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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第二章 ロゼリアとチェリシア

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第21話 こじれた糸を解きほぐす

「ペシエラ・コーラルは、私と同じように時を遡ってきたチェリシア・コーラルその人だわ」


 ペシエラを指差しながら、ロゼリアはとんでもないことを言い放っていた。

 ロゼリアにこんなことを言われながらも、ペシエラは余裕の表情を浮かべている。


「お姉様のご友人は、なかなかに面白いことを仰りますのね」


「ちょ、ちょっと、ペシエラ。……ロゼリア、それってどういうことなの?」


 不敵に笑うペシエラに戸惑いつつも、ロゼリアへと確認を取ろうとしている。

 困惑の表情を浮かべているチェリシアを見ながら、ロゼリアは強気の表情を崩さずに話を始める。


「とぼけるのね」


「とぼける? 何を?」


「まったく、少しは五歳らしい態度を取りなさいよ。それだけで、普通の子どもではないという証左になるわ」


 あざ笑うペシエラを見て、ロゼリアは額に手を当てている。


「常に私を睨んでいるだけでは飽き足らず、チェリシアにも時々鋭い視線を送っていたわ。それは、本来の自分の立ち位置を奪われた感情から来るものでしょう」


「……」


 ロゼリアの指摘に、ペシエラは唇をかみしめている。

 ペシエラは表向きは仲の良い姉妹として振る舞っているため、時折見せていたその表情に違和感を覚えないわけがなかったのだ。最初から気になっていたロゼリアだからこそ、気が付けたのだろう。


「で、でも……。もし、そうだとして、ロゼリア以外にそんなこと、ありえるの?」


 チェリシアが疑問をぶつけてくる。

 ところが、ロゼリアはこの質問にもまったく動じていない。


「ありえなくはないでしょう。第一、チェリシア、あなたは自分が異世界から転生してきたと言っていたでしょう?」


「あっ!」


 ロゼリアの指摘に、チェリシアはハッとしている。すぐさまペシエラへと視線を向けていた。


「私の勘ではあるんだけど、おそらくは私を処刑して安堵したのも束の間、私がいなくなった未来でよからぬことがあったのでしょうね。そして、死んでしまったペシエラの前世であるチェリシアも、私のようになんらかの力が働いて、この時代に戻ってきた」


 ロゼリアはペシエラへと迫っていく。


「だけど、そこで問題が起きた。本来自分が戻るべきだった体に、すでに別人が入り込んでしまっていた。そこでやむなく、妹として生まれ変わることにした。そういうことではないかしら、ペシエラ(チェリシア)。これならば、前世の私、転生してきたチェリシア、双方が知らない妹がいるというのも頷けるわ」


 ロゼリアはペシエラに触れようと手を伸ばす。ところが、伸ばした手を強くはたかれてしまった。

 ロゼリアの手を払いのけたペシエラは、観念したように二人へと鋭い視線を向ける。


「ええ、そうですわよ。よく分かりましたわね」


 ペシエラは強く手を握りしめている。


「仰る通り、わたくしはあなたを陥れたチェリシア・コーラル本人よ!」


 はっきりと認めた。

 その瞬間だった。


「なっ?!」


「よかった。やっぱりそうだったね。よかった、やり直しの時代にもあなたがいて」


「な、何をなさいますの!」


 突然、ロゼリアに抱きつかれたペシエラは、予想外の行動に戸惑っている。しかも、ロゼリアが泣いているのだから、余計にである。


「わ、わたくしを恨んでらっしゃるんじゃないのですか? わたくしは、あなたが処刑されるように仕組んでいたのですから」


「恨む? ええ、そうかもしれないわね。でも、時間が巻き戻った今では、そんなことはどうでもいい話よ。あの時のチェリシアと、こうやって仲良くできるかもしれないんだから」


「な、何を仰ってますのよ!」


 ロゼリアからとげのない言葉を向けられてペシエラは、はっきりと動揺をしていた。思ってもいなかったのだろう。

 だが、これはロゼリアの本心であると、現在のチェリシアから告げられる。その上、将来の悪い結末を回避しようとしていることも。


「ロゼリア、あなた……」


 ぼーっとした様子でかけられた言葉に、ロゼリアはにっこりと微笑んでいる。


「あっ、そうだわ。これも伝えておかないと」


 ロゼリアは突然、何かを思い出したようだった。


「私、シルヴァノ殿下のことを好きになれないから、ペシエラに譲るわね」


「はあ? どうしてですのよ」


「だって、ろくに確認もしないで私たち一家を処刑したのよ? そんなことがあって、好きになれると思う?」


「そ、それは……」


 逆行前の最期の瞬間、それをロゼリアははっきりと覚えている。その時のことがトラウマになっているらしく、シルヴァノに対してまったく好意を抱けなくなっているようなのだ。

 それに、ペシエラはお城でのお茶会の際にしきりにシルヴァノを見ていたことに、ロゼリアは気が付いていた。今のペシエラの口調という情報も加味すれば、あの後は夫婦になっていたことは間違いないだろう。ロゼリアはいざこざを起こす気はもうないのである。


「せっかくのやり直しなのよ。不幸なんてものは繰り返すべきではないわ。だから、私たちみんなで、幸せをつかみ取らなくっちゃね」


 ウィンクをしながらのロゼリアの力強い宣言に、ペシエラは口をあんぐりとさせてしまう。

 とはいえ、これだけ清々しいまでの宣言をされてしまえば、いつまでも黙っていられるわけもなかった。


「そうですわね。わたくしもあんな経験は二度としたくはありませんわ。今世ではよろしく頼みますわよ、お姉さま、ロゼリア」


「もちろんよ、ペシエラ。私も転生前の知識を使って、コーラル子爵家を見違えらせてみせるんだから!」


 ここに、逆行してきた二人の令嬢と、転生してきた令嬢による同盟が築かれたのである。

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