40 鬼の手
残酷な表現があります。
苦手な方はご注意を。
あまりに強烈な圧迫感を一瞬熱いと感じた私達だったが、その強烈さ故に凍りついたように一歩も動く事が出来なかった。
そしてその存在だけは感じたものの全く姿を捉える事が出来ないまま、次の瞬間には9羽の大ウサギを槍に串刺しにした巨大な鬼が私達の目の前で仁王立ちしていたのだった。
おそらくは私達が総掛かりでも1羽を倒す事すら叶わないだろう最深部のボーパルウサギ……
私達を一網打尽にするべく周りを囲んでいた筈の強者9羽を瞬殺し全て串刺しにしたその鬼、あまりに圧倒的!!
最深部の最強の存在ではなかろうかと思われるその姿に私達は感電したかのように硬直するのだった。
……
鬼はヨダレを滴ながらウサギを見ている。
恐ろしく見えた顔が不思議な形に歪んだ。
所謂…ていうか文字通り……破顔?
あ~、コレ完全に私達のコト眼中に無いわ。
おそらくだけど、好物のウサギが沢山手に入って、美味しく食べてる時の事を想像しながら幸せな時間を過ごしているんだね、きっと。
しかし、この顔……
なんか見覚えがあると思ったんだよね。
……
思い出した!
アレだ!左手に鬼を飼ってる地獄先生の左手のアレだ!!
ふと気が弛んだその時、鬼と目が合った!?
訝しげに私を見つめ、次いでスラマサ、ホネオ、ウォル、レインと視線を移す。
今、少しガッカリした?
まぁそうだよね。ゴブリンにスライムにガイコツに狼……
食欲はソソらないよね。
そう思った私だったが、最後に鬼はもう一度私を見た。
鳥肌が立つ!?
ヤバっ!この鬼が今何を考えたのか、何となく解ってしまった。
食 欲 を 満 た し た 後 は 性 欲
ニタリ!
そう表現するしかないような表情を浮かべ、私に歩み寄る鬼。
蛇に睨まれた蛙みたいに動けない……
「リリィ!!逃げろ!!」
スラマサの声が虚しく響く。
鬼の気に呑まれた私は……動けなかった。
それでもスラマサは何とか私を逃がそうと圧倒的な存在に立ち向かう。
「俺達が何とか時間を稼ぐから!行くぞ!!」
そう言ってホネオやウォルにも気合いを入れさせ、分体を三方向に移動させる。
だけど……
またしても一瞬だった。何をしたのかさえ判らない。
スラマサ3つの分体は無惨に形を失い地面へと溶けていく。
ホネオは……頭蓋骨まで粉砕され、崩れ落ちている。
ただの屍のようだ…
ウォルは手足があり得ない方向に曲がり、木の枝に串刺しになっている。
レインは……何処かに飛ばされたのか姿が見えない。
うまく生き延びてくれていたらいいな……
私の仲間達を瞬殺した鬼はまたゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
必死で私は考える。
確か地獄先生の左手の鬼は圧倒的な強さを誇ったが、おバカだったはず。
微かな希望が湧く。
私は使わないままいつか必要になるかもと隠し持っていたブラジャーを震える手で何とか取り出し、これ見よがしに鬼の前でぶら下げて振ってみせる。
鬼の視線がブラジャーの動きに合わせて揺れる。
よし、今だ!
私は「取ってこい」とばかりにブラジャーを投げた!!
……
この鬼はおバカじゃなかった。
ブラジャーに全く見向きもせずに私に近づくと、そのまま私を押し倒す。
食欲が先じゃなかったの?
ここまできてヤられてたまるか!!!
だけど、鬼の太ももによって私の下半身はガッチリ固定されてしまっている。
どんなに身を捩って抵抗しようとしてもピクリとも動かない。
そして鬼の下半身は準備万端だ。
嫌だ!嫌だ!!嫌だ!!!
私はゴブリナになるんだから!
私の思いと裏腹に、その時は刻一刻と迫っていた。
私がモフモフを求めて最深部の縁まで来たから……
師匠や塾長の忠告を聞かなかったから……
スラマサもホネオもウォルも殺された。
私は最深部の主のように圧倒的強さを持つ鬼の苗床にされて鬼の子を産み続けるしかないんだ……
みんな、ごめんなさい。私は罰を受けるみたい。
そして鬼はゆっくりと私に向かって腰を落とした。
母の実家の「はす向かい」の家が土砂崩れに巻き込まれてしまいました。
住人は何とか無事だったようですが、本当に大変な事になっていますね。
皆様がご無事でありますように。




