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入学から数カ月が経った。


梅雨入りかけの湿気が気持ち悪く、少数の人間がイライラしていた。


僕は周りの空気を読むことに必死でこの月は毎回生きた心地がしなかった。


仮入部期間にできるだけ気になる部活を体験し、


僕は無事希望の園芸部に入ることができた。


先輩も顧問も優しそうでホッとしていた。



その日はりんが部活だったらしく、浅木と一緒に帰っていた。


浅木「なあ今日の知識自慢したいから聞け。」


ゆか「はいはい」


適当にあしらい、聞き流してやるかという意識で受け入れた。


浅木はふと他人の庭に目を向け、呟く。


浅木「なあ。なんで紫陽花って成長過程で色が変わると思う?」


知っている知識だった。今回の理科の単元は植物で、僕の得意分野とされるもの。


紫陽花は個人的に好きな花ランキング上位に入るため事前に予習をしておいていた。


浅木「、、知ってるって顔してんな。まあいいや。」


浅木「土の酸性度によって違うんだよ。


土壌の酸性度がアルカリ性だったら赤色の紫陽花になるし、


酸性だったら青色になるんだよ。


中性は紫。


知らなかったろ?」


浅木の圧力に僕は負け、渋々ゆっくりと頷いた。


浅木は勝ち誇ったような笑みを浮かべていつもより歩幅を大きくした。単純な奴め。










夏休みが本格的に始まっていた。


うるさい蝉の音に苛つきながら窓を見ると、紫陽花のきれいな色が抜けてしおれている。


夏休みの予定は特になく、期末テストの余韻を抱えながら僕は課題に手を付けていた。


するとスマホの着信音が部屋中に響き渡る。


大きい音が苦手だから普段はマナーモードにしていたはずなのに。


誤タップでもしていたのだろうか。僕は少しビビりながらもスマホを取りスワイプした。


ゆか「、、もしもし、?」


相手を確認することを完全に忘れていた。


いたずら電話だったらどうしよう、と謎の不安が急に押し寄せてきた。


けれど、電話主は聞き覚えのある声だった。


りん「ゆか!夏休み予定内ならどこか行こーよ!」


スマホ越しに聞こえる声は、長期休みではしゃいでいるりんの声だった。


ゆか「うん。いいよ。行きたいところとかある?」


いたずら電話でも間違い電話でもなかったことに安心しながら僕は話を広げた。


りん「やっぱり外だと暑いしさー。室内!!室内にしよ!」


ゆか「じゃあ、水族館とかどう?」


りん「いいね!じゃあ ■日の■時に■■駅集合ね!!」


りんはさっきよりも高く大きな声で僕にそういった。


もともとの声量がデカくスマホのスピーカーが悲鳴を上げていたが


その光景も少し微笑ましく思えてきた。


ゆか「わかった。他に誰か誘う?」


りん「じゃあ浅木とみく誘っとくわ!じゃ!!」


そういって電話を一方的に切られた。


みく。


りんと同じ小学校から来たらしく、あずき町に住んでいるらしい。


運動が得意で周りを明るくさせるムードメーカーらしい。


僕とはあまり関わりがないが周りをよく見ている人だなと思っていた。











当日。■■駅にて。


休日だからか駅周りに人がごった返していた。


蝉の音が鼓膜を強く揺らした。


熱くて汗が流れ、額に髪の毛と一緒にじっとりと張り付いている。


僕は集合場所を間違えていないか記憶をたどりながら周りをキョロキョロと見ていた。


しばらくすると、ハンディファンを片手に大きくこちらに手を振っているりんを目撃した。


僕は周りが自分のことを見ていないのを確認してから恐る恐る手を振り返した。


りん「ゆかはやいねー!集合時間の30分くらい前に来てたでしょ」


なぜわかるのか。暑いはずなのに背筋に冷たいものがつたった気がした。


その後、数分立たないうちにみく、浅木と合流した。


時間通りの電車に足を踏み入れると、冷房が効いていて少し寒いくらいに涼しかった。


席に座り、電車に揺られながら窓を見ていた。













数時間が経ちようやく到着。りんは大きなあくびをして立ち上がった。


りん「おーし行くぞー!」


りんとみくを先頭に僕達は歩いた。


浅木「お前がいるの忘れてたわ。」


ゆか「生意気な態度かましてんな」


みく「てかみんな期末どーだったの?」


りん「聞くな」




















4人で水族館に行ったときの写真にふと目を向けた。


今ではもう冬が訪れ、この間の汗が嘘のように冷え切っていた。


進級に向けて学年主任が厳しいことを行ったりする機会が増えた。


浅木「おい」


浅木に話しかけられ、振り返る。


浅木「昼飯。」


ゆか「あーはいはい」


どうやら一緒に昼ご飯を食べたいようだ。




浅木の弁当はいつも家庭的で、母に作ってもらっているらしい。


今日はふりかけご飯に彩りが揃っている弁当で、僕は思わず覗き込んでしまった。


浅木「ほらよ」


浅木は自分の箸で僕の口に唐揚げを放り込んだ。


冷凍食品の無機質な味ではなく、親の温かさが詰まったからあげの味がした。


ゆか「んまい」


浅木「しってる」


冬の屋上は気が狂うほど寒かったけれど、一つの唐揚げのお陰で暖を取れそうな気がした。







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