第5話 ワレワレ、盗賊退治にいく。
ヘッドレスと対峙してから数日が経過した。
勇者サトウ・ユウタと聖女として召喚された研究者のヨグ=アーサル=トゥッル=イソ=ガゴーソス☆は馬車に揺られていた。
「サトウ・ユウタ、ワレワレは魔王討伐の為に召喚されたのですよね」
「何を今更言ってんだ?それよりほら、馬車だぞ馬車!牧歌的でいいなぁ、一度乗ってみたかったんだよ」
ユウタは馬車の車内や窓からの風景に感動していた。
「ではなぜワレワレは盗賊の根城に向かっているのですか?魔王の城ではなく」
「え?お約束だろ?序盤に盗賊を勇者が倒すの。宇宙ではそういう話あんま流行ってない?」
ヨグにそう答えるユウタ。
「なぜ討伐するのですか?」
「そりゃあ王国の脅威だから?」
「サトウ・ユウタ、普通に考えてその仕事は国の兵士が担うのでは?」
ヨグの発言で固まるユウタ。
「……」
「魔王はまだわかります。国の兵力では対応しきれない。聖剣を持つサトウ・ユウタが必要なのでしょう。ですが盗賊はどうでしょうか」
「あれ、確かに……普通に考えて兵士の仕事やらされてるじゃん」
ユウタは真顔になる。
「昨日は薬草を取りに行くとか、二日前は魔獣を狩るとか」
「ああ、国の兵士や街の人に頼まれた――ん?」
「おいこれ全部勇者がやる仕事か?」
「ずっとそれを言おうと思っていました。ですがサトウ・ユウタの快諾ぶりを見ていて何か考えがあるのかと」
ヨグの質問に対してユウタは首を横に振る。
「ない、なんかクエスト発生したぐらいの認識。異世界転生のお約束だから。いやでも考えたら、あんなチート能力あるならさっさと魔王倒せよ」
ユウタは頭を抱えてそう言った。
「サトウ・ユウタ、あなたは生前より頼まれたら断れない性格ですから。それも影響しているかと」
「ああ、そうなんだよ。おれってずっとこんなんだから。仕事も断れなくて……」
ユウタは今度は別の事に引っかかる。
「おい、なんで知ってるんだ?おれの生前の話。一度も話したことないはずだけど」
「検査キットの一つを使いました」
ヨグはポケットから何かを取り出す。
「この検査キットは一定量の遺伝子、例えば毛髪があれば対象の情報を知れるのです。中型以上の原生生物用なので少し必要量が多かったですが」
「必要量って」
ユウタは後頭部を触る。
後頭部がスッキリしていた。
「夏にぴったりな軽さ!何刈り上げてんだ!」
「気づかなかったのですか?もう二日たちますが」
「自分の見た目に気を使う余裕がない人生でな!」
怒るユウタにヨグは鏡を渡した。
「うしろはこのようになっております」
「美容師か!……あれ、悪くない」
「現代日本、サトウ・ユウタの外見年齢に合わせてカットしました」
「美容師じゃん……」
まともに髪を整えたのはいつぶりだろうか、なんてことをユウタは考えていた。
そんなことをやっていると馬車が止まる。
「旦那がた、すみませんがお送りできるのはここまでになりやす」
馬車の主が頭を下げて言う。
「ということはこの先が」
「へい、ここらを縄張りにしている盗賊たちの根城がありやす」
彼が前方を指さす。
先には様々な動物の髑髏で装飾されていた巨大な杭が幾つも刺さっていた。骸骨の中には人と思われるものも無数に混ざっていた。
「獣や人の骨を乾燥させているのでしょうか」
「ドクロを天日干してどうすんだ!これはあれだよ、俺達の縄張りに入ったらこうなるぞって警告だよ!」
「なるほど、ですが決めつけはよくありません。これはもしかしたら後で食べる為の保存かも」
「あのな~、あんな骨、犬も振り向かねぇよ」
二人は馬車から降りてひとしきり話、御者に料金を払う。
「ありがと御者さん!」
「日が暮れるまでにワレワレが帰らねばお帰りください。こちら夕食代にでも」
二人は先へと進む。
「どうかご武運を」
御者は二人を見送り馬車に乗り込む。
「それでここがアジトか」
ユウタとヨグは洞窟の入口に到着した。
「確か盗賊団は100を超える構成員を持つのですよね?」
「ああ、だから兵士達もそう気安く手出しできないって。うわ、100人相手にするのかなんか一気に不安になってきた」
洞窟内を観察しながら進むヨグとお腹を抱えるユウタ。
「100人規模で住むには洞窟は不適切では?」
「まあ、確かに、絶対狭いよな。流石にここは集まる拠点で住居は別にあるんじゃないか?」
「ふむなるほど。おや、これは初めて見る植物」
植物に手を伸ばすヨグ。
「おい!」
奥からの声がヨグを呼び止める。
「勝手に人様の住処に来て、ものを盗もうなんてよ。王国兵様は随分と礼儀知らずだな」
声の方向に目を向ける。
そこには骸骨をアクセサリーのように付けまくった女性の盗賊が立っていた。
(や、ヤバい!もう見つかった!)
ユウタが聖剣に手を伸ばそうとする。
「失礼いたしました」
ヨグが謝った。
「確かにここは貴方がたの住居、そこに自生しているものを無許可で取るのは不適切でした。ですが一つ言わせてもらってもよろしいでしょうか」
「いや、もう随分と話してねぇか、なんだ」
アクセサリーまみれの盗賊が腕を組む。
(あの人骨本物だよな、ひぇ~。変なこと言うなよ、ヨグ)
ユウタがそんな相手に何を言い出すのか心配になりながらヨグを見る。
「ワレワレは王国の兵士ではありません」
「なに?そう言われてみれば、確かに。兵士にしちゃ変な格好だ。うちのボスを狙いに来た賞金稼ぎか?」
「いえ、賞金稼ぎではありません」
ヨグがそう答えると盗賊はため息をつく。
「なんだよ、お前ら入団希望者か。紛らわしいことするなよ。侵入者かと思ったぜ」
「ああ、そうで、むぐ」
咄嗟にユウタがヨグの口を塞ぐ。
「入団希望者です!」
ユウタはヨグの耳元に顔を近づける。
「話合わせてくれ、このままボスのもとに案内してもらおう」
ヨグは頷く。
「そうです、ワレワレは見ての通りの盗賊団に入ることを志して来た者です」
「見ての通り……かはさておき。まあいい、じゃあオラについて来な」
盗賊は二人を奥へと案内する。
「貴方様は入口付近におられましたが、見張りの業務をされているのですか?」
「いや、お前らが通ってきた道に見えない扉みたいなのがあってな。合言葉を言わずにそこを通るとオラたちに知らせがはいるのさ」
ヨグの質問に盗賊は答える。
(盗賊の防犯意識たか!)
ユウタは内心そんなことを考えていた。
先に進むと大勢の盗賊たちが生活しているスペースが。
「全員札付きのワルだ。お前らは何をしたんだ?自己紹介の時に聞かれるから話すこと考えておくといいぞ」
「それならば問題ないかと」
ヨグはユウタの肩に手を置く。
「このサトウ・ユウタは先日砦に入り器物損壊と殺害の限りを尽くしました」
「人聞き最悪!でも事実だ!クソ!」
二人を見て盗賊が笑う。
「その話きっとボスが気に入るぞ」
三人はさらに進み洞窟をみて回る。
洞窟内には家庭農園、市場、酒場、運動場、プールがあった。
「なんでだよ!」
「ん?どうした?」
「あ、いえ、つい」
思わず言葉が飛び出たユウタは口に手を当てる。
(洞窟なのになんだこの充実具合)
「わかりますよサトウ・ユウタ」
ヨグが小声で話す。
「日光の乏しい洞窟内で栽培を行うとは。あの光る石が太陽光の代わりをしているのでは……」
「あー、うん、そうだね」
呆れた顔でヨグを見るユウタ。
「あのー、どれくらい盗賊の方が?」
「500人以上だな」
「500人!?」
目を見開くユウタ。
「王国の情報網は改善の余地ありですね」
ヨグは小声でそう言った。
すると何やら賑やかな声が聞こえてくる。
「なんだ?」
「宴でしょうか」
二人がそう言うと近くにいた酔いどれの盗賊が振り向く。
「なんだぁ新入りかぁ!これから最高級の肉を食べるんだ」
「なに、パーティ?」
「最高級……興味あります」
盗賊と共に二人は非常に広い空間に出た。
そこには大勢の盗賊が集まっていた。
「なんだ?キャンプファイヤー?」
ユウタは空間の中心で燃え盛る炎に目を向ける。
「バハバハ!早く食わせろーー!」
「血沸き肉ダンシングだ!」
盗賊達が炎に向かって各々の武器を突き上げる。
「いやーー!お助けーー!」
炎の上、洞窟の天井から女性の叫び声が。
「ん……んん!?」
「おや」
ユウタとヨグは声のもとへ視線を向ける。
そこにはドレスを着た女性が吊るされていた。
「今夜は姫の丸焼きだー!」
洞窟に大歓声が響く。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
今後も投稿していこうと思うので評価、コメントなどして頂ければ励みになります!




