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逆行令嬢と転生ヒロイン~緋色の令嬢  作者: 未羊
第三章 学園一年目

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第100話 決勝トーナメント開始

 ロゼリアたちのクラスの喫茶店は、相変わらずの大盛況だった。チェリシアがシェリアまで瞬間移動魔法で跳んで魚を仕入れてきたこともあってか、どうにかこうにか最終日まで魚を切らしそうになかった。

 噂の特待生を見ようとして、とんでもない客数が押し寄せてくることとなり、なぜか売り上げは右肩上がり。額が額なので、売上金はチェリシアの収納魔法行きとなっていた。


 そして、迎えた学園祭最終日。

 武術大会は決勝トーナメントが行われる。

 会場には国王に女王、騎士団の団長と副団長とそろい踏みだ。ちなみにだが、国王と騎士団副団長の二人は、予選からずっと観戦している。有望な騎士の発掘に余念がないのだ。


「今年は武術大会は、いつもよりも盛り上がっているな。やはり、我が息子や副団長の息子、それにペシエラ・コーラルの存在は大きいようだな」


「陛下、隣国のペイル殿下を忘れられては困ります」


「ああ、そうだったな。いかんいかん、自国のことばかりしか頭になかったぞ。ふはははっ」


 国王は笑っているが、少々問題発言である。

 とはいえ、目立つ存在が多いというのは事実だ。特にペシエラは十歳にしてサンフレア学園に入学した特待生。それでいて剣と魔法を騎士顔負けのレベルで操る少女だ。国としては注視せざるを得ないのである。


 武術大会の決勝トーナメントに残った一年次生は全部で四人。ペシエラ、シルヴァノ、ペイル、オフライトの四人だ。忖度やら手加減とかなしに、全員が実力で勝ち上がった。

 こういった面々がいるために、今年の武術大会の決勝トーナメントには相当の観客が押し寄せている。

 これほど人が増えてくれば、賊たちも紛れ込みやすい。ロゼリアとチェリシアも出し物である喫茶店をすべてクラスメイトたちに任せて、会場に足を運んでいる。

 外の方はアイリスとニーズヘッグ、それとシアンたちに任せている。

 逆行前は何も起きた覚えはないのだが、ロゼリアたちはとにかく落ち着かなかった。


 そんな緊張の中、ついに決勝トーナメントが始まった。

 その初戦、なんと注目株の一年次生同士の戦いとなった。ペシエラとオフライトである。

 抽選の結果とはいえど、いきなりの好カードとなったことで、会場中が大いに沸きたっている。


「おっ、あの幼女が出てきたぞ」


「対戦相手は騎士団の副団長の息子か。さすがに分が悪いな」


「だが、あの子はものすごく強い。ぜひとも勝ってもらいたいものだな」


 ロゼリアたちの近くでは、そんな声が聞こえてくる。

 それにしても幼女呼びとは思わなかったようで、ロゼリアとチェリシアは思わずくすっと笑ってしまっていた。

 注目が集まる中、ペシエラとオフライトが向かい合っている。


「年下だからって、手加減はしないぞ」


「それで結構ですわ。互いに振るう剣は模擬剣とはいえ、戦場での戦いと見ていただいて、本気で来てもらった方が助かりますわよ」


「まるで戦場を見てきたかのような言い方だな」


 オフライトの反応に、思わず笑ってしまうペシエラである。

 だが、すぐに表情を引き締めて、剣を構えて立つ。


「さあ、始めましょうか」


「望むところだ」


 二人が剣を構えたところで、この言葉が響き渡る。


「始めっ!」


 二人は声と同時に駆け出し、互いの剣をぶつけ合う。

 模擬剣とはいえど剣の種類はあり、ペシエラはサーベル、オフライトはロングソードを使っている。

 二人の体格差はかなりあり、ペシエラの初戦で戦った五年次生とほぼ同じ体格差だ。だが、オフライトは騎士団の副団長の息子とあって、かなり筋力がある。なので、こんな風に剣をぶつけ合えば、普通はペシエラの腕は痺れてしまうものだ。

 ところが、ペシエラはしっかりと剣を握りしめている。小さい体のどこにそんな力があるのだろうか。


「やはり、一撃では沈められないか。これが十歳とは末恐ろしいな」


「なめてもらっては困りますわね。わたくしにも護りたいものがございますもの。だからこそ、努力は惜しみませんし、この程度で負けるわけにはまいりませんのよ」


「ははっ、まるで騎士みたいなことを言ってくれるな。……面白い!」


 剣をぶつけ合ったまま少し会話をした二人は、一度距離を取って再び剣をぶつけ合う。


「……っ!」


 オフライトの攻撃はさすがに重かったようで、二撃目でペシエラの顔が一瞬歪んだ。


「体格差を利用して、力任せで来られましたわね。これではさすがに不利ですわ。少々、魔法を使わせていただきましょうかしら」


「ほう、使ってなかったのか」


「身体強化すら使っていませんわよ」


「言ってくれるな!」


 ペシエラがとんでもないことを言うものだから、オフライトは隙を与えまいと攻撃を仕掛ける。

 剣がぶつかり合った瞬間、今までで一番大きな音が響き渡る。

 決まったかのような音ではあったが、ペシエラはしっかりとオフライトの一撃を受け止めている。


「ご存じかしら。魔法を使うのに、一秒も要らないと」


 ペシエラが笑えば、オフライトも笑みを浮かべる。

 その後も、二人はすさまじい勢いで剣を交える。その剣戟に、観客たちは息をのんでいる。

 ところが、悲しいかな。二人の間には決定的な違いがあった。そのことにより、戦いは思いの外、早く決着することとなった。


「はあはあ……。さすがに魔法で力を補っても、体力は、そうは参り、ませんでしたわね……」


 そう、ペシエラの体力が限界を迎えたのだ。剣を持つ腕も、もはや力なくぶら下がっているだけ。肩で呼吸をするほどに疲れ切っているのである。


「まったく、楽に勝たせてくれないとは、とんでもない十歳のお嬢様だよ」


「褒めても、何も出ませんわよ?」


「ははっ。これだけの戦いをさせてもらえただけで十分だ」


「それはよかったですわ。……わたくしの負けですわ」


 完全に体力を使い果たしたペシエラは、降参を宣言した。

 オフライトの勝ち名乗りが告げられると、会場の中は割れんばかりの歓声に包まれたのである。

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