第6話 ワレワレ、盗賊を仲間にする。
「なんで姫様!?いや、これも言ってしまえばお約束か?」
「一国の姫が誘拐されるって一大事では?」
「そうだよ!このままじゃ!」
ユウタは前に出る。
「オレはレアが良い!」
「ウェルダンで!」
盗賊達が皿を持って列を成していた。
「や、やめろー!」
「どうした新入り?」
その列の前にユウタは飛び出る。
「お、おれは新入りじゃない。勇者だ!」
「サトウ・ユウタどうしたのですか急に。身分を偽りボスに近づく話は?」
「あんなの見過ごせないだろ!?人を食うなんて!」
「ん?……ああ、そうでした、地球人は同じ人型の物を食べるのに抵抗を感じるのですね」
「おま、なんか今までで一番お前を宇宙人だと感じたわ」
頭を振って剣を構えるユウタ。
「とにかく!助けないと!」
「サトウ・ユウタ、聖剣の使用は勧めません」
「そうか!これじゃ威力が高すぎる」
ユウタは聖剣をしまい、近くに立て掛けられた棍棒を手に取った。
「おいおい、この人数相手にやり合う気か?」
「その剣高く売れそうだな。後ろのヒラヒラした服もよく見れば宝石ジャラジャラだ」
盗賊達が舌なめずりをする。
「たった二人で何ができる!」
盗賊の一人が声を上げる。
「二人じゃねぇ!三人だ!」
「!?」
「おらはこっちにつくぞ」
先ほどまで案内してくれていた女盗賊がユウタの隣に立つ。その隣には姫もいた。
「え、姫!?いつの間に、いやなんで!?」
「オラは前からここのやり方が気に食わなかったんだ。今からオラは味方だ!オラはフーシだ!」
「助けて頂きありがとうございます、フーシ様」
「よろしくお願いしますフーシ。私はヨグ――」
「いやいや!飲み込めるか!いきなりすぎ!」
ユウタが隣に並んだフーシに向かって言った。
「なんですか、サトウ・ユウタ。彼女は仲間になったのですよ」
「なんでそんなすんなり受け入れてんだ!?こんな骸骨まみれの、ああごめんね悪く言うつもりはないんだ。姫を丸焼きにして食べようとしてたんだぞ!?」
「オラは人よりも魚が好きだ」
「だそうです」
「姫様は良いんですか!?」
「まあ、私は特に被害は受けてないので。それにその方はよくフルーツを差し入れてくれたんです」
「良い人ですね」
「おれがおかしいのか!?」
「サトウ・ユウタ貴方が好きな王道ファンタジーではよく盗賊が仲間になるでしょう」
「いやまあ、ジョブとかでは鉄板だけど。でも考えたらなんだよジョブが盗賊って、職種じゃなくて犯罪者じゃん」
「何グダグダ言ってんだ!やっちまえお前ら!全員晩飯にしてやれ!」
盗賊団が一斉に向かってくる。
「ぶっ殺してや、あぁぁぁ?!」
突撃してきた敵は突然土煙と共に姿を消す。
「お、落とし穴!あいつの仕業か!」
敵の後続集団がたじろぐ。
「いやいつの間に!?」
「オラのトラップ生成スキルだ!」
「え、いや……スキルってべんりー」
こんな一瞬で無数の落とし穴が作れるのは流石にスキルと言えどおかしくないか?という疑問を飲み込むユウタ。
「でもまだいますね」
落とし穴を飛び越えて盗賊団が攻め込んでくる。
「露払いなら私も!氷よ!」
周囲の盗賊は一瞬で氷漬けに。
「おお!すげえぞ姫様!」
フーシが手を叩く。
「一瞬でこれほどの氷を、大気中の水分だけでは説明がつきませんね。興味深い」
「おれらも氷漬けだけどな」
ヨグとユウタも半分凍らされていた。
「ああ!申し訳ありません!温風よ」
姫は二人を氷から助け出す。
「貴様らやってくれたな!俺様の部下を!」
ビッグボスが斧を手にして立ち上がり、こちらに歩いてくる。
「あれ、なんかえらく時間かかってない?」
ユウタ達にビッグボスの影が落ちる。
彼は真上からユウタ達を見下ろしていた。
「いやデカすぎ!あんた人間か!?」
ビッグボスの身長は10mほどあった。
「遠近感がおかしくなりますね。首が痛くなります。もう少し距離をとってくれませんでしょうか」
ヨグが見上げて話す。
「貴様らなんぞぶっつぶしてやる!」
「うわぁぁぁ!」
ユウタ達は散り散りに飛び退いた。
「落とし穴作れないのか?」
「時間が足らねぇな。オラのスキルはビッグボスと相性が悪ぃんだ」
フーシが答える。
「サトウ・ユウタ、なぜ逃げるのですか」
「普通逃げるだろ!」
「お忘れですか?あなたのステータスは普通ではありません」
「……そうだった」
ユウタは顔を叩く。
「何してんだ、おれは勇者だぞ!やってやる!」
「おい!一人で大丈夫なのか!?」
「ステータスの一番高い、彼が、勇者が適任です」
「あの方が勇者さま」
フーシと姫がユウタを見る。
「聖剣を使わなくたって!」
ユウタは棍棒を振り上げる。
「邪魔だ!」
ビッグボスの一撃で壁に叩きつけられるユウタ。
「……」
「ガハッ!」
「……ヨグ、話が違う」
「質量の差を考慮していませんでした」
「やられた!勇者さま!」
フーシが倒れた勇者の傍に一瞬で近づき回収する。
「回収ご苦労さまです」
「回収言うな」
ユウタがフーシに担がれながら言う。
「サトウ・ユウタ、もう一度やってみましょう」
「お前さっきの見てなかったのか」
「見ていましたよ。姫、炎は扱えますか?できれば遠方の的に飛ばせる物が良いのですが」
ヨグは姫とフーシに顔を向ける。
「ええ、可能ですわ」
姫が頷く。
「フーシ、このようなトラップは作れますか?」
ヨグは近くに転がっていた頭蓋骨に設計図を描き始めた。
「ナチュラルに頭蓋骨使うなよ罰当たりだぞ」
「おー、これくらいならすぐできるぞ!だけんどこんなのじゃビッグボスには意味ねぇだ」
「これはビッグボス用ではありません」
ヨグはユウタに目線を向ける。
「貴方の出番ですよ、勇者」
「ヨグ……!わかった!やろう!」
次の瞬間、ユウタはカタパルトの上に配置されていた。
「どうせこんな事だろうと思ったよ!」
何かを背負わされた状態で体育座りをしているユウタ。
「あとお前から渡されたこれなんだよ」
「宇宙空間活動用の酸素タンクです。少し改造していますが。ではフーシ」
「行ってこい勇者さま!」
フーシがカタパルトのレバーを引く。
「あー、やっぱりこうなるのねェエエエエエ!」
勢いよくビッグボス目掛け飛んでいくユウタ。
「またか豆虫野郎め!叩き潰してやる!」
ビッグボスは斧を振り上げた。
(奴よりも早く、勢いを乗せた一撃を叩き込む!)
ユウタも構える。
(あれ、このタンク何に使うんだ)
「姫、お願いします」
「良いのですか?」
「問題ありません、サトウ・ユウタの頑強さは先日証明済みです」
「分かりました!行きますよ勇者様!炎よ!」
姫は掌に炎の矢を作り出す。
矢は勢いよく放たれ、ユウタが背負う酸素タンクに命中。
「え、熱ッ――」
大爆発。
「なにぃ!?」
急な爆発で驚くビッグボス。
「うわァァァッ!ヨグテメェェ!」
加速されたユウタがビッグボスの眉間に命中。
「な、なんて野郎だ……」
ビッグボスの眉間には風穴が開いていた。
彼は膝から崩れ落ち、洞窟を震わせ絶命。
「やったなー!勇者様!」
「すごいですわ!あのビッグボスを倒してしまうなんて!これが勇者様!」
フーシと姫は尊敬の目をユウタに向ける。
「サトウ・ユウタ、作戦成功です」
洞窟の壁にできた巨大な血のシミに話しかける三人。そのシミの中心にユウタがいた。
「早くシャワーを浴びさせて……」
ユウタは静かに涙を流していた。
それは勝利の感涙か、敵への慈悲の涙か。
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