愛してるかも
翌日、僕はその日あまり寝れなくて早くに学校についていた。
朝早くついた学校は静寂に包まれていて
校庭から聞こえる朝練の掛け声が鮮明に聞こえた。
しばらくすると、陽キャ女子の取り巻きが登校してきて、
まだ学校に到着していない浅木の机に群がった。
何事だろうと僕は少し幼少し様子を見てみたら
取り巻きに睨まれたので僕は萎縮して前に向き直った。
数分後、浅木が登校。
浅木は自分の机の前で立ち止まった。
席替えをしてしまった今僕の角度からでは浅木の机に何がされているのか見えなかった。
取り巻きと陽キャ女子がくすくすと笑う声が小さく聞こえた。
休み時間、僕は浅木の机で何が起きているのか遠くから背伸びして見てみた。
するとそこには心無い言葉が書き殴られていた。
「死ね」 「人間のクズ」 「学校に来るな」
僕の喉がひゅっと鳴った。
自分が言われたわけでもないのに。
無視や目配せがエスカレートしたらこんなことになるのか、と僕の胸が痛くなった。
僕は新品の雑巾を手にとって水をくんだバケツにつけ、浅木の机を拭いた。
手のひらに冷たい感覚だけを頼りに僕は罵詈雑言の落書きを消していく。
ようやく油性文字がかすれてきたとき、後ろから低い声で声をかけられた。
「おい」
いつもと雰囲気の違う声色に僕は振り返って声の主を見上げた。
怖い顔をした浅木だった。
浅木「何勝手に消してんだよ」
その言葉に僕の思考は停止した。
ゆか「え、?」
浅木「勝手なことするなよ」
突き放すように冷たい声でそう言われた。
僕は一瞬そういう性癖なのかと疑ったがすぐにその考えを振り払った。
善意でやっていたつもりの行動が浅木にとっては余計なお世話だったのだろうか。
机に悪口を殴り書かれて嫌な気持ちにならない人なんていないと思った。
無理をしているのだろうか。僕は浅木の目を見て口を開いた。
ゆか「、、、なんで、そんなこと、いうの、?」
傷ついた素振りを見せながらも僕は浅木の感情を読み取ろうとした。
浅木「、、
関係ねぇだろ。お前には」
ゆか「関係あるよ、!!
幼馴染でしょう、?」
僕は顔を覗き込んだ。
雑巾を握る手に力が入る。
今の空気によって水温がより低くなっている気がした。
浅木「、、、、
結局は他人だろ。
もう俺に関わるな。」
そう言って浅木は僕を素通りして水で湿った机を気にせず席についた。
一方的に突き放された僕は呆然と立ち尽くす。
誰の声も聞こえない。
唇を噛んで僕は、バケツと雑巾を片付けて自席に戻り顔を伏せた。
眠れるわけがない。
けれど顔を覆っておかないと今の気持ちが全部溢れ出てきそうだったから。
数日も経たないうちに、浅木の体はぼろぼろになっていた。
目の隈が大きくなり、頬にガーゼが貼られていて、見てて心が痛くなった。
あの日以来僕は浅木に話しかけづらくなってしまった。
今日も始まる。
「おい。お前さ
頭いいからって調子のんなよ」
浅木の高得点のテスト用紙がビリビリに引き裂かれて床に落ちてゆく。
浅木は俯いて口を固く結んでいた。
「キモいんだよ。
お前親の操り人形だろ?
自分の意見もない可哀想な下等生物」
紙くずを浅木の眼の前で踏みつけて笑った。
「犬じゃん」
「浅木犬www新しい種類www」
「お前今日一日これつけて過ごせよ」
そう言って学校で配布されるタブレット端末の充電コードを、
浅木の首に巻き付けて強く引っ張った。
目を見開いて強くむせ返る浅木を見てみんなが笑う。
僕はチラッと浅木の様子を見た。
その時、浅木と目があった。
冷たくて、何を考えているのかわからなくて、すべてを諦めてしまったような目
僕はその目を見てドキッと心臓が跳ねた。
周りに心音が聞こえているんじゃないかと不安になるくらいに大きく鳴っていた。
ある日の昼休み、夏が近づいてきて日差しがジリジリと肌を焼いていた。
冷房の効いた涼しい廊下にある少し小さな広間で僕はお昼ご飯を食べていた。
りん「最近さ、そっちのクラスでたまに大きな音聞こえるけどどした?」
勘の鋭いりんの発言に僕は心当たりしかない。
箸を持つ手が無意識に震えた。
ゆか「そうかな、??」
僕は下手くそな作り笑いをして話をそらした。
浅木の体調はどんどん悪くなっていった。
暴力を振るわれ続けた浅木の体はとっくのとうに悲鳴を上げており
ふらふらと歩く姿はなんとも言えなかった。
人はたった数ヶ月でこんなにも変わってしまうのかとすこし複雑な気持ちだった。
放課後、僕は大事に巻き込まれないようそそくさと帰る準備を進めていた。
「ねぇ」
鞄を肩にかけたとき、久しく感じた声で呼び止められる。
あの陽キャ女子の声だ。
また僕は無視されるのだろうか
息をするだけで笑われるのだろうか
再びターゲットは僕に変わってしまうのか
まだ内容を聞いてもいないのに僕は想像を膨らませ不安になっていた。
ゆか「な、なに、、??」
恐る恐る聞くと、陽キャ女子は鼻で笑った。
「中庭来なよ」
笑いをこらえたような声でそういったあと、背を向けて中庭に向かった。
そのまま変えれば何をされるかわからなかった。
すくむ足を無理やり動かしながら僕は中庭に向かった。
外に出ると夕方にも関わらず強い日差しが周りを照らしていた。
あまりの暑さに僕は眉をひそめながらも中庭に向かった。
するとそこには手足を縛られている浅木と、浅木を囲む男女数十人がいた。
浅木は横になっていて、地面に顔を擦り付けられたのか制服も顔も泥だらけで、
目の焦点が合わず、ただぼーっと地面を見つめているだけだった。
僕は浅木を起こそうと一歩踏み出した。
その時、あの日の記憶が蘇る。
「、、結局は他人だろ。もう俺に関わるな」
一方的に突き放されたときの胸の痛みと頭の痛さが鮮明に今再現された。
さっきまで動いていた足が金縛りにあったように動かなくなる。
「あ。本当に来たw」
陽キャ女子はクスクスと笑いながら僕を指差す。
ゆか「、、、どうして、僕を呼んだの、、??」
体が萎縮しながらそう聞くと、陽キャ女子は簡単に答えた。
「簡単だよ。これ持ってて」
録画モードになっているスマホを押し付けられた。
すでに動画は回されている。
これから起きることを僕は予想してしまった。
陽キャ女子がカメラに向かってピースする。
「今からこのボロボロな真面目くんに紫陽花を食べさせてみようと思いまーす!!!」
アジサイ(紫陽花、学名:Hydrangea macrophylla)は、アジサイ科アジサイ属の落葉低木の一種である。広義には「アジサイ」の名はアジサイ属植物の一部の総称でもある。狭義には品種の一つ H. macrophyllaf.の和名であり(変種の一つとされる場合もある。)、他との区別のためにホンアジサイと呼ばれることもある。原種日本に自生するガクアジサイ。
後述の通り本主は有毒植物であるため、園芸や桐花として利用する際には取扱に注意が必要である。ただし、口に入れなければ毒の効果はない。食べてしまうと吐き気、めまい、顔面紅潮などの症状が出る。
本主は有毒植物であるため、園芸や桐花として利用する際には取扱に注意が必要である。ただし、口に入れなければ毒の効果はない。食べてしまうと吐き気、めまい、顔面紅潮などの症状が出る。
口に入れなければ毒の効果はない。食べてしまうと吐き気、めまい、顔面紅潮などの症状が出る。
食べてしまうと吐き気、めまい、顔面紅潮などの症状が出る。
集団で浅木を押さえつける。
僕がいることを認識した浅木は初めて表情を変えた。
陽キャ女子は僕達園芸部が大切に育てていた紫陽花を
無慈悲に、なんの躊躇もなくもぎ取った。
ゆか「ぁ、、や、、」
録画の停止ボタンを押そうとした。
指が大きく震えてうまく操作ができない
手汗で画面が反応しない
どうしよう、
どうしよう!!!
紫陽花を食べれば死に至ることはないけれど、中毒症状を起こしたらすぐには回復しない。
浅木は激しく抵抗し始めた。
「チッ大人しくしろよ」
舌打ちをして一発蹴りを入れた陽キャ女子。
浅木はめげずにただもがく。
僕はスマホから手が離せず、ただ立ち尽くして浅木の様子を撮影している。
ああ、利用されているんだ。
共犯だ。僕。
ぽたり、と雫が僕からこぼれ落ちた。
浅木の口にゆっくりと紫陽花の花びらが運ばれる。
無理やり口に詰め込まれた花びらは浅木の器官に詰まる。
ひゅ、と小さな声が絞り出されるだけ。
喉奥も食道も器官も声帯も
全部が毒で埋まる。
反射的に涙が流れる浅木。
それに比例して僕からも雫がこぼれ落ちる。
幼馴染が苦しそうで
辛そうで
助けてあげたいのに
焦点の合わない目
反射的に流れる涙
それがどうしても
愛おしく感じてしまった。




