41 Dances with Wolves
台風12号!もう戻って来るな‼
皆様の所は大丈夫でしたか?
鬼によって脱出不可能となった私は、自ら意識を閉ざし深い闇へと沈めて行った。
鬼の子を宿すだけの苗床になるくらいなら全ての意識を刈り取って私は精神的に死ぬ。
そして恐らく二度と目覚める事は無いだろう。
そう思っていたのに……
『…ィ……リィ………』
何かが私に呼び掛ける。
『……リリィ?……リリィ!!』
この声は……スラマサ?
でもスラマサは殺されて……
あの後どのくらいの時間が経ったのかな……
ああ、私も……きっと……鬼に犯された後……肉体的にも死んだんだな……
じゃあ、ここは……?天国?
何となく呟いた。
『リリィ!!ここは天国じゃないんだ。かといって地獄でもない。いい奴ばかりじゃないけど、悪いや…』
「ちょっと待って!!それJASRAC的に大丈夫!?」
そう叫んだ所で目が覚めた!
あれ?何で普通に目が覚めてるの?鬼は?
もしか今までのは夢?
……
ん?
……
「リリィ、何となく何を考えてんのか解るけど、最深部での出来事は夢じゃねえよ」
「え?でもそれなら私達は確か鬼に……。スラマサ達は瞬殺されて私は犯られたんじゃ……
あ、解った!ここは何かの精神世界ね!?現実世界の時間がストップしてる中で思考だけが時間を無視して進むアレなのね!?」
「いや、それも違うから!」
「え~?じゃあ一体何がどうなってんのよ?」
「まず俺が殺されたって件だけど、俺が潰されたのはあの時に戦闘体形を取っていた3体だけだ。他にもリリィやウォルの下着、何なら師匠の下着にも分体は残してる。それ全部がいつでも俺の本体に成れるんだ」
「あ、そっか!ていうか、何そのチート!?……ん?ちょっと待て!今、私の下着って言ったか?」
「あっ、ヤベッ!
いや、取り敢えず今はその話は置いといて!!先にどうなったか説明させて!!」
「ぐっ……まあ良いわ。後でちゃんと説明してよね。それで?」
「ふぅ~、殺されるかと思ったよ」
チッ!殺しても死なないクセに!
「そんな訳で俺は生きてる。
あの後、リリィは鬼に犯られそうになって、そこで俺は気配を殺してリリィの下着から分離したんだ。そのまま形状をオナホ○ル風に変えて、リリィの代わりに鬼のアレを射し込まれたって訳」
「何よ、オ○ホールって?」
「あ~、男性用の大人の玩具」
「そっか。じゃあ私は……」
「うん、リリィの処女は護ったよ」
「ありがとスラマサ。それで今はどんな状況なの?」
「流石の鬼もさ、どうやら犯ってる最中のアソコは無防備でね。玉ごと俺の酸で溶かしてやった!」
なんともいい顔でそうスラマサは言い放った。
だいたい顔って顔も無いのにいい顔が出来るってどういう事?
「で、鬼の奴、アソコを溶かされてからマナがダダ漏れでさ、弱体化して今そっちで気絶中な訳。
あ、それからホネオやウォルも生きてるからな」
「えっ?みんな生きてるの?」
そう驚く私の背後に気配を感じて振り向くと、そこには……
「俺、復かぁ~つ!!」
ホネオがいた!
「ホネオ、あんたよく生きてたわね!」
「生きてるっちゅうか既に死んでるっちゅうか……
まあ死んだと思わせといて実は…っていうんは塾生のテンプレやん。
俺ら塾生やし」
「それは男○の話でしょ!?
え?フースーヤ塾もそうなの?」
「当たり前やん♪
ちゅうか、リリィ覚えてないか?俺の場合、無限再生っちゅうスキル持ってるし、粉々にされても細胞1個残ってたら復活しよんで」
「あんたもチート持ちだったか!
頭蓋骨まで砕かれてたから流石に死んだと思ったわよ」
「頭蓋骨の裏に模様や数字が書かれてる訳でもないし、他の骨と扱いは一緒やで?
でも心配してくれたんやなぁ。おおきに」
「べっ…別にあんただけを心配した訳じゃないわ。それでウォルは?」
「ウォルはまだ回復中だよ。まあウォルについてはレイン達のお陰だな」
「レインも無事なのね。ていうか、お陰って?」
「先に吹っ飛ばされたレインを狼達が回復の舞いで癒して、今ウォルをレインも含めた狼達みんなで回復の舞いで全快中なんだ」
「か…回復の舞い!?なにそれ面白そう!」
「まあ実際に見てもらった方が早いかな」
そう言って最深部から離れようとするスラマサをホネオが止めた。
「ちょっと待ってや。先にこいつにとどめを刺した方がええんちゃうか?」
ホネオが指を指した先にはあの鬼が泡を吹いて丸まっていた。
「それもそうだな。リリィ、殺れるか?」
私のタイガーショットじゃとどめを刺せそうにないな……
「ホネオ、あんたの剣を貸して」
「あいよ!」
私はホネオから剣を受け取り、鬼の横に立つ。
「よくも散々やってくれたわね。本当にもう終わりかと思ったんだから!私を絶望させかけた罪、死んで償いなさい!【撒き散らした苦痛をあ……】」
「「リリィ、それ駄目だ (あかん)から!!!」」
魔王と吸血姫による神殺しの台詞を途中で遮られながら、私は思い切り鬼の首に剣を降り下ろした。
マナが漏れて身体強化が出来なくなっていたのだろうか、それとも単に気絶しているせいなんだろうか、不思議な程に剣は容易く鬼の首を刎ねる。
途端に大きな力が流れ込んできたと同時に私は理解する。
何だろう、もしゲームみたいに状況の解説が出てきたならそれは……
『条件を満たしました。進化(変態)できます』
今までの変態は場所や時を選べずに即時履行されていたけど、今回は何か違う。
いつでも可能だけど、その時を私自身が選べる感じだ。
《取り敢えず最深部からは一刻も早く離れた方がいい》そんな心理が働く。
「スラマサ、ホネオ。鬼の死体は師匠の四次元ポケットに入れて持って帰ろう。ウォルの所へ連れてって」
「「了解!」」
最深部から少し離れた所に、そこにだけ生い茂る木々が無い広場のような場所があった。
その中心にウォルが寝そべっていて、回りを円になって狼達が廻っている。
前の狼のシッポを咥えて右足から3歩前に歩き、また右足から2歩下がる。咥えたシッポを一度離し、時計回りに一度回ってまた前の狼のシッポを咥え直す。
それを繰り返しながら延々と廻っている様は、さながら櫓の回りを踊る盆踊りのようだった。
これが噂の回復の舞い!
「あ、リリィさん、スラマサ先輩!ホネオ先輩!無事だったんですね!?」
どうやらウォルも無事に意識を取り戻している様子。
「完全に治るまで横になってていいから。後、鬼は退治したからね」
「うぉおー、凄ぇ!!凄っす!!パないっす!!本当にありがとうございます!!」
大興奮のウォルを横目に狼達の回復の舞いを再度眺める。
うん、動きといいテンポといい、舞いというよりはやっぱり盆踊りだよね。
何となく懐かしさを感じて、狼が廻っている外側を適当な身ぶり手振りでテンポに合わせて踊ってみた。
「盆踊りみたいやなぁ。なんや懐かしいわ。俺らも踊ろか」
そう言ってスラマサとホネオも踊りに参加した。
こうして狼達と共に踊る異世界の盆踊りは、ウォルが全快するまで続けられたのだった。
今回も読んで頂きましてありがとうございました。




