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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第四章 学園二年目

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第123話 ロゼリアの豆探し

 チェリシアがやたらとやる気を出している中、ロゼリアは学園の講義が終わった後でマゼンダ商会へと出向く。

 マゼンダ商会に姿を見せると、そこにはシアンとリモスの二人の姿があった。


「これはお嬢様、本日の授業、お疲れ様です」


 ロゼリアは二人にそろって挨拶をされる。


「ちょうどよかったわ、二人とも。ちょっと質問はいいかしら」


 シアンとリモスは、唐突な話にちょっと困惑しているようである。しかし、商会においては上司にあたるために、二人は素直に応じることにした。


「今日、チェリシアが妙なことを口走っていたのよね。そこで出てきた豆っていう植物について、二人は何かご存じかしら」


 二人に尋ねるも、反応を見るにあんまりよろしくないようである。

 商会の中枢ともいえるこの二人が知らないとなると、マゼンダ商会で情報を得るのは難しいだろう。予想はしていたので、ロゼリアはあんまり気にしている様子はない。


「お嬢様、その豆とやらが一体どうされたのでしょうか」


 シアンとリモスが顔を見合わせながらロゼリアに質問をしている。


「いえ、チェリシアが異様にこだわっていますのでね。そこで、商会の状況に詳しい二人に聞いてみたのですけれど、その様子ではアイヴォリーにはないということで間違いなさそうね」


「申し訳ございません、ロゼリア様。お役に立てないのは悔しい限りでございます」


 特段驚く様子のないロゼリアだったが、リモスはとても申し訳なく思っているようだ。これでもマゼンダ侯爵家に仕える執事なので、ロゼリアにこのような態度を取るのは自然なことである。


「時にお嬢様、その豆とやらはどのようなものでしょうか」


「このくらいの大きさの粒を持つ植物らしいですわよ。チェリシアは豆の名前として、大豆、小豆、インゲン、そら豆、落花生などを挙げていたわね」


 シアンに聞かれたロゼリアは、自分の右手の親指と人差し指で大体の大きさを示しながら説明をしている。同時にチェリシアが話の中で出していた豆の名前を出していく。だが、やはり二人とも知らない名前ばかりのようである。


「ふむ、かなり小さい粒のようですな」


 リモスがあごを触りながら首を捻っている。

 こうなってくると、ロゼリアはひとつの選択肢を取らざるを得ないようだった。


「仕方ありません。こうなればモスグリネ王国に可能性を賭けてみるしかありませんね」


 そういうと、ロゼリアは何かを取り出している。

 広口の瓶の中には、何か干からびたようなものが入っている。


「お嬢様、それは?」


 シアンが気になって声をかけている。


「これは、チェリシアがやっていた魚の干物にヒントを得て、私がマゼンダ領の産物で試したドライフルーツというものよ。私は火魔法が使えないけれど、風魔法と水魔法だけでも作ることができたわ」


「ほう、これは……。細かく切った果物を干からびさせたのですね。見た目は悪そうですが」


 リモスが覗き込んで、率直な感想をこぼしている。さすがに歯に衣着せぬ執事である。


「それにしても、いつこのようなものをお作りに?」


「年末、マゼンダ侯爵領に行った時に、余った果物をもらってきたのよ。それを使って作ってみたの。多少失敗したけれど、この通り、完成までたどり着けるようになったわ」


 二人の質問に、ロゼリアははにかみながら答えている。


「それはそれとして、ちょっと食べてみてちょうだい」


「はぁ、お嬢様がお作りになられましたので、それではいただきます」


 シアンとリモスが不安そうにひとつずつ手に取って口へと運ぶ。ところが、口に入れた瞬間、不思議な感覚が口の中に広がった。


「こ、これは……」


「見てくれは悪いですが、かなり甘いですね。素晴らしいですよ、お嬢様」


 二人揃って驚いた表情を浮かべている。ただの干からびた果物だと思っていただけに、予想外の味わいに衝撃を受けたのである。


「ええ、これを菓子折りにして、ドール商会に行きましょう。豆の情報を探りに行くのですから、このくらいは用意しておきませんとね」


「これは、マゼンダ商会で取り扱うべきでしょうに、もったいない……」


「食料品はドール商会の分野ですから、仕方ないわよ」


 シアンが残念そうな表情を浮かべるものの、ロゼリアは気にしないというような表情をしている。

 そんなわけで、ロゼリアたちはドール商会に情報を探りに行くために、まずは先触れを送る。


「それじゃ、リモス。商会のことを頼みますよ」


「はい、ロゼリア様。お任せ下さいませ」


 準備を終えたロゼリアはリモスに留守を頼むと、シアンとともにドール商会へと向けて出発する。

 いつまでもチェリシアとペシエラのコーラル姉妹に任せておくわけにはいかない。自分もマゼンダ商会の立ち上げの一人として、役に立ってみせる。ロゼリアはとても気合いを入れている。

 マゼンダ商会を出てしばらく歩くと、目的の場所に到着する。


(ここに目的の情報があるといいのですけれどね……)


 ロゼリアが見上げた先にあるのは、現在は王都の二大商会の片割れであるドール商会。

 今日は久しぶりに大きな話し合いになりそうだ。

 ロゼリアはそう決意を固めて、ドール商会の入口をくぐったのだった。

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