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ガンギマリズム3 日常編  作者: 九空のべる(旧:ジョブfree)
第三章「宗一の記録」
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31. 宗一の過去・その7

1996年 7月9日

今日は危なかった。ワイシャツにネクタイを付けて会社員らしい格好だが、顔つきが明らかにヤクザの連中が天川を連れ去ろうと腕を掴んでいた。車に連れ込まれる前に男の一人を殴り倒し、車に乗り込んで逃げようとする片割れも運転席から引きずり出して拳銃を突き付けたが、高い格闘技術で抵抗してきた。かなり苦労したが、なんとかその片割れを地べたに組み伏してやった。拳銃をもう一度突き付けて尋問を始めた。

あいつらは雇われにすぎず、雇ったのは君津電産の御曹司だそうだ。

その場で天川もそのことを聞いていたが、君津電産はこの前の見合いの相手だったというんだ。

俺はわからなくなった。あの見合いの時に天川の態度がそれほど逆鱗に触れたというのか。

俺はその場のありもので男二人を縛ってそいつらの車に乗せ、俺はその車で天川の邸宅に向かった。こいつらのことを報告せねばと。

実際に天川の邸宅に着いて、その二人の身柄を天川の両親に突き出して尋問した内容を話すと酷く驚いていた。

天川の両親はよく仕事をしっかりしてくれたと感謝していたが、当の天川は拉致されかけたというのに既に落ち着いた顔をしている。本当に神経の図太い女だと思う。君津電産については対処を変えると天川の両親は言っていた。おそらく取引などもやめるだろう。


1996年 7月10日

相変わらず天川が大学に行くと、俺も紛れて講義に参加する。最近は文系の講義ならある程度分かる部分もある。歴史とか社会なんかだと学のない俺でもある程度感覚でついていける。


1996年 7月16日

最近やたら天川との距離が近い。いや、ボディーガードとしては近くにいてくれた方が守りやすくて仕事が捗るが、なんだか近い。

この前の拉致未遂があって、危機感を覚えたのだろうか。いや、それはないな。相変わらずサークル活動感覚で危ない場所に首を突っ込む。

何か、ハッタリや詭弁、嘘でもいいからこいつを騙して危険な場所へ行くのをやめさせる方法はないだろうか。学のない頭で色々考えてみるしかない。


1996年 7月27日

天川の行動を制御する方法、良いヤツを思いついた。俺はあくまでも天川の身を守るという仕事を全うするまでだ。天川の身を守るためなら、本人の心はどうあろうと関係ない。

名付けて、恋愛関係を利用して危険な場所から身を守らせよう作戦。うん、だいぶ酷い名前だ。

まあ天川にあれやこれや大事だから危ない場所にいくなと、なんとかして口説く必要がある。勿論本気で付き合うわけがない、それは依頼人の思う「守る」に反する行動になる。

とはいえ羞恥を殺して、直球に好意がわかる、それでいて粋の良い言い回しをしなければ上手く口説けないだろう。

まずはもう少しあれこれ時間を過ごすことだな。というか、ふと気になったのだが天川は友達とかいないのか?


1996年 8月2日

ひたすら暑い。暑い日々が続くが、屋内設備などで涼しく過ごせる場所に行って天川と色々見て回った。買い物は勿論ひたすら俺が荷物持ち。

込木のヤツから聞いたが、もし本当に恋愛関係にするのならば恋愛関係にしたい行動を見せたり、それを前提とした行動をした方がダイレクトに好意が伝わると言っていた。込木のくせに色々それらしいことを言いやがる。

そのためにキラキラしたものが好きだと嘘を言って、見てみるだけと言ってネックレスや指輪といったアクセサリショップを見たり、自宅で良い道具がなくて困ってると言いつつ家具や調理器具の店なんかも見た。どれも恋愛関係に至ったら使ったり必要そうな要素のある店だ。これでアピールにはなっているだろう。

少しずつだ。焦るな、少しずつそれっぽくしていき天川の無茶ぶりをやめさせなければ。


1996年 8月16日

今日は非番。ボディガードに基本的に非番はないのだが、今日は非番。

天川が体調を崩して自宅で寝込んでいる。こういう時にそれとなく熱さましなど必要なものを届けるのがやはり良いのだろう。


1996年 8月24日

また天川は飽きもせずゴーストタウンへ探検とか言っている。小学生のガキかと言いたくなるが、もうこれは天川の趣味なのだろう。

だとしても危険地帯で銃撃戦に巻き込まれたり襲撃を受けて死なれては本末転倒。そろそろここいらで関係を一転させたいが、何か良い案はないだろうか。などと思っていると脳みその中で名案が炸裂した。

そうだ、あるぞ。速攻で思いついた。どこか景色がすごく良い場所に連れて行って、それっぽい雰囲気でそれっぽいこと言ってなんだかんだあんだほんだで関係を一転させよう。

これしかない。タイミングを見定めなければ、場所も色々と調べなければ。

__________________________


「父さん……えぇ?」

「あー……なんていうか」

「わかってる。結婚詐欺師の努力みたいだよな」

「ええ、はい」

漆紀と彩那はなんとも言いにくい空気感に包まれ、お互いに話を切り出しづらい。

「まあ、父さんは仕事を優先して母さんの趣味よりも本人の命を守るために手段を択ばなかったって事で……というか、竜蛇からしたら、女の目線からしたらこれってどうなんだよ?」

「自分ではうまくやってるつもりのお父さんが痛々しいです。まあでも表面上ではお母さんの方は思惑を知らないのでしょうし、もし全ての事情を知ったら……なんだかんだありがたいとは思いますけど」

「うーん……生きがいである趣味と本人の命……天秤、難しいな」

「じゃあ続き読み上げますよ」

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