33. 宗一の過去・その9
1996年 9月21日
今日は天川を連れて渡良瀬遊水地に行った。地図を見た限りは大したものはないが、その土地の立地や地理関係が面白いから行ってみようと天川が希望してきた。
遊水地の真ん中の島に着くと、池の真ん中の島ということで珍しいものに喜んでいた。俺にはあまり良さがわからないが、周りが見渡す限り水というのはなんだか落ち着く。
1996年 9月25日
今度は神奈川県の三浦半島に行きたいと言うので、文句は言わず連れて行った。神奈川ならば横浜とか、横須賀とか、あるいは鎌倉とか江の島当たりの湘南地区に行くのが普通の観光だと思うのだが、こいつは定番の場所にはあまり行かないようだ。
今回の外出も渡良瀬遊水地の時どうように変わった場所に行ってみようというものだ。
三浦半島の南端にある城ヶ島にも行った。城ヶ島灯台近くの店はどこも三崎マグロとかいう特産品を推していたので、二人でマグロ丼を頼んで食べた。
メシに関しては文句なしに旨い。天川は地理も海風も楽しんだ様子だ。
1996年 10月3日
千葉県の山間部をひたすら地図に沿って走らされた。フロンティア地区は行けないぞと念を押したら、天川は素直に従った。
フロンティア地区ギリギリの場所に名所があるらしく、そこにも立ち寄った。名前は「濃溝の滝と亀岩の洞窟」というらしい。
こんな景観が海外ではなく日本にあるのかと、俺自身驚いた。というかそこまでの道に見覚えがあったが、多分ここは俺が以前依頼で武装市民勢力から解放した地域だ。
自分のした仕事で、後々良い思いができたというのは少しだけ感慨深かった。
1996年 10月9日
今日は栃木県の足利市まで行った。日本最古にして日本初の学校があるからそこを見に行くと天川が言い出したのだ。
車を長々走らせて着いたが、足利学校という名前の学校なんだそうだ。戦国時代には既に存在した学校なんだそうだ。確かにそれはすごいだろうが、歴史はあまりよくわからないから凄さも大雑把にしか感じない。
1996年 10月11日
大学の講義があった。天川の取ってる講義はもう趣味の範囲のようで、教授の言い回しに時々笑いを覚えていた。俺は何が面白いかわからなかった。そう天川に伝えると、天川は俺に教養がないからユーモアとやらが理解できないんだと言い切った。教養があればユーモアとやらがわかるんだろうか。
1996年 10月14日
最近天川が関東以外の珍しい場所にも行きたいと言い始めている。とはいえ、仕事の都合もあるが天川の両親が日帰りで帰れない場所に関してはきっと許さないだろう。
それにボディガードは俺一人だから必然的に旅行となると俺と天川の二人きりになる。これは人の親なら当然嫌がるに決まっている。
とはいえまた危険地帯に行きたがっても困る。
何か違う発想が必要だ。違う発想が。
1996年 10月17日
良い方法を思いついた。天川に新たな趣味を植え付けるしかない。なにか色んなことを一緒にやってみて感性に響く趣味を見つけてそのままやらせる。関東を出ずに、天川を危険地帯に行かせず満足させるにはこれしかない。そうとなれば天川の説得に行かなければ。
1996年 10月18日
説得がうまくいった。やらずに嫌うより、せっかくの人生なのだから色々試してみようと言った。そう言うと思いのほか俺の考えに食いついてきた。手始めにスポーツ系の趣味から色々試してみるらしい。俺も一緒にやってくれるならやるということだった。
この調子だ。足止め程度かもしれないが、もしこれでうまく行けば天川の両親の意向に沿ったまま天川を大人しくさせられる。
1996年 10月20日
体験でテニスとボウリングをやってきたが、テニスについてはあまり良い感触ではなかったらしい。ボウリングについてはやはり娯楽的面が強いからか、満足感は得やすいようだ。これからも他にハマれるものはないか試していくようだ。
1996年 10月23日
サイクリングと卓球をやった。サイクリングはいい景色とかがないと続かないなと本人が残念そうに言っていた。卓球は上手く打てた時は楽しいが、力加減を我慢しながらやるのがなんだか楽しくないとのこと。
また別のスポーツを試してみなければ。
1996年 10月26日
今日は一日ダンスをやった。当然俺もやったわけだが、こんなものには中々馴染めず終始ぎこちない動きを続けていた。そのせいか何度か天川に笑われたが、彼女の方は少し楽しそうだった。
1996年 11月4日
スポーツといっても戦う方向のものもやってみることにした。今日はボクシングと剣道の体験をやった。まあやはり戦闘ともなればかなり緊張はするし今まで以上に疲れた様子ではあった。それを上回る危険地帯にも何度も行ってるくせにこれで疲れるとは。
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「なんかいい感じに楽しんでますねこれ。でもどっかでお互いにズレとかが判明すると思うのですが」
「母さんなんでもやってみたんだな」
「私としてはどこでズレが爆発して喧嘩になるかが楽しみですよ」
「ひどい楽しみだなオイ」
彩那がいつになくあくどい笑みを浮かべ漆紀は思わず首を横に振った。
「ま、続き読めばわかりますよ。ここから先はずっと色んなこと試行錯誤する描写ばっかりですし、飛ばして続き読みますね」
「ああ」




