第127話 運命の日
ロゼリアとチェリシアがドール商会を訪れてから二度目の休日のことだった。王家主催の夜会に参加するためにお城へと出向いている。
誰の誕生日があるわけではないが、ロゼリアたちはこの日に何があるのかを察していた。なぜなら、ペシエラが一足先にお城に向かったからだ。
昼を過ぎると、お城には多くの貴族が詰めかけている。王国の広さを思うと、その数はかなり異様に感じる状況である。
「はぁ、やっと会場に入れたわ」
「私も参加してよろしいのでしょうか。今は平民ですのに」
伯爵家であるチェリシアはかなり待たされて入場したらしく、ロゼリアと合流するとホッとしているようだった。なぜか、アイリスも参加している。
アイリスもチェリシア同様に着飾っており、現在の自分の立場のせいか、かなり戸惑っている。
「招待された以上は問題ないわよ、アイリス。それにしても、改めて見てみると、かなりの人数が参加しているわね」
ロゼリアはアイリスに声をかけながら、周りを見ている。会場にはかなりの貴族が集まっており、今回の夜会がかなり興味を引いていることがよく分かる。さすが、国王と女王が連名で招待状を出したことはある。
「それにしても、ペシエラは一人で大丈夫かしら」
「本来なら、私もついていくはずでしたのに、王家から断られてしまいましたからね。心配でございます」
チェリシアとアイリスが心配そうにしている。
「今までもいろいろと乗り切ってきたあの子よ、問題ないわ。姉であるあなたが不安がってどうするのよ」
ロゼリアがたしなめると、チェリシアはまだ不安そうにこくりと頷いている。
こんな感じで大丈夫なのだろうかと思いつつ、ロゼリアは二人と一緒にパーティーが始まるのを待っていた。
そして、ようやく夜会が始まる。
会場には多くの貴族が集まり、それぞれがおのおの談笑に興じている。
参加者たちに送られた招待状には『王宮にて重大な発表がある』とだけ書かれていた。だが、国王クリアテスと女王ブランシェードの連名となると断るに断れないものだった。
その一方で、どのような発表があるのかが気になる貴族たちは、その内容を巡って賭け事をするほどとなっていた。
このような盛り上がりを見せる貴族たちが集まっていても、移動できる余裕がある。しかも、会場の片方の壁際には、テーブル一杯に並べられた料理が置かれているスペースまで存在している。さすがはお城、とんでもない広さである。
「うーん、さすがはお城の料理、おいしいわぁ」
「まったく、食い意地が張っているわね、チェリシア。さっきまでの不安そうな表情はどこにいったのよ」
パーティー会場の一角では、チェリシアがもりもりと料理を食べている。その隣ではロゼリアが呆れた様子でチェリシアを眺めている。その隣では、二人とアイリスの様子に笑みを浮かべながら話をしているマゼンダ侯爵夫妻とコーラル伯爵負債の姿もある。
一部の貴族からは、このマゼンダ侯爵家とコーラル伯爵家の配置に注目が集まっている。なぜなら、王族が姿を現す場所のすぐ近くに陣取っているからだ。このことに気が付いた貴族は、なかなか勘が鋭いのではないだろうか。
そうしていると、会場に遅れてペシエラが姿を見せる。
「あら、ペシエラ。なぜここに?」
ペシエラが王族とは別に姿を見せたことに、ロゼリアが首を傾げている。
「まあ、ペシエラ。素敵よ」
「ありがとうございますわ、お姉様」
同時チェリシアが褒めてきたので、ペシエラはチェリシアの言葉だけに反応を示している。
それにしても、このペシエラの姿はなんとも不思議なものだった。まだ幼いということがあって、普段は肌の露出を抑えたドレスを着ていたのだが、今日に限っては肩が大きく開いたドレスを着ている。髪型もよくしているツインテールだが、謎の技術でゆるふわになっていた。なんとも触りたくなる髪型である。
だが、ペシエラが姿を見せると同時に、会場に流れる音楽が変わった。これは、王族が姿を見せる時に流れる曲であるがため、貴族たちは一斉に黙り、会場に緊張が走っている。
前方にある壇上には、国王、女王、シルヴァノ、ペイルが姿を見せる。
いよいよ本日パーティーの開催目的が発表されるとなると、貴族たちの視線は、国王たちに一気に注がれる。
「皆の者、よくぞ集まってくれた」
国王は挨拶をすると同時に、会場中を一度見渡している。それが終わると、会場の手前の方にいるペシエラに視線を落として、再び前を見ている。
「それでは、本日集まってもらった理由を話そう。では、女王、頼むぞ」
そうかと思えば、国王は発言を女王に交代する。発言を引き継いだ女王が、一歩前に出る。
「うむ。本日集まってもらった理由だが、妾たちの息子、シルヴァノの婚約者について大々的に発表するためだ。シルヴァノ、黙っていてすまなかったな」
女王がこう言いながらシルヴァノに視線を向けると、会場中からどよめきが起きている。
王子の婚約者を決めたというのに、王子に一切話していなかったのだ。しかも、このような場で発表するのだから、驚いて当然というわけなのだ。
「万全を期してから発表したかったのでな。では、妾の口から、その人物の名を語らせてもらうぞ」
この瞬間、会場に流れていた音楽は完全に止まる。
女王は一度呼吸を整えてから、ゆっくりと口を開いた。
「正式なシルヴァノの婚約者、それはペシエラ・コーラル伯爵令嬢だ」




