというわけだ。

 商会というアイディアが無事に採用されて、その計画が順調に進んでいると知ったロゼリアたち三人は、とてもほっとした様子を見せている。


「とりあえず、チェリシアの前世の知識を活かす場所が作れそうで、ひと安心ね」


「そうね。商会のことはお父様たちにお任せして、次のことを考えなくちゃね」


「むぅ、六歳という年齢でなければ、わたくしも魔法をバンバンと使っていきますのに……。ああ、早く十歳になりたいですわよ」


 商会のことを気にする二人とは違い、ペシエラはまったく違うことを気にかけていた。


「あっ、やっぱりペシエラも魔法が使えますのね」


「当然ですわよ。ロゼリアだって使えますでしょうに」


「となれば、後の問題は私かぁ……。魔法さえ使えれば、前世のアイディアをもっと活かせるでしょうにね」


「できるわよ。あなたはチェリシアなんですからね」


「そうですわよ、お姉様」


 自分たちの未来を切り開くためにも、自分たちのできることを真剣に話し合うことを決めた三人。

 今日のところは、プラウスの帰宅に合わせて解散となったのであった。

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