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Lamia?  作者: mo56
第2章 防人達を探して
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127話 屋上

 青空に近い位置にて、白いゴムボールが宙を舞っている。

 それを離れた位置で、ぼんやりと、小林はそのボールを打ち合っている長谷川と米山を眺めていた。

 普段なら、体育の授業でも積極的に自らの体を動かして、他の生徒を圧倒する小林であったが、昨晩は長いことゲームに励んでいたせいか、小林はバレーボールに加わる気力が湧かなかった。

 その為、今こうして昼休みをぼんやりと過ごしているのである。

 それにしても、小林の目の前にて展開されている試合は、あまりにも一方的なモノであった。別に試合というよりはただの遊びであるのだが、それにしては中々真剣な面持ちでプレイしている。

 だが、見るからに体育会系の体格をしている米山に対して、小柄でほっそりとした体格の長谷川とでは、圧倒的に長谷川が不利であり、バレーボールというよりは、米山の一方的なサーブ練習と言ったほうが正しい状況であった。

 しかも、一体一ではなく、何故だか米山の方に一人助っ人がいる。

 寧ろ長谷川の方に助っ人が付くのが妥当と思えるが、その助っ人とはどうやら米山の友人らしい。

 

 「俺、浜崎!!」

 数分前に米山の友人は、そう屋上で名乗りを上げて飛び込んできたのを、小林は覚えていた。突然こことであったので、彼の登場は一同の雰囲気を、不思議な位置にまで持っていったが、当の本人の浜崎自身は、そんなことなど一切気にかけず、バレーボールへ参加した。

 茶髪に天然パーマで、見るからに調子の良さそうなその男子生徒は常時テンションが高かった。

 身長もそれなりに高く米山程ではないが、体格もそこそこであり、やはりどう足掻いても長谷川には不利なバレーボールである。

 そこまで不条理ならば止めてしまえばいいのだが、意外と長谷川の奴は負けず嫌いのようで、相変わらず某漫画の様に、執拗に米山から激しいサーブを加えられても、それをなんとか紙一重で防いでいる。

 

 とても見ていて面白い光景だとは思うが、小林の頭は昨晩の『Lamia?』での事に集中していた。

 ここのとこ連日でプレイしているが、心が中々休まらない。

 毎回のように何かしらの殺し合いに巻き込まれるか、自分からそういう原因を作ってしまっている。しかも、そんな混乱した日々が続いていたが、昨晩は特に訳がわからなかった。

 一度、ニッキにロストさせられた筈なのだが、面倒臭い転生作業を踏むことなく、どこぞの森の中へ放り出され、そこで妙な化物に出くわした。

 何度思い返しても、あれはゲームでの出来事だったのか現実だったのか。

 いや、普通にパソコン画面に映し出されていたのだから、ゲームでの出来事だろう。どうにも遅くまで起きていたせいか未だに頭がはっきりしない。

 そんな事をぼんやり考えている間に、今日はあっという間に昼休みまで過ごしてしまった。授業だって身に入らない。

 確かにこれでは、生活指導でいちいちパソコンの使用について、担任が五月蝿いのも頷ける気がした。別に小林は成績に瘤があるわけではないのだが、こうしてばかりいるとすごい勢いで下がるのだろう。

 しかし、それを引換にしても、ぼんやりとしている程の理由がある。

 一体昨晩はなにが起こっていたのだろうか。

 しかし、そんなことばかり、考えていても仕方がない。

 そんなことをしばらく小林が考えていると、心配になったのか米山がバレーボールを自分だけ抜け出して、こちらへやってきた。

 奥の方では米山からボールを受け取った浜崎が、長谷川にサーブを喰らわしているが、技量的に米山より浜崎の方が若干劣るらしく、長谷川は先ほどより動きがよかった。

 「どうしたんだよ?」

 「え、いや...」

 正直言って茶髪の不良が顔を覗いてくるなんて、さほど気分の良いものではないが、心配してくれるだけ有り難く、小林はつい昨晩のことを彼に打ち明けた。

 「なに?お前ロストしたあと、そんなことあったの?」

 例の塔での出来事を語り終えると、米山は再び心配そうに小林の顔を眺めた。

 米山は、彼の頭がついにゲームのやりすぎでおかしくなったのかと思ったが、別に小林は普段通りなので、どうにも本当の事らしいと納得しつつ、浜崎と長谷川の互角の戦いを後目に眺めた。

 「うん...なんだかよくわからないけど...新手のバグかな」

 「そこまでよくできたバグがあるわけねぇだろ」

 二人はそんな会話を交わしつつ、ぼんやりとバレーボールを眺めていた。ついに、長谷川の粘りが功を征したのか、相手の浜崎を圧倒してサーブを喰らわす場面が増えていた。

 「...それに、なんか卵さん達に関係してるそうだけど、一体どう言うことなのかな?」

 「俺が知るわけねぇだろ。なんだよなんだよ。あいつ等だけ場を仕切りやがって、何様だってんだよ」

 米山はさもつまらなそうに吐き捨てて、視線をバレーボールから逸らして、屋上から見えるグランドの景色を眺めようと、柵から少しだけ身を乗り出した。

 何かと最近は屋上の出入りを禁止する学校が多いが、小林の通う公立高は珍しいことに屋上が解放されていた。

 だが、屋上に来るような連中なんて、正直に言ってしまえば学年からはみ出るような連中ばかりだ。

 そして、正に小林と米山はそのはみ出し者である。

 長谷川は別にそういう生徒ではないのだが、無理矢理連れてきてしまったし、浜崎に至っては心底どうでもいい。

 「でも現に、卵さん達中心に色々話が進んでるよね」

 「...まぁな。巫女がなんだかしらねぇけど、結局ゲームだろ?暇つぶしの娯楽だろ?」

 「うん」

 「それがどうして、そんな変なことばかり起きるのかね。この前の森とか、昨日の夜とかよ」

 「あれはチートだよ」

 「それはわかってる。けど、あんなの初めてだ」

 「俺もだよ...そういえば、米山君はLamia?長いの?」

 「うん?...まぁそこそこ」

 「...ずっとあのキャラなの?」

 「...悪いか?」

 小林がふと素朴な疑問を口にすると、彼は小林を睨みつけてきた。流石に学年で幅を利かせる不良なだけあって、なかなか凄みがある。

 普通の生徒なら、怯えきって口を紡ぐが、小林は彼の機嫌を損ねたのが申し訳なくなり、口を閉じて空を眺めた。

 

 そして、ふと気づくと、ついに長谷川が激闘の末に浜崎から点を取って、向こうでガッツポーズをしているのが見えた。

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