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ショタヌキとのカフェは今日も思考する  作者: 伊藤テル


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【07 リアル間違い探しイベント】

・【07 リアル間違い探しイベント】


 今日は私が企画したリアル間違い探しイベントの日。

 常連さんから祖父の時代はいろんなイベントをやっていたから、やったほうがいいと言われてすることにしたのだ。

 まずカフェに集まって、一旦全員でハイキングコースに出て、その間に私とショタヌキでカフェ内の内装を変えて、間違い探しをみんなでするという楽しいイベントだと我ながら思う。

 こっちにはショタヌキがいるので、大胆な模様替えというか、変化を見せつけることもできるし(変化の術でね)。

 さらにカフェならではの仕掛けも考えているので、これはもう盛り上がること間違いなし、という気持ちでいると、何故か今日に限って画材を持ってカフェにやって来る人が多い。画材のオフ会あんの?

 いやでも今日はリアル間違い探しイベントだから、画材のオフ会はよそでやってほしいなぁ、それとも間違いを画材で作ろうと思っている? カフェの内装を画材で変えてやれ、じゃぁないんだよ、こっちが決めた間違いをお客さんたちが当てるだけだから。

 とか思っていると、画材を誰よりも持っている人が入ってきたと思ったら、私の顔を見るなりすぐに外に出て、何か、看板を確認してからまた中に入ってきて、その画材おばさんがこう言った。

「おっちゃんは、どこですか?」

 おっちゃんというのは祖父の呼ばれていたあだ名だ。

 私は画材おばさんに、

「祖父は腰をやってしまって、今は湯治に行っています」

 画材おばさんは伺うように、

「それは……今日中に帰ってくるぅ?」

「いいえ、もう一ヶ月くらいはいませんよ。勿論今日もです」

「じゃあ! 絵画教室のことは聞いていますか!」

「……聞いていませんけども。絵画教室って何ですか?」

 画材おばさん、否、多分絵画の先生は眉間に手を当てて悩むような動作をしている。

 もしかすると、祖父が伝えていなかった定期的なイベントというものがあった?

 いやでも、リアル間違い探しイベントを楽しみに待っている、お子たちも既にカフェの中でタダ麦茶飲んでいる。

 ここはもう断るしかないと思っていると、画材を持っていた人たちが、

「お久しぶりです! 先生!」

 とマンキンの笑顔で喋り出して、そんなことはもう言えない雰囲気に。

 絵画教室を外でやってもらうか、でもみんな画材が高そうで、外の風に煽られて大丈夫な感じじゃないんだよな。

 リアル間違い探しイベントを外でやる? いやせっかく私が考えたカフェならではの仕掛けはみんなに発露したい。

 するとレジのイスに座っていたショタヌキが近付いてきて、

「両方やるしかないですね」

 と言ってきて、そんな、ワンパクなっ、と思ったけども、確かにそうするしかないかもしれない。

 というわけで私は今の状態をカフェにいる全員に説明した。

 リアル間違い探しイベントをやる予定だったこと、絵画教室があるということは知らなかったということ、そしてその両方をやるということを。

 リアル間違い探しイベントのお子たちは「そんなんどっちでもいいやい! やっほーい!」みたいなテンションなんだけども、絵画教室の人たちは少し難色を示している。

 どうやらちょっと騒がしいのでは、という話だ。

 すると絵画の先生が、

「ではこうしましょう。リアル間違い探しイベント中はこちらも休憩時間にしましょう。そちらのお子さんたちはこっちには触れないようにするという約束のもとに」

 良かった、分かってくれる人で、と思いつつ、私はお子たちにもそういう指示を改めて飛ばして、無事スタートということになった。

 テーブルのほうでは絵画教室を行ない、L字のカウンター側でリアル間違い探しイベントの覚えるパートだ。

 とは言え、変化させられる部分が狭くなってしまったなぁ、と思った。

 無事覚えるパートが終わり、お子たちはみんな裏口からハイキングコースのほうへ出て行った。

 お子たちの安全を監視するのは常連さんたちがやってくれる。和装のお客さんも来ていて、お子好きなんだ、と思った。

 本当は五分くらいのスパンでリアル間違い探しをどんどんやっていく予定だったが、絵画教室とバッティングしてしまったため、ここから三十分後一発勝負ということになった。

 というわけで、後半に用意していた大仕掛けはもう使っちゃおうと思って、私はまず換気扇を回してから台所のほうで作業をし、ショタヌキが事前に決めた通りに内装を変えていく。

 ショタヌキは背が低いので、主に床担当だ。私は換気扇を止めたところで、テーブルより上の内装を変えていく。

 とは言え変え過ぎると”全部じゃん”となってしまうので、この塩梅が難しい。

 まあ小物を置いたり、ショタヌキは床にシールを貼ったり、そんな感じで結構すぐに三十分経ちそうになったその時、絵画の先生が優しい声で、

「こちらもそろそろ休憩に入るので、こっちのモチーフを別のモノに変えておきましょうか?」

 と言いながら、テーブルの上に置いていた、リンゴと瓶のモチーフをどかした。

「えっ? いいんですか!」

「はい、お子さんたちがこっちに近付かなければ大丈夫なだけなので、ちょっと見ただけで分かる程度のモノならこちらも安心です」

 お言葉に甘えてといった感じで、じゃあと思って、

「祥太くん、石膏の像に変化できる?」

「やってみます!」

「大きめね!」

 と私が言ったところで、ショタヌキはテーブルの上に乗っかるようにジャンプしたと思ったら、そのまま一気に、パンツを履いている小型のダビデ像になった。パンツ配慮するんだ。

 今までの傾向からお尻くらい出しそうだったけども、こういういろんな年齢・性別の方々がいる時は配慮するんだ。いや私にはお尻発言OKだろうなぁ、じゃぁないんだよ。いやOKだけどもさ。

 そんなショタヌキのパンツ配慮ダビデ像は絵画教室の生徒さんたちに大ウケで。結構ウケいいなぁ、このユーモアは覚えておこうと思った。

 絵画の先生がショタヌキのパンツ配慮ダビデ像を回して、キッチン側を正面に向けながら、

「お子さんにも面白いほうが正面になるように」

 と言って、絵画の先生にもウケるんだ、絶対覚えようと思った。

 いざ、ハイキングコースにいるお子たちを呼んで、リアル間違い探しイベントの開始だ!

 お子たちが裏口から、何なら入口からもなだれ込み、早速いろんなところを見ている。

 でも最初のフリというかアレのおかげで、絵画教室のほうは全然見ていない。これはかなり良い感じだ。

 あと私のカフェならではの仕掛けにはまだ気付いている人はいなさそう。それともお子と言うにはちょっとオトナな、高校生組が黙って用紙に記入しているかもしれない。

 十五分のシンキングタイムも終了し、答え合わせとなった。

 ショタヌキの床シールは全員分かったみたい、小物系もみんな分かったみたいだけども、カフェにBGMが流れているところは正解者が少なかった。これもカフェならではかもね。

 さて、私のカフェならではの仕掛けだが、案の定、高校生組の二人が正解していた。

 そう、私がわざわざ換気扇を回して止めてをして作った仕掛け、カフェで煮ている鍋の料理が違う、だ!

 最初はポトフを煮ていて、間違い探し中はラタトゥイユを煮ていたのだ! コンソメの香りとトマトの香り!

 高校生組に話を聞くと「BGMが流れていたので、こういうカフェならではのことがもう一個あるのではと思いました」と言っていて、しまった、BGMがヒントになってしまっていたか、と思った。

 ちなみにショタヌキのパンツ配慮ダビデ像の正解率も低くて、パンツ配慮ダビデ像、もっと大勢にウケてほしかったな、と思った。

 また、答え合わせした時の反応も何かイマイチで、そうか、お子は元々のダビデ像をまだ習っていないか、ということに気付いた。知見。

 でも高校生組にはウケて良かった。高校生からの笑いなんだ、パンツ配慮ダビデ像って。

 というわけで最後はそのポトフとラタトゥイユをみんなに振る舞った。

 基本的にどちらか一品食べられるということにしていたけども、この問題に正解した食いしん坊バンザイには二品プレゼントした。

 するとその高校生の一人が、

「美味しいです……ポトフは鶏を一旦焼いて香ばしくしていて手間が掛かっている、それにコンソメ……だけではないですよね、また別の味の深みがあります」

 私は頷きながら、

「そうですよ、私はポトフがご飯にも合うように、ほんだしを入れているんです」

 と答えると、その高校生は満面の笑みで、

「なるほど! わたしも真似します!」

 と言ってくれて、高校生にウケるのテンションが上がるので、割合を全部教えた。それは教えるよ。若い子にウケたいから。

 もう一人の高校生は最初にラタトゥイユを食べて、

「夏野菜の旨味たっぷりなのに、あっさりしていますねっ」

「こっちはあえてトマトのホール缶と塩胡椒でしか味付けしていないんです。ポトフが複雑な味の分、こっちはトマトの香りだけがカフェに充満するように」

「そんなリアル間違い探しイベントと味への配慮が!」

 と全部分かってくれて、めっちゃ嬉しかった。ずっと高校生にウケる女でいたいと思った。

 そんな話をしていると、当然お子たちも「両方食べたい!」となってきて、結局量もあったので、なあなあになってみんなに振る舞った。

 お子たちが「美味しい」「美味しい」と言ってくれて、お子ウケも有難いと思った。

 ちなみに両方とも、にんにくはあえて使っていない、あんまお子がクサいとか嫌だから。お子はクサくないであれ、私のいらない格言だ。


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