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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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125話 不死身⑩

 卵は振り被ったピックを、今度は狼狽えている化け物の腹部へ振り下ろした。

 まるで、槌で焼けた鉄を叩いたような勢いで、火花が卵へ飛びかかるが、それを全く意に返さず、彼はもう一度ピックを振るって化け物の腹部を打つ。

 「馬鹿な...こんな馬鹿なことが...」

 相変わらず化け物は信じられないと呟きながら、卵の攻勢に対し防戦一方であった。

 ピックは容赦なく振るわれ、燃え盛る体に打ち込まれる。

 その光景はさながら、鍛冶工場にて、燃える鉄を正すかのように、しっかりとした動きである。

 「やっちまってください!卵さん!」

 その光景を見守りつつ、短剣を失ったラヒムが卵に対して、声援を掛けるが、彼は化け物への攻撃に集中しているため、ラヒムの言葉など全く気にしない。

 早く終わらせて寝たかった。

 それだけが、卵を動かしている。

 


 「団長なかなかやるな...」

 その死闘から離れた民家の2階の窓辺から、ミダズは様子を眺めていた。背後にはベルンが巨体を器用に折り畳んで、わき目に光景を見ている。

 先ほど、卵等が化け物と対峙しはじめた辺りから、眺めているが、先ほどの青白い光が放たれてから、一気に形成が変わった。さすがに窓辺から現場までは幾らか離れており、間近にて団長の裸体を拝まないで、済んだことは幸運と言えた。

 「まぁ全盛期程じゃぁねぇが、ボチボチだな...」

 ミダズはそう満足げに呟きつつ、ベルンへ視界を移そうとしたが、その際に自分らのいる部屋の戸口に誰かがいる気配を感じて、慌てて戸口の方向へ頭を向ける。

 一方、ベルンはそんなことなど全く気にしていないようで、依然と窓辺へ視線を走らせている。

 

 「...高みの見物とは、良いご身分になったな」

 「副団長?何故ここに...」

 戸口に颯爽と立っている人物は、副団長であるシシャモであった。

 先ほどまで、向こうで化け物とやり合っていた筈ではなかったのか。

 その疑問をミダズが口にしようとすると、彼はミダズの口を、自身の片手に携えた細身の剣を、軽く振り上げることによって制した。

 「あそこまでやれば、もう卵だけで十分と思ってな...たまには手柄の一つぐらい差し上げた方が良い」

 「...」

 「それより、お前等はたかだか団員の癖に、団長を試そうとは思い上がった奴らだ」

 シシャモはミダズを厳しい目つきで睨みつけるが、その二人の合間にて、圧倒的な存在感を誇る巨漢であるベルンは無視していた。

 だが、ベルン自身は全く副団長が現れたことにも動じずに、相変わらず外の景色を眺めている。

 「巫女の意志は、あくまで卵の手足として、お前等が働くことだぞ?職務放棄か?」

 「...いえ、決して、そういう訳じゃ...」

 「まぁいい。それより、先ほどの報酬の件だが、ラヒムの奴は内輪揉めでロストしたそうだな。先程、そう証言したぞ?」

 「あ...まぁ、そうですけど...でも俺の報酬とその件とは別件でしょう?!」

 項垂れるミダズを眺めながら、シシャモは俗物的に、先程の報酬交渉を再開することにした。シリアスな空気をぶち壊しているという自覚はあるが、そのような事より、金の方が最も大事である。

 「いや、そんなことはない。俺は仲間が敵の手によってロストしたからこそ、その仇を取ったお前に報酬をやるんだ。根本から違う」

 「ちょっと待ってくださいよ...副団長らしくもねぇ...仲間だなんて...たかが追い剥ぎの小男でしょう?」

 ミダズはとても意外そうな面持ちで、シシャモを睨んだ。

 今、シシャモは仲間と言った。

 このゲームにおいて、その様な甘ったるい言葉を目にするのは、久しぶりである。常に裏切りと争いが絶えないこのゲームにて、仲間など無いに等しい存在だ。

 「あぁ、確かにラヒムの奴は、薄汚い追い剥ぎだ。俺だってそう思ってる。...だがな、奴は巫女が言うには、俺達の導き手と言う話だ」

 「そんな、巫山戯ないでくださいよ?!あんな薄汚い小男が?俺達の導き手は巫女であった筈だ!」

 そのシシャモが言った言葉に対して、今まで項垂れていたミダズは態度を一変させて、激しく噛み付いた。

 だが、そんなミダズの態度に、シシャモは顔色一つ変えることなく、冷静に言いのける。

 「まぁそうなのだが...巫女がそう告げてきたんだ。それに、奴は卵に良い刺激を与えるとの話だ」

 「...なんだか気持ち悪い話だ」

 「俺もそう思う」

 再びミダズが項垂れるのを見て、シシャモは話を下衆な報酬交渉へ戻した。幾らなんでも5千円は法外すぎる。せめて2千円が妥当だと、今度こそ決着をつけたかった。



 「う゛っしゃらぁっ!」

 怒声を上げつつ、勢いよく振り上げられた戦闘用ピックが、化物の腹部へ振り下ろされる。

 その度に化物は呻き声を上げ、大きな翼にて、卵を払い除けようとするが、彼の着込んでいる白い光を帯びた鎧は、炎の熱に傷つけられることはなく、逆に白い光が炎を退けている。

 そのお陰で、卵は遠慮なく、化物の体へ戦闘用ピックを打ち込むことができた。

 そして、卵が携えている白い光を纏ったそのピックは、先程のラヒムが投げて、炎の壁に飲み込まれたような短剣とは違って、しっかりと衝撃を化物へ食らわせる事ができた。

 既に化物が身に纏っていた炎の鎧は、卵からの攻撃に対して、なんの効果も発揮していなかった。

 そんな光景をラヒムは、傍らで眺めながら、まさに彼の戦法はゴリ押しであると、鮮やかな槍の突きで相手を圧倒するシシャモの姿を、脳裏に浮かべつつ、卵の戦闘スタイルと比較しながら声援を送っていた。

 「卵さん!そのまま、どんどん押し切っちゃってください!」

 既にラヒム自身は得物がないので、精精、化物から間合いを取っているのが精一杯であった。

 だが、傍らで野次馬のように、騒いでいたのがいけなかった。

 化物が呻き声を上げながらも、ラヒムを一瞥したのだ。



 「...そこまでにしておきなさい」

 卵は何度も何度もピックを振り上げては、化物の体へ打ち込んでいたが、化物の必死そうに冷静さを取り繕った声で、初めて動きが止まった。

 目の前にて、ラヒムの小さな体が、化物の翼に掴まれて、宙にぶら下がっているのだ。

 「...なんかこの前も、これと同じような光景を見たきがするぞ」

 「俺も同じ感想です」

 宙にぶら下がったラヒムは、先日の悲劇を苦々しく思い出しながら呟いた。

 

 

『...ラヒム?あぁあの裏切り者のクソッタレか。...思い出しただけでも、反吐が出るぜ』

傭兵組合人事取締 ヴェニッジュ

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