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ショタヌキとのカフェは今日も思考する  作者: 伊藤テル


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【08 時間差攻撃】

・【08 時間差攻撃】


 定期的なイベントと、いつも通りのご飯で、順調なカフェ経営。

 常連の和装のお客さんや、近所のおばさんたちの笑い声、平日なのに女子高生のような子も来て、料理の写真を幾度と無く角度を変えて撮っている。早く食え。

 祖父の時代は言われたものを作っていたらしいけども、こちとら作りたいものしか作りたくない派なので、ある程度、自分の好きな煮込み料理をセットしておく。

 そりゃぁ炒飯くらいならいつでも作れるけども、生の獣肉はできるだけ使わないようにする。食中毒とか出たらメンドイので。

 はい、ツナ缶、はいはいツナ缶、文句あるなら常連にならなくて結構みたいな気持ちでやっているわけだけども、意外とそれも好評で。

 これは私の持論の一つなんだけども、変に安い豚肉なら無いほうがいい、というのがあって。

 要はクサい肉はあるだけ害悪ってことで、それなら野菜だけのほうが美味しいものが作れるってわけ。

 あと、ほんだしとかコンソメの素とかは結構普通に使う。だって美味しく調合されているものだから。

 アンチ味の素みたいな人っているけども、それは多分料理をしない人だと思う。本当の意味での料理、つーか調理ね。

 ただただ高い肉焼いて高い岩塩でメシ食ってるヤツの言うことなんて聞かなくていいし。ガラムマサラだって考え方によっては加工調味料だろみたいな気持ち。

 ガラムマサラも味の素も一緒。人間が加工しているという点では全部一緒。

 アンチ味の素のようなバカは河川敷で二十日大根を無断で作って、SNSで叩かれて泣いている子の涙を調味料にして勝手に食べてろよ。

 それにしてもビーガンって動物性のモノ食べないって話だけども、じゃあ涙やハナクソは食べないのかな、いやカフェで料理している時に食ハナクソのこと考えるな、私。

 今日もこれでも喰らえという気持ちで和風ポトフ(ほんだしメインのポトフ)を出したところで、どこからともなく、カランという何かが上から下に落ちる音がした。

 何だろうと私が思ったと同時に、ショタヌキが、

「わぁぁあぁぁああああああああああああああああああ!」

 とドッキリスターの声量で叫んで、むしろそっちに驚きそうになった。しゃっくりしていたら、止まったと思う。

 ショタヌキは確かに不意な音に驚きやすいきらいがある。

 最初の頃は鍋蓋のカチャでもビックリしていた。今はそこは慣れたらしい。

 慣れって大事ね、あと大事といったら前戯、とか思いながら、皿を洗っていると、またどこからともなく、カランという音が聞こえてきて、何かちょっと嫌な気持ちになった。

 そんなカランカランってオバケかよ、相変わらずショタヌキがデカい声出すし、常連さんの和装のお客さんは笑っているし。

 というか和装のお客さん毎日いるなぁ、そんなに旨いか、有難う。

 まあ常連さんって大切ね、あと大切といったら前戯、とか思っていると、またカランとなって、ショタヌキは撃たれたような、

「うわぁぁぁああああああああああああああああああああぁぁぁぁあああああああああああああああああ!」

 と出して、三発目で一番盛り上がるってなんだよ、と思った。

 今日は新曲しかしないと決めたバンドが、何か盛り上がりイマイチで、一番売れた曲を急遽三曲目にすることにしたライブかよ。

 というか本当にショタヌキ撃たれた? ごんぎつね? ごんたぬき? ごんきつねのオチって、どっちともとれるようなオチなんだよなぁ。

 多分新美南吉はどっちともとれるようにしたんだろうなぁ、でも明日のジョーで真っ白になったところって作者はどっちともとれるようにしたって言ってるけども、あれは死んでる一択だよな。

 カラン。

「だはぁぁぁあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!」

 今、もはやウケた? ウケてるのはショタヌキのリアクションで笑うお客さんたちだけども。

 ”だはぁ”は笑い声だろ。新作のカランはたまらんですわ、じゃぁないんだよ。

 新作のハーモニカの漫才はたまらんですわ、じゃぁないんだよ、つい私は、お笑い芸人名の扉が開いてしまう時がある。

 お笑い大好きだから、こう見えて。こう、エロいだけのカフェ店主に見えて。野田ゲーの配信めっちゃ見るし。今日はGAGかぁ……とか思っているし。

 いやいや、野田クリスタルじゃないから落ち込んでいる風なだけで、GAGもいいんだけどね。脳内で言い訳する必要は無いか。

 カラン。

「ちゃぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 お茶こぼした時のコミカル叫び声?

 するとショタヌキが、

「これ、誰かそういうオナラしていますか……だとしたらちょっと、踏ん張れるかもしれないです……」

 と言いながらこちらを向いてきたので、私は、

「踏ん張れるって驚かないことを?」

「そうです。オナラなら笑え、ですからっ」

 と何故かちょっと自慢げに言って、マジで何なんだと思った。

 じゃあ、と思って、

「何にしろオナラだと思えばいいんじゃない?」

「それは名案ですねっ!」

 とこっちを指差してきて、オマエのアイデアだよ、私がこんなクソアイデア出したことにすんなよ、とは思った。

 カラン。

「くぅぅううううううううううううううううぅぅぅぅううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!」

 川平慈英いた? 今、川平慈英の目覚まし時計を鳴らした人いた?

 結局また驚いているじゃん、これはもう面白リアクショングランプリだよ、決勝戦を一人で全部やってるよ、ファーストラウンドの六人目が終了したところだよ。

 あと四人はやるよ、驚き過ぎだわ、さすがに。

 ちょっと一旦家に帰すかなと思って、調子悪い日に仕事させるのは悪いって考えることも必須の世の中だよね、あと必須といったら前戯ね、と思いながら、ショタヌキが座っているレジの前まで歩いていくと、何かを踏んだと私の土踏まずが語ったと思ったら、そのままズルゥッと滑って、私はその場に尻もちをついてしまった。

 面白カフェでスマンね、と思いながらまた立ち上がろうとしたその時だった。

 あらヤだ、足首やっちゃってるわ、でもまあお風呂に一回入ればほぼ治るタイプのヤツだと思いながら、そのまま近くにあったL字のカウンターのイスに座った。

 ショタヌキが小首を傾げながら、

「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」

「ちょっと足を。でもお風呂に入れば一発で治るヤツだから」

 と答えておいたんだけども、ショタヌキは心配そうな面持ちをしていて。

 というかさぁ、それよりもこれって、そういうことかよ、と分かった。

 何だよアイツ、マジで粘着質で最低だな、ちゃんとワキノシタとか洗ってんのか、とか、怒りで脳がバグって関係無いことを思ってしまった。

 いやいや、いやいやいや、氷落ちてるし、これはショタヌキがお冷をお出しする時に落としているとかじゃない、ショタヌキはテーブルの高さの関係でお冷とかお出しできないし。

 なのに氷が床に落ちている。カフェの一部分に氷を出現させて、溶けたところで自動で落ちて音を鳴らしていたということだ。

 こんなことをするのは、そう、なかなか食わず、だらだらとずっと一人で居座っているオマエだ。

 私はL字のカウンターから振り返りながら、デカい声をあげた。

「怜那、だっけ? 氷落として、音鳴らして驚かしているなぁ!」

 とママタルトひわちゃん(檜原さん)ばりのデカい声をあげると、その私の視線の先にいるフードをかぶった女子高生らしき子がビクンと体を波打たたせた。

「ビクつきがあの時と一緒だなぁ! 熱い白い煙事件の時となぁ!」

 と叫んだ直後に和装のお客さんが立ち上がり、

「コイツは!」

 と言いながら、つかつかとその女子高生のところへ行き、フードを思い切りとると、案の定、怜那という子で。

 怜那は後ろ頭を掻きながら、

「いやぁ、ショタヌキがビックリするのが楽しくてぇ」

 とへらへら笑いながら言ったところで、ショタヌキが真剣な顔になって、イスからおりて、怜那のほうへ近付いていった。

 ショタヌキって言われるの嫌らしいし、音でビビるので遊ばれていたと思えば、そりゃ怒るよなぁ、と思いながら見ていると、ショタヌキが怜那のところまで行ったところで、声を荒らげた。

「怜那の氷のせいで! 卯愛さんが足を痛めたよ! なんてことするんだ!」

 えっ、と思った私と、そんな表情をする怜那。

 ショタヌキは続ける。

「僕の大切なお姉さんなのに、ケガをさせるなんて最低だ! 僕は許さない! 卯愛さんが大ケガしていたら絶対許さない! いいやもう許さない! うぅぅううううううううううう!」

 するとショタヌキが変化の術を使った時に出る光のようなモノを出し、何か、チャカ(拳銃)に変化して、和装のお客さんに撃ってもらうのかなと思っていると、なんと屈強な鬼のような姿に変化したのだ! 二メートルはある!

 でもショタヌキって変化したところで、動けなくなるようなと思っていると、なんと(今日二回目)そのまま動き出して、腕をぶんぶん振り出したのだ!

 和装のお客さんは衝撃といった面持ちになりながら、

戦闘変化せんとう・へんげ! 中級あやかしの技だ!」

 と分かりやすく説明してくれてサンキューと思った。

 それに対して怜那は仰け反りながら、

「何でショタヌキごときが戦闘変化できるの……」

 と言っていて、どうやらショタヌキにとっては会心の出来らしい。実力以上というか。

 いやでも、

「祥太くん! やめな! カフェは喧嘩厳禁! カフェでの攻撃はいない人の悪口くらいまでだ!」

 と私が叫ぶと、ショタヌキはこっちを振り向いた。

 その表情は鬼の形相過ぎて、ちょっとヒいてしまうと、ショタヌキはみるみる元の姿に戻り、その場で尻もちをついた。

 尻もちカフェかよ、と思いながら私は、

「逆に大丈夫? 私はお風呂入れば治るタイプのヤツだから大丈夫だよ」

 と言うと、和装のお客さんが、

「戦闘変化が使えるなんて……」

 とまだそこで驚いていて、そんなにすごいのかな、と思った。知らん価値観。

 すると怜那が急に立ち上がり、

「ゴメンなさい!」

 と言って頭をさげると、ショタヌキが尻もちをいた状態のまま、

「卯愛さんに謝ってください!」

 怜那はすぐにこっちへ駆け寄ってきて、

「本当にすみませんでした……何でもするので許してください……」

 と懇願するような瞳で言ってきて、女子高生って可愛い時代だなぁ、と思いながら、

「いいよ別に。たいしたケガじゃないし」

 と言いつつ、こんな可愛い子が店先に立っていたら、新しい常連さんも増えるのではとつい思ってしまい、

「たまにカフェの手伝いに来な」

 と安易に言ってしまったところで、自分が若干のコミュ障であることを思い出した。私はバカなので、自分の症状を忘れることがある。

 怜那は頭を改めてさげながら、

「はい! 手伝わせて頂きます! 吉四六もつれてきます!」

 と言って、吉四六も勝手に増やすなよ、コミュ障だぞ、と思ってしまった。

 でももう流れ上、断ることもできないので、私は大物のフリをしてその場は収まった。

 そこから私はキッチンにイスを持ってきて座って、座りながら煮込み料理を出し、怜那が料理を出したり、お冷を出したり、皿を持ってきたり、全部してくれて、全然ショタヌキよりも使えた。

 ちゃんとバイト代出すことにした。帰りにまずちゃんとあげた。こういうのはマジで大切だから、あと大切といったら前戯ね。

 すると怜那は、

「そんなバイト代なんて……」

 と一瞬拒否したけども、

「当然の権利だから」

 と言ってグイっと押し戻すと、怜那は本当に嬉しそうな顔をした。

 マジで、マジで当然の権利だから、前戯もそう。


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