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ガンギマリズム3 日常編  作者: 九空のべる(旧:ジョブfree)
第四章「世界が壊れる音」
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41. 宗一と陽夜見・その1

2005年 12月7日

辰上家へ突入した際に言夜にやられた怪我も治ったし、日々健康だ。

ただ、やはり心配なのは言夜が死に際に放ったあの呪い。

奴は明確に「契約」という言葉を口にしていた。あの時、俺が固有魔法・理論武装に対して契約したのと同様に、ヤツもまた何かしらの条件を付けて理論武装と契約して陽夜見に呪いをかけた。

もって数年で死ぬ呪い、ヤツはそう言っていた。数年が何年かはヤツ自身も把握出来てなかっただろう。なにせ死に際に魔法と契約を交わしたのだ。

それにヤツ自身、固有魔法・理論武装に関しては俺よりも才能が上だ。俺のように「二度と理論武装が使えなくなっても良い」という不可逆で決定的で強烈な条件と同じかそれ以上のものでヤツは理論武装と契約したのだろう。

そうすれば、もはや理論武装の粋を越えた、単なる言葉による攻撃で相手を害することもできるのかもしれない。

その結果がこの呪いだ。

呪いという物は魔法には存在しない。ヤツは呪いと表現したが、毒に近いだろう。

ヤツが理論武装と行った契約によるが、恐らく陽夜見の呪いを解く事は絶望的だろう。

あの状況、あの怪我、言夜は自分が死ぬと分かっていた。ならば自分の命と引き換えぐらいの破格の条件で契約して陽夜見に呪いを放ったのではないか。

あれこれ考えるが全て推測だ。

だがヤツのあの時の表情。アレを鑑みるにそれぐらいしか考えられない。俺以上に重い内容による魔法との契約。そうでなければ、言葉だけで相手を最終的に殺す、呪いなんて芸当は成しえないだろう。

今のところ陽夜見は健康だ、病気や何かに蝕まれてはいない。

だが油断は出来ない。ヤツが呪いなどと呼ぶべきものを陽夜見にかけたのは確かな事実だ。色々情報収集した方が良いだろうか。


2006年1月6日

漆紀の成長が喜ばしい。普通なら立って歩くには何かに掴まらないと無理な歳のはずなのに、この子は何にも掴まらず自力で歩いている。勿論呆気なく転ぶときはあるが、部屋だから大怪我などはしない。

この子は生まれが特殊だ。普通の子供と違うから、既に一人で歩けるのだろう。

便利屋稼業でそれなりに依頼があって帰りが遅くなる日もあるが、出来るだけ早く帰ってこの子の面倒を見たい。

既に夜泣きもないし、ぐっすり眠る。俺のような人を殺して金を得てたクズとは違い良い子になるだろう。

____________________________


「竜蛇、なんかここからずーっと俺と母さんの様子の話ばっかりみたいだし飛ばすよ」

「まあ、完全に父子手帳と化してますもんね」

「真紀が居るってことは、真紀が生まれるまでは母さんはちゃんと生きてるわけだからな」

そう思って漆紀は今手にしている日記を本棚に戻して、少し飛ばして別の日記を取り出して読み始めた。

____________________________


2006年9月10日

今になって思うと、ありがたい事だ。

不妊はつらかったが、ようやく実子が出来るのはなんだかワクワクする。陽夜見は日に日に大きくなるお腹を見て不安もあるがそれよりも愛おしさが勝ってると言う。

だが、どうしても俺には拭えない不安がある。異界であれこれ聞いてみたが、呪いなどという異常な魔法は中々なく、固有魔法でそういうものを再現できる使い手がいるかどうかといった具合なのだそうだ。原始魔法や精霊術に召喚術……そういった通常の魔法ではまず呪いなどと呼ぶべき効果のものはないのだ。

したがって陽夜見にかかっている呪いは解除出来ないのだろう。

どうすればよいのか。このまま母子共に健康なまま、生まれて来てくれるのだろうか。

どうしてもヤツの残した呪いが、俺達の日常に黒い影を落とすんだ。


2006年11月14日

ようやく娘が生まれた。

俺はずっと陽夜見の傍に居た。その方が絶対に安心するはずだからな。

娘の名前は真紀だ。陽夜見は汗だくだくで心底疲弊していたが、それでも笑っていた。

俺の脳裏にいつも過っていた最悪の展開は起こらなかった。それは母子共々出産の瞬間に呪いで死ぬということ。

これだけは起こらなくてよかった。

これから陽夜見はしばらく安静に休まなければ。とはいえ栄養もしっかり摂らなければならない。これから数週間、仕事の方は込木に代わって取り仕切って貰うのもアリかもしれない。アイツは最古参で慣れてるだろうしな。

それに俺は一応便利屋タツガミの社長ってことだからこれぐらいの権力乱用は許してくれるよな?


2007年2月10日

しばらく日記を書けなかったが、それはそれだけ真紀と漆紀の世話と便利屋の仕事が大変だからだ。

真紀はまだ夜泣きをするが、漆紀はそんな真紀を見ても「げんきげんき」と言う。漆紀はもうしっかり言葉を話せるようになった。簡単な言葉は分かる。

真紀も夜泣きをしなくなるまでは油断出来ない。だが、心配なのは陽夜見の顔が少し青白い事だ。

確かに体調自体は健康に戻っている。体温も平熱だし生理も。

だが、どこかいつも顔色が青白いのだ。本人は健康だと言うし、実際動きも健康なソレだが顔色がそうではないのだ。

これがヤツの残した呪いのソレなのだろうか。

真紀は赤ん坊らしく赤く、元気で健康。ヤツの呪いの兆候など微塵も見受けられない。

そうなると、やはり心配なのは陽夜見だ。

呪いが解けないとしても、それだってヤツのハッタリや口から出任せかもしれないのだ。

あの時ヤツが陽夜見に放った黒い光も、見掛け倒しの何の効果もないただの光かもしれないじゃないか。

なんにせよ、俺はこれから後悔しないように日々を噛みしめて生きてかなきゃいけない。

子供たちのためにも。

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