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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第二章 ロゼリアとチェリシア

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第22話 三人は運命共同体

 ペシエラの乱入で邪魔され続けてはいけないと思ったロゼリアの一か八かの賭けは、見事に成功を収める。

 無事に逆行前の自分を処刑に至らしめた当時のチェリシアと和解を成立させたことで、ロゼリアはほっと胸を撫で下ろしている。

 ところが、そんな状況に息つく間もなく、ペシエラから質問が飛んでくる。


「ロゼリア、今日はお姉さまと何をするつもりだったのかしら」


「以前頼まれていた酸っぱくなったワインのことの報告ね。それと、今後の相談。ほら、チェリシアが婚約者候補になったとはいえ、コーラル家は子爵でしょ?」


 ペシエラの質問に、ロゼリアはものすごく素直に答えている。

 ロゼリアの答えを聞いたペシエラは、なんとも険しい顔をしている。


「なるほど。少なくとも伯爵には陞爵されろということですわね」


「その通りよ」


「えっ、子爵のままじゃダメなの?」


 ロゼリアとペシエラが納得し合う中、チェリシアが驚いて質問をしている。


「そうなのですわよ、お姉様。相手は王家ですので、できれば公爵か侯爵が望ましいところですわ。そういう点においてはロゼリアは既に満たしているけれど、わたくしたちはまだ子爵令嬢。子爵では王家とは不釣り合いとされ、社交界ではいろいろと陰口を叩かれることになりますのよ」


 ペシエラは、まるで経験してきたかの言い方をしている。


「時を戻ってくる前、マゼンダ侯爵家を潰した後、わたくしの家は伯爵に陞爵されましたわ。それを思いますと、やはり体裁というものは気になるようですわよ」


 実体験まで加えられては、チェリシアも納得するしかなかった。


「ですけれど、その後でしたわ。わたくしたちは、マゼンダ侯爵家の力というものを思い知らされましたわ。マゼンダ侯爵家亡き後の政治は、かなり荒れましたからね」


 ペシエラはかなり渋い顔をしている。にっくきロゼリアを処刑した後、思いもよらないことがあったのだということは想像に難くなかった。

 しかし、ロゼリアはその内容について詳しく尋ねようとはしなかった。今の方が大事だからである。


「それじゃ、チェリシア。酸っぱくなったワインのことについてだけど、詳しく教えてもらっていいかしら」


「あ、もちろんですよ」


 ペシエラの表情がよろしくないので、ロゼリアは話題を変えることにした。

 チェリシアは、酸っぱくなったワインのことを説明し始める。

 酢酸発酵をして、アルコールが酢に変わってしまったことでお酒とはかけ離れた味になってしまうということらしい。その酸っぱくなったワインにもいろいろ活用があると意気揚々と説明しているのだが、いろいろ分からない単語が混ざっていたために、ロゼリアとペシエラは理解に苦しんだようだ。


「酸っぱくなったワインはワインビネガーといって、お料理に使うことができます。ただ、赤と白で使う用途が変わるんですよね。ああ、ロゼリアの領地から運ばれてくる日が楽しみだわ」


 チェリシアは恍惚とした表情を浮かべていた。さすがに友人と妹とはいえど、その姿には引いていた。

 しかし、酸っぱくなったワインにも使い道があることを知ることができたのは、マゼンダ侯爵家にとっては朗報である。


「お父様によれば、数日中には届くそうよ。届いたらお招きしますから、楽しみにしていてちょうだい」


「ああ、本当に楽しみだわ。野菜などと煮込んでソースにしたり、肉や魚を漬け込んでくさみを取ったりとか。ふふっ、料理に革命が起きるわ」


 嬉しそうな様子のロゼリアから話を聞いて、チェリシアはとても不気味に笑っていた。


「自分の顔でよく分からないことを言われるのは、なんともこたえますわね」


「なによう。異世界からやってきた私の知識を使って、コーラル領を豊かにしてあげるんだから。見てなさいよ、伯爵くらいならすぐになってみせるんだから」


 ペシエラは困惑の表情を浮かべているものの、チェリシアの方はというとかなり息を巻いているようだった。

 チェリシアは、こと料理のこととなると、ずいぶんと人が変わったように話し出す。その様子から、ロゼリアはチェリシアは食にこだわりのある人物であったと見ているようである。

 ただ、その発言内容がほとんど理解できないだけに、ロゼリアの中には漠然とした不安のようなものがあるようである。


「まあ、料理のことはチェリシアに任せておくとしましょう。それよりもペシエラ」


「なにかしら、ロゼリア」


 これ以上話されても理解不能と見たロゼリアは、改めてペシエラと話をすることにした。

 声をかけられたペシエラは、相変わらず露骨なまでに嫌な表情を見せている。


「今後の話し合いをするとして、うちに来た時にはペシエラにも一緒に家庭教師の指導を受けてもらいますよ」


「いいですわよ。これでも女王教育まで受けた身ですもの。わたくしの実力というものを、ロゼリアとお姉様に見せつけて差し上げますわよ」


 ロゼリアからの提案を聞いて、ペシエラは自信たっぷりに笑っていた。

 どうやら、ロゼリアの睨んだ通り、ペシエラは死に戻りの前には女王の座に就いていたようだ。

 そして、この返事によって、本格的に三人は最悪の未来を回避するための行動を共にすることとなる。


 当面の目的は、コーラル子爵の陞爵と子爵領の改善。

 この王国の未来をそれぞれの形で知る三人が、ひとつの目標に向かって協力し合う体制がここに整ったのだ。

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