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ワレワレの異世界渡航記録 ー文化財認定申請書を添えてー  作者: きゅりおす


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第3話 ワレワレ、料理を冷ましたくない


 ヨグとユウタが宴を楽しんでいると、城にヘッドレス と呼ばれる魔王の幹部が攻めて来た。


「ヘッドレスとはどんな方ですか?」

 ヨグが聞く。

「残虐非道な奴だ。力の限り暴れまわり、邪魔する者は例外なく殺される」

 国王は顔を青ざめさせて言った。

 

「あそこの砦にヘッドレスが!」

「なんと、あんなところまで攻め込んで来たのか」

 兵士と国王が慌てふためく。


「ふむ、確かにあと10分もしないうちにここまで攻め込まれるでしょう」

「え?!本当?!じゃあすぐにいかないと!」

「少しお待ちください、まだこのプディングなるものを」

「さっき食後の雰囲気出してただろ!行くぞ!」


 ユウタはヨグを掴んで外に連れて行く。



 不敵に笑う兵士たちが城に近づいて来る。


「そこまでだ!」

 兵士の前にユウタが立ち塞がる。


「なんだてめぇは?!」

「お、おれは勇者だ!」

 その後ろからヨグがジャラジャラと音を立てながらやってくる。


「なんだ、その隣の……なんだ?」

「ご、ゴブリン?いや、オーク?」

 ヨグをみて困惑する敵兵士。


「銀河文明の研究員です。どうぞよろしく」

 お辞儀をするヨグはユウタの足が震えていることに気づく。


「ん?サトウ・ユウタ、寒いのですか?」

「違う!というかお前のその格好なんだよ!これからランウェイでも歩くのか!?」

 ヨグは豪華な装飾が施されたドレスを着ていた。


「城の者たちが聖女の為に作ったものらしいです」

「だからって着るのかよ」

 二人がやりとりをしていると敵兵士が声を上げる。


「いいか!よく聞け!ヘンテコ二人!」

「ヘンテコっておれを巻き込むな!」

 ユウタの訴えは通らず、相手は話を続ける。


「ふははは!この砦は我らがヘッドレス様自ら設計された砦、中は様々なトラップが用意されている!」

「だが貴様らはここで死ぬ!突撃!」

 槍を構えた者たちが突撃してくる。


 地面を揺らしながら接近してくる敵の突撃部隊。


「や、やっぱ無理だろこれ!」

 圧倒され尻もちをつくユウタ。

 ヨグはユウタの肩を叩く。


「ユウタ、背中の剣が先ほどから光っていて大変眩しいのですが光量を落としてもらえませんか」

「剣?」

 ユウタが背中に背負った剣が光っていた。

 彼は立ち上がり、剣に手を伸ばす。


「そうだ、おれにはこれがある!女神様から授かった聖剣を食らえ!」

 解き放たれた聖剣の一太刀で、敵兵は消し飛んだ。


 ユウタは剣を敵集団に向ける。


「まだまだ大勢いるな、どっからでもかかってこい!」

(うぉ~!今のおれなんか凄くカッコいいんじゃない!)


「サトウ・ユウタ、その剣もう一度振ってみてください、先ほどのは保存できなかったので。お願いしますもう一度」

 ヨグがユウタを揺すってそう言った。


「ちょ、かっこつけてるんだから邪魔しないで!」


「クソぅ!よくも味方を!やっちまうぞお前ら!」

 先ほど以上の数の集団が二人に向かって突撃してくる。


「来い!」

 ユウタは敵集団の前で構える。


「いささか非効率的ですね」

 ヨグが指を砦に向ける。



 その指が向けられた先、ヘッドレスの砦屋上。


 屋上には厳つく装飾された椅子に座る頭のない大男とその部下と思われる者たちがいた。


 大男は生肉の塊を手に取り、腹部にある大きな口に放り込む。鋭い短剣のような牙が骨ごと生肉を噛み砕く。


「ヘッド!光る剣の男と緑のオーク?です!」

「ん?あれオークにしては細くないか?」

「確かに、あとキラキラしてますね」

 ヘッドレスとその側近が双眼鏡でユウタとヨグのことをみていた。


「あれを相手にしては時間がかかります。つまり料理が冷めてしまいます」

 ヨグが指で狙いを定めるように砦の頂上を指さす。


「あれ、なんかこっちに指さしてますよ」

「本当だ」

 その様子を見ているヘッドレスと部下。


「頭を取りに行きます」

 ヨグの指が光る。


「は……?」

「え……?」

 次の瞬間、ヨグとユウタは砦の頂上に現れた。


「どうも初めまして、私は銀河文明調査団所属の研究員ヨグ……」


「な、何してくれてんだ!」

 ヘッドレスは怒鳴り散らす。


「オレ様が1000種類も設計したんだぞ!?その罠を!ん!ぐっ!無視するなんてゆるさんぞ!」

 椅子の側にあるレバーを引っ張るヘッドレス。


 直後、ヨグとユウタの足場が消える。


「おや」

「はい?」

 二人は一気に砦の最下層に落下していく。


「いだ!」

「準備が良いですね、ヘッドレスは」

 顔面から落ちるユウタ、ふわっと着地するヨグ。


「お、お前飛べたの?」

「いえ、私のこれは落下制御ユニットです」

 靴を見せるヨグ。


「何が違うんだ、いやそんなことより、おれらは振り出しに戻ったってこと?」

「よほど1000種類の罠を見せたいようですね」

 二人の目の前には無数の障害物がぎっちりと詰められた通路が伸びていた。


「あれ丸鋸?あれはバカでかい鎌、その奥は壁から槍が出たり引っ込んだり――」

 ユウタは視界に入る罠を指差していく。


「いや殺意高すぎ!」

「外敵を排除するためですから、当然でしょう」

 震えるユウタをよそにヨグは罠を観察していた。


「おい!勇者とやらと――変なやつ!よく来たな!俺様の砦に!このヘッドレス様のもとに来たくば罠を乗り越えてきな!」

 砦内にヘッドレスの声が響く。


「あ!そうだ!さっきのワープ使えば――」

「無理です、この装置は移動先を視界に入れねばなりません」

 ヨグはユウタに説明した。


「では参りましょうか」

「いやいやいやいや!正気か!?どうするんだよあんな罠!即死だぞ!?」

 前に出るヨグをユウタは引き止める。


「確かに、人間なら致命傷でしょう」

 ヨグが振り向く。


「しかしそれは普通の人間。ワレワレは違う」

「ヨグ……!そうだな!おれ達がやらないと!」

 ユウタの目つきが変わった。


「ご安心を私に考えがあります」

「流石聖女!いや学者か!で、考えって」

 ヨグはユウタの手をつかんだ。


「なに?」



 一方その頃、砦の上のヘッドレス。


「よし、準備完了だ、監視魔獣に繋げ!」

 彼は部下たちと晩御飯の用意をし、巨大な幕の前に集まっていた。


「投影魔獣を監視に接続します!」

 部下が魔獣の背中を叩く。

 すると魔獣は口を開け、映像を幕に投影する。


「イカれてんのか!!!」

 映像が流れた瞬間ユウタの叫び声が。


「なんだ?さっそく仲間割れか、早く接続を安定させろ!」

「はい!安定しました……え」

 映像のノイズが収まった。

 そして映し出された光景にヘッドレス達は言葉を失った。


 なんとヨグはユウタを押して、罠に突っ込んで行くではないか。


「ふざけんな!」

「至極真面目です。ご安心を私の見立てではあの丸鋸は鋼鉄製、サトウ・ユウタの防御力では傷すらつけられません」

 そう言いながら抵抗するユウタを罠に向かって押し出し続けるヨグ。


「壊すなら聖剣で良いだろ!」

「良くないです。聖剣は威力が高すぎます。毒や病原菌を保有する罠があれば攻撃により漏洩しかねません。環境保全の観点からも推奨できません」


「環境保全?まあ確かに、それこそ国の危機だ」


「だからこれが良いのです」

「そうだなって、やっぱ納得できねぇぇ!」

 顔面から丸鋸に衝突するユウタ。


 ユウタの顔面は丸鋸を粉々に砕いた。


「うわぁぁぁ!あれ?全然痛くない」

「そうでしょう、私の計算では90%の確率で成功する見込みでしたから」

 ヨグはユウタを押しながら言う。


「10%引いたらおれ輪切り!」

「ステータスの基準などが不確かでしたが。これで臆せず進めますね」

 二人は丸鋸ゾーンを抜け突き進む。


「ちょ、臆せず進めてるのお前だけェ!」

 二人は次々と下層の罠を突破した。



「な、なんて奴だ……クソ!オレ様が1週間かけて考えた罠たちが!あの丸鋸ちゃん13号の刃は特注品、オレ様が鉱石からこだわって選んだのに!」

 ヘッドレスは拳を震わせた。


「情報が入りました!あの二人、パッとしない聖剣を持つのが勇者でヒラヒラした格好の奴は聖女とのこと!」

「つまり勇者を盾にして罠を突破しただと!?勇者の使い方おかしいだろ?!ふぅー、ふぅー、腹立たしいが、なに、まだ愛しき罠たちはたんまりあるんだ」

 ヘッドレスが笑う。


「次の階層はどうかな?たとえ勇者といえどあれは苦労するだろう」

 高らかに笑うヘッドレス、しかしすぐに俯いた。


「はぁー、かわいいおれの罠たちが、正面突破って……」

「ヘッド……」

 落ち込むヘッドレスの周囲に部下達が集まった。



ここまで読んで頂きありがとうございました!

今後も投稿していこうと思うので評価、コメントなどして頂ければ励みになります!

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