嘘
その日以来僕の中学校生活は変わった。
息をすれば笑われ、話しかけては無視され、
プリントを渡せば僕が触れた場所を壁になすりつけてからしまったり。
誤解だと解く気はもうなかった。
解いたとしても、謝られたとしても僕は許す気力もなかったと思うから。
僕はただ前を向いて歩き続けた。
下を向いたら、視界が涙で覆われてこぼれてしまうから。
地獄のような日々を僕は抵抗もせずに耐えて過ごした。
昼休み、僕は部活の当番で校庭の花に水をやっていた。
水をやればやるほど土が湿り、黒くなる。
僕はただそれをぼうっと見つめていた。
「おい」
ドスの利いた低い声で呼ばれた僕はゆっくりと振り向き、見上げた。
例の陽キャ女子だった。
あれ以来、笑われたり無視されたりしたが
あっちから話しかけてくることは今日までなかった。
またなにかされるかもしれないという恐怖が僕の足をすくませた。
「お前さ
自分のしたことわかってんの?」
ゆか「あ、え、」
ごめんなさい。
そういえば済む話なのに。
言葉は喉につっかえて動かなかった。
ジョウロを握る手だけが強まり、震える。
陽キャ女子は僕が渡したキーホルダーを掲げた。
「なに。いいたい事あるならはやく_____」
「あ。それ」
すぐ近くにいた浅木が話を被せるように呟く。
浅木「俺が捨てたやつ」
今日は日差しが強く暖かい気候だったが空気が凍った。
陽キャ女子はキーホルダーを掲げたままフリーズし
その取り巻きもくすくすと笑う声が止まった。
「、、は?」
浅木「なんか俺の席の近くに落ちてたから。いらないのかなーって思って捨てたやつ
まだ残ってたんだ。それ。」
冷たく発された言葉に震えはなかった。
瞬きの回数が多い。
嘘だ。
嘘をついている。
保育園児のころ、工作を展示している廊下に浅木が座り込んでいた。
「どうしたの?」
僕がそう聞くと、浅木は潤んだ目で僕を見つめた。
浅木の視線の先には、壊れている僕の作品があった。
「、、それ、」
僕の表情が曇ったのを浅木は即座に察して首を横に強く振った。
「ッ俺じゃない、!!」
明らかに瞬きの回数が多くなったのを感じ取った。
嘘だ。実は先程浅木が廊下を走ってつまづき
転んで僕の作品にダイブしたところを目撃してしまったから。
幼い頃の僕は相当怒ったのだろう。
瞬きが多い=嘘をついている
という特徴が記憶に残っているほどなのだから。
僕を庇ってくれたのだろうか。
でも、どうして、、、?
「はあ?あんた。勉強しか取り得ないくせに。
きもすぎ。仲良しごっこ?」
陽キャ女子は鼻で笑って、取り巻きの女子に目配せをした。
「いいよ。そんなに言うなら。
次はあんたね。」
そう言い残して、立ち去った。
これから何が起きるのか、僕達には想像ができてしまった。




