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ガンギマリズム3 日常編  作者: 九空のべる(旧:ジョブfree)
第四章「世界が壊れる音」
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48. 烏丸蒼白の外道

爆発の瞬間から遡ること十五分前。

D棟屋上。

昼休みの教室から抜けて、漆紀は彩那と共にD棟屋上に来た。屋上は風が吹き抜けており、漆紀の鬼の角みたく纏めた前髪や彩那の肩まで掛かる髪が風で揺れる。

「なんだよ烏丸。個人チャットでわざわざメッセージ送って来て」

漆紀と彩那の居る屋上出入口の正反対の奥の方に蒼白は立っていた。蒼白のすぐそばには通学用のカバンが置いてあり、蒼白は楽しそうに笑んでいる。

そして密かに尾行してきた小太郎は、屋上出入口内部のドア横に隠れて静かに聞き耳を立てて様子を伺う。

「よお、辰上。ちょっと真面目な話があって来たんだ。そこの彼女さんにも聞いて欲しい」

「なんだよ、改まって。てか竜蛇は彼女じゃない、違う」

「まあいいんだそんな事は」

「ちょっと辰上君、そんな事はって言いましたよアイツ!」

「竜蛇もちょっと黙って。なんだよ烏丸。とっとと用件話せ」

「お前ら魔法使いだろ。んで、オレもさ。魔法使いなんだ」

「……」

「……」

魔法使いだろ、と蒼白が疑ってかかるが彼は漆紀と彩那が魔法使いだという決定的な証拠を提示しているわけではない。それゆえ二人とも沈黙を通す。

「もう今更隠さなくていいって。探偵使ってお前ら尾行させたんだ。お前らが魔法使ってる瞬間も探偵から聞いてるんだ。探偵のおっさん、魔法を見たってのに妙に落ち着いてたな。あんな存在あってはならないとか、後始末がとかブツブツ呟いてたよ」

「それを知って俺に何の話があるんだよ」

「簡単だ。お前さ、オレの仲間になれよ。オレみたいに魔法を使って賢く金を稼ぐんだ」

「魔法を使って稼ぐ?」

話が全く見えてこず、漆紀だけでなく彩那も首を傾げる。

「どういうつもりです烏丸さん。辰上君に何を」

「辰上、以前オレの家に遊びに来た時にお前に話したよな。オレの魔法……物を爆弾に出来るんだよな。物の総合的価値によって爆発の威力が変わるって……」

「……」

「ここ最近……っていうか一年半か二年くらい前から、各地で爆発事故とか爆破事件とかあっただろ」

「ああ。最近でも埼玉で爆発事故あったってニュースで」


「あれ全部オレがやった」


「「……は?」」

何を言っているのだ、と言いたかった。漆紀も彩那も、蒼白が何を言っているか自体は理解出来るが理由が理解できないのだ。

爆発事故や爆破事件がどれも蒼白の魔法によるものだというのなら、蒼白は大量殺人鬼という事になる。

「烏丸……何言って」

「魔法で爆破するから足が付かないからなぁ。爆破ってな、金になるんだ。ネットで匿名で依頼を受けて……まあ、おおかたライバル企業を蹴落としたい企業様とか、ヤクザとか暴走族とか、個人の恨みとか色々だろうな。取引場所で金を受け取る。んで、客によっては爆弾を渡してやって爆破タイミングだけ聞いてその通りに爆破したり、ある時は俺が直接爆弾を仕掛けたり、ある時は運び屋を中継してターゲットまで運んだり……まあ最初は緊張したが、今は手慣れてバイト感覚だ」

「バイト? 手慣れた? お前……何いってんだ?」

蒼白の物言いに理解を示せない。関係のない人達まで巻き込んで爆殺する仕事をしてバイト感覚と豪語する蒼白に、漆紀は微塵も理解など示したくなかった。


「だってさ。自分と関係ない人間の命とかどうでもいいだろ」


これまでのふざけた発言と、今の一言で漆紀の中で蒼白への信頼が消えた。

「なあ烏丸、ふざけてんだよ……な? クソゲーのやりすぎで脳みそまでクソになっちまったんだよな?」

「おいおい落ち着けよ。話は変わるが辰上、簡単な質問をしてやる。お前さ、太田が死んだ時はどう思った?」

唐突に話題を変える蒼白だが、何か意図があるのだろうと思い漆紀は質問に対して率直に思った事を口に出す。

「そりゃつれえよ、悲しかったさ」

「じゃあ次からは例えば……例えばの話だ。親しくない同級生の誰かが死んだら?」

「それはまあ、悲しいけど……」

「じゃあ近所に住む、何の交流もないご近所さんが死んだら?」

「それは……」

悲しい、と漆紀は言い切れなかった。

「じゃあ、どこかの国の戦争で死んでしまう兵士や民間人はどうだ?」

「……」

「わかっただろ? そういう事だ。人間誰しも自分にとって誰が大事かって勝手に命に値札貼ってんだよ。それはお前だってそうだろ辰上」

「違う……お前みたいに金さえ貰えれば見境なしに人を爆殺できるクソ野郎じゃない! お前がそんなクソ野郎だったなんてな!」

本当は蒼白の言っている事が尤もだと漆紀は思ってしまった。人は無意識のうちに命の価値を勝手に決めている。それは事実だから本当は否定など出来ないが、蒼白の物言いからはそれでも否定しなければならない何かを感じた。

「オレもさ、太田が死んだ時は悲しかったよ。友達だからな。でも、魔法使えないならまあ、死んでも仕方ないよなって……通り魔に対して何も出来ないんだからな」

「烏丸ぁ!」

「キレんなよ、うるさいだろ? 結論言うとな、オレからすりゃ関係ない人間全員どうでもいいんだ。だから、そんなどうでもいい人間巻き込んで建物爆破するだけで大金が入るとか最高すぎんだろ! なぁ! そうだろぉ! 一件70万とか100万だぜ? デカい依頼の時は300万とか貰った事あったなァー……っ!」

金額の多さを思い返すと蒼白は楽しそうに両手でガッツポーズをして身震いする。

「そんな大金が貰えるんだ。お前もオレの仲間になれよ。魔法で荒稼ぎしようぜ? なあァ!!」

そう提案する蒼白に対して彩那が一歩前に出て言い返す。

「魔法の悪用で社会を掻き乱して、お金を得て……それで何になるって言うんですか。もし私達があなたの家族を殺して、どうでもいい人間と吐き捨てても……同じことが言えますか?」

「あ?」

蒼白は頭の中で彩那の言葉を脳内で反芻すると、表情を変えることなく頷く。


「うん、家族そんなに大事じゃないしな。邪魔だし。ジジババとか親戚も死んだらむしろスッキリして喜んで駆け回るな。金がありゃ俺は一人でも生きれるし」


「コイツ……」

彩那は嫌悪感を覚えて歯ぎしりをする。漆紀も自分の友人がこれほど価値観の壊れた身勝手な人間だったとは思わず身震いが止まらない。なんの前触れもなく、カミングアウトの感覚で唐突に蒼白が本性を現したのだ。信じられない気持ちで満たされ、何よりも漆紀は信じたくなかった。

「そうだ、この話は一切漏れてないから安心しろよ。さっき言ったお前らの魔法を見たっていう探偵も……ちゃんと爆殺して始末してるからさ」

「烏丸ああぁぁ!」

「うるせえって言ってんだろ辰上ぃ!! オレはお前を仲間にしたいから本音で話してんじゃねえか。ちゃんと聞けよ馬鹿野郎!!」

漆紀は蒼白を睨み、蒼白は自分の考えを理解しない漆紀に対して難色を示し苛立つ。

「なんで魔法使いなのにわかんねぇーんだよタコが! お前仮にもなんちゃって進学校のこの学校に来れる程度の学力はあんだろう? そしたらオレの生き方が正しいってわかるだろうがよ」

依頼に従って誰彼構わず爆殺して大金を得て社会を掻き乱す。そんな身勝手な生き方を漆紀と彩那はどう考えても正しいとは思えなかった。

「正しいわけないだろ……そんなの! それにそんだけ爆破してれば、魔法だから警察にはバレなくても……魔法使いの組織にはいずれバレるぞ。そしたら社会を掻き乱す敵とみなされてお前が始末されるぞ」

「へぇー魔法使いの組織があんのかぁ……知らなかったなぁ。でもまあ、オレの魔法なら良い利用方法はいくらでもあるし始末なんてしたがらないと思うけどなあ。実験に戦争、なんにでも爆発ってのは案外有用なんだぜ? むしろ俺が魔法使いの組織でやばいヤツを始末する側に就けるかもなぁ!」

これだけ漆紀が爆破爆殺をやめる理由を提供しても一向に蒼白は改める気がない。

「それにな辰上、金だ。金があれば高校生活はウハウハだ、やりたい放題だ。金っていう物理攻撃があれば、いくらでも爛れた生活が出来る」

「おい烏丸お前……っ!」

「オレは童貞じゃない。そこはかとなく金持ってるアピールをしつつ、しっかり踏み出せばコロコロ女が堕ちること堕ちること……金があるから相手が孕んでも堕ろし放題だからなあァ! まあ堕ろす金もったいないから相手と相手の親ごと爆破して大体は解決だけどな。なあたまんねぇだろオイ!! 高いステーキ肉や寿司を食って豪遊に、大金任せの気軽なセックス……なあァ? オレの歩んでる人生のどこに間違いがあるってんだ? オレは楽しいし幸せだぜ。こんな幸せな生き方のどこが間違ってる?」

もはや倫理観が無いと言える蒼白の言動の数々に漆紀は憤りで体が満たされ、右手に濃霧を起こして村雨を取り出す。

「そんな選択肢が実現可能だとしても……それは人として取っちゃいけない生き方だろ!!」

「なんだよ、それがお前の魔法か? 刃物かぁ、まあいつでも取り出せて消せるなら警察に絡まれても凶器が見つからなくて無罪だなぁ。お前ヒットマンになれるぜ? 殺しで荒稼ぎしねえか辰上?」

「断る!」


「あとさあ……そこの、宗教女ぁ、なんつったっけ? た、たつ……竜蛇? お前さあ、ヤらせろよ」


「は?」

唐突に話を振られた彩那は蒼白の言っている言葉の理由が理解できなかった。

「お前毎回教室に来ては長々ワケわかんねぇカルトの説教するけど、その間ずっとお前のおっぱいガン見出来たのだけは最高だったなあァ……」

「っ!!」

彩那は即座に両腕で胸を押さえつけて蒼白をキッと睨む。

「魔法って言う特殊な力を持ってるから、何をしても許されるとでも思っているんですかあなたは! そんなワケがないでしょう! 今は楽しくても、同じことの繰り返しで……いつか虚しくなりますよ! そんな渇いた人生は!!」

「お前らも正直になれよ! 魔法を持ってるなら、オレのようなことが可能なんだ。可能ならやるべきだろう? 他人の人生踏みつぶして大金を得て、面白おかしく気持ちよく過ごさねえか宗教女?」

彩那は「ぺっ」と唾を吐き捨てて蒼白の考えには否定の意思を断固として見せる。

「お前んトコの宗教にいくらか万札寄付してやるからよぉ、やらせろよ宗教おっぱい女がよおォ!」

漆紀の中で今まで蒼白に対して抱いていたクソゲー好きな気のいい友人というイメージが完全に崩れ去った。今目の前にいる男は、倫理観のない邪悪なクソ野郎にしか見えなかった。

他人の人生を踏みにじり爆殺し、大金を得てやりたい放題。明確に言語化は出来なかったが、漆紀は蒼白の所業が自分の今までやってしまった事よりも悪に当たる許されざる行為の数々だと確信した。

「お前ほんとスタイル良いよなあァ? 辰上、ソイツとヤったか? なー?」

「いい加減に黙れよ烏丸!」

「おいおい、まだ童貞なのかよ辰上。信じられねえぞ、そんなエロボディと関わり持ってるのによぉ。ま、いいや。お前アレが不能なんだな。なるほどなるほど」

「烏丸あああぁぁぁぁ!!」

遂に耐え切れず漆紀が蒼白へと駆け出すが。

「動くな! 既に学校に爆弾は仕掛けてある……オレの意思でいつだって起爆出来るんだよ。動くなよ、なあァ?」

「学校に爆弾しかけたのか? どこまでふざけてんだテメェは!!」

「この畜生!!」

漆紀と彩那が蒼白へと非難の声を浴びせるが、蒼白は首を真横に振って「わかってないな」と言わんばかりの態度を示す。

「これは依頼なんだよ。この学校を爆破しろってな。依頼の期限は今月中、まあそろそろ達成した方がいいなぁって思ったんだよ」

いつでも学校を爆破できるという蒼白。この男はここ数年で自身の魔法に目覚め気付き、それを利用して爆破を仕事としてきた。それが本当ならば、漆紀は蒼白の言っている事がただの脅しではなく事実なのだと嫌でも理解出来てしまう。

そして一つ、漆紀の中である疑問が浮かぶ。それは自身が春休みに関わってしまった、一つの爆破事件。

「烏丸。春休みの頃、お前……夜露死苦隊の爆破依頼とかって受けたか?」

「一々終えた依頼なんか覚えてるわけねえだろ。でもちょっと待てよ」

蒼白はスマホを取り出し、匿名性の高いメッセージアプリの履歴を見返すと。


「ああ、あったあった。夜露死苦隊の爆破、確かこれは便利屋を中継して送ったな」


蒼白の言った依頼は間違いなく、漆紀が夜露死苦隊と萩原組に因縁を付けられる原因になった爆破事件のことであった。

「……テメェが原因かああああぁぁぁぁ!!」

蒼白を殺す。そう意思が固まった漆紀は瞬時に蒼白を殺す方法に出た。霧を起こす撹乱は霧を出すのに時間を要する。ならば即刻蒼白を殺せる方法はこれだ。

漆紀が村雨を構えて体を逸らし、槍投げの要領で蒼白へと投げつけた。村雨を心臓に命中させることで蒼白を刺殺し、爆破をさせまいと考えたのだ。だが蒼白は遅れずにこれに対し何かものを投げると。

「爆!」

そう唱えると、投げた何かが爆発して村雨を破壊してしまう。

決定的な出来事だった。これまでは蒼白はただ口だけで「魔法が使える」と言っており、本気の演技によるドッキリの可能性が僅かながら残されていた。本当に僅かながらだが。

しかし、蒼白は魔法を使って見せた。この事実が、今まで蒼白が語ってきた事が冗談でも嘘でもなく紛れもない事実だと決定づけた。

「あ~あ、やっちゃったねェ~……やっちゃったねぇー辰上!! まあどの道依頼だし学校は爆破するんだけどね」

そう言いながら蒼白は足元のカバンを持ち上げて肩にかけて移動の準備をする。

「やめろ烏丸!!」

「爆!」


そう唱えた瞬間、A棟とB棟の校舎が連なるように大爆発を起こした。


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