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ガンギマリズム3 日常編  作者: 九空のべる(旧:ジョブfree)
第三章「宗一の記録」
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36. 宗一の過去・その12

2004年 12月4日

依頼、という名目で面倒な奴がやって来た。そいつは使いなのだが、夜野田と名乗っていた。なんでも、俺の事をずっと何年もかけて探していたのだとか。

この前の射撃大会で俺の苗字「辰上」が異界の世間に認知されたことで、夜野田は俺の存在を知ったようだ。そして俺の居場所を必死に調べて便利屋に来たのだ。

俺の姓である辰上……その実家についてあれこれ語った。

夜野田によると、日本国内の魔法使いの家でもかなり家格のある家らしく、魔法そのものは当然秘しているのだとか。そして当主がもし俺の事を知れば、俺を始末しようと狙ってくると警告しに来たのだという。

夜野田は辰上家の人間だが、俺に接触したのは捨てられたとはいえ直系の子であるからだそうだ。それを始末というのはどうかと思ったがために辰上家に内密に俺に警告に来たのだとか。

確かにそういう事であれば警戒した方が良いのだろう。

とはいえ唐突な話で考えがまとまらない。ひとまず連絡先を交換し、夜野田とは別れることになった。

辰上家、俺の本来の実家。全く今まで気にもしなかった俺のルーツが、俺を消しにかかっているというのだ。これから身の振り方を考えなければ。


2004年 12月10日

養子をとる案は陽夜見も本気で考えてくれた。仮に養子を取った後に実子が出来ても、変わらず養子も実子も家族として愛せばいい。

陽夜見と相談したが、養子を取るなら特殊な生まれをしている子を助けたい。俺は魔法使いだ、普通の人では面倒が見れない、そんな子を助けてやりたい。

探してみよう、各地を回って。


2005年 1月28日

千葉県佐倉市の孤児院に、生後半年ほどの赤ん坊が居たのだが、この赤子の出生がかなり特殊なのだ。なんでも印旛沼の竜神伝説にある竜の腹が納められている竜腹寺で、ちょうどその竜の腹と言われる遺物が納められてるお堂の中で赤子は泣いていたんだという。

寺の僧はその場であやし、混乱しながらも孤児院に駆け込んだんだと。

そして驚くべきことに、先程の竜腹寺の遺物なのだが赤子のいた場所に置かれていたそうだが、遺物が綺麗さっぱりなくなっていたのだ。まるで、その竜の腹の遺物が赤子に生まれ変わったかのように。

これだけではない、竜の遺体を納めた寺はあと二つある。そのうちの一つの竜尾寺からも遺物がなくなっていたと聞く。

この子は冗談抜きで、竜王の転生体の可能性がある。そうなれば普通の家庭では育てることなどできないだろう。

魔法使いの俺でなくては。


2005年 2月11日

例の赤ん坊を養子にした。あの子が寺で見つかったのは2004年6月7日。この日をあの子の誕生日とする。

あの子の名前も陽夜見と考えた。

名前が無かった、名無き者。誕生日の数字は漆。人の歩むべき道を行って欲しいという意味で紀の字。

漆紀(ななき)

名前がなくとも、歩むべき道は自分で見つけ自分で行ける、そんな者になって欲しい。

________________________


「養子……そうかよ、父さん」

漆紀は自分の出生について納得出来ないししたくなかった。血の繋がりに固執するつもりなどないが、自分の生まれが明らかに人間のソレではないこと。

父の記述で本当に自分が竜王だと確定してしまったこと、これについては言葉が出なかった。

「竜王様はやっぱり竜王様でしたね。それも、他の八大竜王なんかと違う、竜そのものの転生体とは……八大竜王でないならば、竜王様は外なる竜王ですね」

「なあ、竜蛇。こういう時ぐらい竜王様って言うのやめてくれないか。俺自分の生まれについてかなり頭を悩ませてるんだが。外なる竜王ってなんだよ?」

「竜理教の竜王である八大竜王に数えられていないものの、それに並ぶ絶大な力を持つ竜王です。アジアの竜のイメージである長大な竜ではなく、西洋の悪魔的イメージのドラゴンなんかも外なる竜王と呼ばれます、竜理教では」

「……俺、人間じゃないんだな。毎日飯食って、寝て、歩いて、学校行って、社会に生きてて……なのに俺、人間じゃねえっての? これで? 健康診断とかレントゲンで人間の骨格と内臓してるのに、俺が人間じゃないって?」

猛烈な疎外感が漆紀を襲う。手を何度も握って、自分の体をよく見る。こんなに人間の体だというのに、漆紀は人間ではないというのか。

「続き読みましょうよ。竜王様っていつも呼んでますけど、ただの愛称ですよ。私はあなたのこと、変わらず人間だと思いますよ?」

「……」

漆紀は真顔で日記の続きを読んだ。

________________________


2005年 9月18日

大変な事になってしまった。俺の存在が辰上家にバレたと夜野田から連絡があった。なんでも当主が道楽で魔法射撃大会に行ってみるかと考え、前回のランカーを調べたら俺の名前があった事で気付いたのだ。

軽率だった。世の中いくつもの競技や大会があるわけで、それは異界でも同じだ。日夜様々な大会や研究会なりなんなり地球同様にあるのだから気付かれるはずはない、そう思っていた。認識が甘すぎた。

とはいえバレたからには恐らく俺の命を狙って何らかの動きがあるはずだ。便利屋へ襲撃に来られる可能性もある。なんなら家族を人質に取るべく強襲もあるかもしれん。

陽夜見と漆紀はこの間、陽夜見の実家に帰そうと思う。勿論俺の有り金の限りを使って警備させる。魔法使い相手じゃどうしようもないだろうが、物量は正義だ。


2005年 9月19日

しくじった。陽夜見と漆紀を実家へ送る時に襲撃を受けた。俺が運転してるバンを横から突っ込んで来て横転させ、俺が立て直す前に陽夜見と漆紀を拉致しやがった。

勿論その場で応戦したが、間に合わなかった。非常にまずい、人質を取ったヤツがどう行動するかなんて簡単にわかる。夜野田だけが頼りだ。あとはケイくらいか。

こんな日記など書いてる場合じゃないが、これはいつ死んでも大丈夫なようにと遺書の意味合いもあって今まで書いてきた。

陽夜見と漆紀を絶対に助け出す。夜野田に手引きさせて、やつらの住処を叩く。

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