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52. 辰上家について

烏丸蒼白による武蔵多摩高校爆破の翌日。

当然ながら学校は当面休校となった。漆紀は昨日の夕方、彩那と小太郎を連れて夜露死苦隊のアジトだった廃墟へと赴き、世理架に学校での出来事と小太郎が仲間になった事を伝えた。

世理架は小太郎を指差して「ふざけるな」と言ったが、小太郎の佐渡での活躍を話すと渋々ながら世理架は小太郎の存在を許した。

漆紀はというと、この日は久しぶりに便利屋タツガミの事務所へとやって来た。夜露死苦隊の銃撃で荒れた室内は綺麗に補修され、宗一に代わって込木が経営をやっていた。

「込木さん、久しぶり」

事務所の扉を開けて、漆紀はパソコンと睨み合う四十代の男・込木に声をかけた。

「おお、漆紀君。中々顔を出さないけど元気だったかい?」

「まあ色々あったんだよ込木さん。俺は元気だけど……それより込木さん。俺、父さんの日記を読んだんだ。それで……」

漆紀は込木に、父・宗一の日記に書かれていた込木の過去について伝えた。

「なるほど。宗一さんの事を色々知ったんだね。確かに僕は、宗一さんに助けられた。あの状況なら、僕の事を殺してておかしくなかったのに」

そう言って込木はかつて宗一と遭遇した際の戦闘を思い返す。

「父さんが死んでから、経営ありがとう……込木さんおかげで、俺はちゃんと生活できてるし学校に通えてる……まあ、爆発しちゃったけど」

「子供がそんなことを気にしちゃあいけないよ、漆紀君。便利屋の収益から、充分な生活費は補償するから、安心してくれ。大学進学も目指すなら、それからも支えるさ。恩人の息子なんだから」

込木はそう語る。その表情や言葉に嘘偽りの気配など漆紀は感じなかった。

「ありがとう……実は、ニュースで見たと思うけど学校が爆発して」

「ああ、聞いたよ。つい昨日のうちに全国ニュースになったからね。大変だったね……」

「まあね。込木さんは、辰上家については何か知ってる?」

「ああ、確か宗一さんが誘拐された陽夜見さんと君を助けに行った時のことだね。あの時も遺言じみたことを残されたし、その詳細も教えられたよ」

そこで漆紀はここ最近抱いていた心配事を込木に問いかけてみる。

「いや、父さんが倒した辰上家の当主って……子供とか居たのかなって。居たとしたら、ひょっとすると恨みで敵対してきて真紀に危険が及ぶかもしれないと思って」

「ん~、そういった情報は辰上家の使用人筆頭だった夜野田さんからも聞いてないんだよね。多分、それは実際に辰上家に行ったケイさんの方が詳しいんじゃないかな」

「ケイ……多分、世理架さんの事か。俺、世理架さんのもとで魔法の修行付けてもらってるから、父さんと辰上家に行った時の事、詳しく聞いてみるよ」

宗一の日記の書き方からして、恐らくは日記にあったケイとは世理架の事であろうと漆紀はある程度の予測を彩那と共に立てていた。

「あの人、今は世理架なんて名前を名乗ってるのか……ところで漆紀君、その……世理架さんはお元気か?」

「多分父さんが若い頃からちょっと成長した程度の見た目だよ。見た感じは高校生か大学生くらいの見た目で」

「やっぱりあの人は人間じゃないんだなあ……ここだけの話、僕はあの人にとても惹かれてたんだ。こんな歳になっても気になってね」

「まー、あの人結構茶化したりするし、マジにならないほうが良いとおもうよ込木さん」

古い恋心を淡々と語る込木だが、漆紀は普段の世理架を考えて振り返ると込木に注意を促さざるを得なかった。

「とにかく、世理架さんに今日聞いてみる」

「え、僕の事を?」

「違う違う、辰上家の事をだよ! いい加減自分の年齢考えてくれよ込木さん! とにかく、俺はもう行くから。ありがとう、込木さん」

漆紀はそう言って事務所を出た。

__________________________


午後2時。

武蔵村山市、夜露死苦隊アジト跡の廃墟にて。

「辰上家のことだと?」

いつも通り魔法や戦闘の修行に来た漆紀は、世理架に辰上家の事について問いかけていた。世理架は漆紀達の休校の事を聞き、日中の修行にも付き合うことにしたのだ。

漆紀が話すその後方では彩那が魔法を駆使して、地面に置いた缶を狙って攻撃していた。

この日は小太郎が真紀の病室に行って、その身を守っている。病院では漆紀が頼りになる親友という事で話を通し、真紀にもそう話を通して傍に小太郎を置いている。

「父さんの日記を読んで気になった。辰上家に子供がいるなら、もしかすると俺や真紀を狙って報復しに来るんじゃないかと思って。世理架さんが、日記にあったケイって人なんだろ?」

「過去の名を口にしないで欲しいのだがね、まったく……確かにわたしはあの救出作戦の時に同行したし、辰上家の洋館の中にも入った」

「それで、結論を教えてくれよ。辰上家に子供は居たのか?」

「居た……女の子が一人、母親と一緒に縮こまってた。大き目のクローゼットに隠れてたんだ。それでわたしは見なかった事にして見逃したよ。宗一君に教えたら、きっと子供も殺すだろうしね」

宗一は非常に現実的で、必要ならば非情にもなれる人間だった。後々の火種を残すまいと宗一ならば辰上家の子供も殺す事だろう。

「その子供は……俺のこと恨むと思うか世理架さん」

「そんなことわかるわけないだろう。小さい頃のことだから、憎いという感情が明確に抱くことができないような年齢だぞ。今に至るまでどうかは知らない。ただ言えるのは、辰上家の子供は生きている。今もあの洋館で暮らしていると思うぞ」

世理架から聞きたい事を聞けた漆紀は、その上で辰上家の子供の事を深く考える。

(俺が小さい時に死んだ母さんだが、その原因となった辰上家の当主を憎いと思うかというと、イマイチ憎しみや怒りは湧かない……もう死んでるからだろうけど……辰上家の子供は、どうなんだろう)

「まあ、気になるならいっそのことこちらから辰上家の洋館へと行くのも手だよ。どうなるかはわからんがね。ほら、聞きたい事を聞いたなら君もととっと魔法の練習をするんだ! サボるんじゃない!」

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