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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第二章 ロゼリアとチェリシア

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第14話 次なる調味料を求めて

 ロゼリアは魔法の使いすぎということで、シェリアの子爵邸へと戻ることになった。チェリシアも付き添って屋敷に戻っている。

 宰相たちの案内は二人の両親であるマゼンダ侯爵とコーラル子爵の二人が務めている。


「お疲れ様、ロゼリア。こんなになるまで魔法を使わせちゃってごめんなさい」


「いいのよ。チェリシアのせいじゃないわ。あの魔法使いたちに理解させるには、徹底的に見本を見せないといけないと張り切りすぎた私が悪いのよ」


 屋敷の中でベッドに横たわって休むロゼリアは、心配するチェリシアにあんまり気にしないようにと言い聞かせていた。

 だが、友人であるロゼリアが目の前でぐったりしていては、心配になってしまうというものだ。

 本気で心配をしているチェリシアを見ながら、ロゼリアは少しだけ眠らせてもらうことにした。


 夕食を終えて戻ってきたチェリシアは、休んでいたロゼリアのところへとやって来る。

 これだけ休んだということもあり、日の暮れた時間には、ロゼリアはだいぶ回復していた。


「よかった、ロゼリア。目が覚めたのね」


「ええ。一度、十九歳まで生きていたから、その影響があるのかもしれないわね。八才ならあんな魔法を使ってしまって、ただで済むわけがないもの」


 ロゼリア自身、自分の回復力に驚いていた。

 逆行前のロゼリアが初めて魔法を使ったのは十一歳の時。魔法が使えるようになる十歳から魔法理論を習い始め、ようやく使いこなせるようになった。

 だが、初めて使った時は、ずいぶんと回復までに時間を要していた。それを思うと、この程度の時間で平然としていられるようになっているのは、それだけ体が魔法に慣れているということなのだろう。つまり、今の体は逆行前の状態を引き継いでいると考えられるのだ。


(なんにしても、これは助かったわ。早く元気になったところを見せて、殿下たちを安心させないとね)


 ロゼリアはぐっと拳を握り込んでいた。

 一方のチェリシアは、ロゼリアの無事を確認して、もう次のことを考え始めていた。


「塩を手に入れられるようになったら、他の調味料も手に入れられるようにしなきゃ……」


 なにやらぶつぶつと独り言を言い始めていた。

 前世持ちのチェリシアは、その時に存在していた様々な調味料のことを思い出していたのだ。

 砂糖、みそ、しょうゆ、酢、ソース、油などなど、チェリシアはいろんなものを頭に巡らせていた。


「ねえ、ロゼリア」


「なにかしら」


「砂糖や酢とかあるかしらね。あるといろんなものに挑戦ができるんだけど」


「ちょっと待って。それがどういったものか具体的に説明して。こちらでも同じ名前とは限らないから」


 急に質問してきたチェリシアに対して、ロゼリアは落ち着いて話すように促している。


「砂糖というのは甘い味付けをする粉で、酢というのは……どういって説明したらいいのかしら。あっ、そうだ。変な味のするワインなんかそうだわね」


「ふむふむ……。変な味のするワインだったら、お父様の領地で手に入るわよ。果物の生産が盛んで、ワインを作っているからね。その中の一部に変な味とにおいのするものがあるって聞くわ」


「それよ!」


 ロゼリアから出てきた話に、チェリシアが大声で反応をしている。


「ちぇ、チェリシア?」


 ロゼリアは目をぱちぱちとしながら驚いている。


「果実酒を作っていると、稀に酢酸発酵っていう特殊な発酵が起きて、酸っぱくなってしまうんですよ。それは酢っていって、調味料になるんです。具体的には肉の臭みを取ったり、柔らかくしたりという効果がある調味料なんです」


「そ、そうなのね。でも、そんなの飲めたものじゃないから、全部捨てちゃってるわよ」


「な、なんてもったいない……」


 ロゼリアの証言に、チェリシアはへなへなと落ち込んでしまっていた。お宝の山を無残にも捨てていたことが相当ショックのようだった。


「つ、次に発生したら、王都まで運んでもらって下さいね。わ、私が使い方をお教えしますからぁ……」


「分かったわ。お父様に伝えておくから」


 泣きつくように迫ってくるチェリシアの姿に、ロゼリアは顔を引きつらせながら頷いていた。

 それと同時に、ロゼリアは甘い粉についても何か思い出したようだ。


「甘い粉……。確か、造っている場所があるわね。王都やマゼンダ領でも売り出されていたと思うんだけど。いかんせん逆行前の話で、今もあるのかは分からないわ」


「先日見て回った時にはなかったわ。それより、どこで造られているの?」


 ロゼリアの話を受けて、チェリシアはずいぶんと食いついているようだ。砂糖さえあれば甘いお菓子が作れるのだから。


「確か、シアンの出身地であるアクアマリン子爵領だったはず」


「アクアマリン子爵領!」


 ロゼリアがつぶやいた言葉に、チェリシアは目をキラキラと輝かせた。

 なぜなら、チェリシアもその場所はよく知っている。

 それはゲーム中の強制イベントである合宿イベントで訪れる場所だったからだ。重要なイベント多数起きる上に、このアクアマリン子爵領でのスチルは美麗のひと言に尽きる。

 コーラル子爵領とは真逆の落ち着いて美しく、なによりも広大な農耕地と湖を持つ。それがアクアマリン子爵領なのだ。

 そんな場所に、ゲームよりも早く訪れることができるのではと、チェリシアは心躍らせている。


「何か期待をしているようだけど、チェリシア、アクアマリン子爵領へはそう簡単に行けないわよ。王都との間には川と山があって地形が複雑で、船か橋がないと渡れないんだから」


「ガーン。そ、そうなの……」


 アイヴォリー王国内の領地の位置関係を知らなかったチェリシアは、がっくりと肩を落としていた。

 直線距離としては近いのだが、この複雑な地形のせいで時間はかかるし、輸送費もかさむ。物事はそう甘くないのだった。


「シアンもよく、うちに来てくれたものだわよ。直線距離なら七日もかからないのに、馬車だと倍くらいかかるからね」


「そ、そんなぁ……」


 ため息を吐くロゼリアの前で、チェリシアは涙目になって座り込んでしまったのだった。

 世の中、順調に進まないものである。

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