26. 宗一の過去・その2
「なんだよこれ……」
漆紀は自分の父の日記を読んで言葉に困ってしまった。
高校入学の記述があることから、宗一が漆紀と同じ十代の頃の日記であることは確かである。
「何を読んでるんですかー?」
背後から彩那が顔を覗かせてくる。
「うわあ、竜蛇!? いつから後ろに!」
「今来たばっかりですよ。なんですそれ?」
「父さんの日記だよ。気になって見てみたけど、なんていうか……思ってたより荒れてるっていうか、殺伐としてて……」
「えーちょっと見せてください」
彩那も宗一の日記を漆紀同様に黙々と読み進めるが「うわあ」という声を漏らしつつ引き攣った表情を浮かべる。
「なんですかこれ。大抗争時代の貴重な資料じゃないですか。あの時代で戦いに参加した人って、死人の方が多いからこれ貴重ですよ。そんなガンガン戦って生きてるとか凄いですよ」
「そうなのか?」
「そうですよ。日記だから戦闘の詳細な状況まではわかりませんが、銀行強盗のとことかSATが出てきたってしれっと書いてますけど、かなりまずい状況ですからね?」
「父さん……俺の行動とやかく言えねえじゃん。孤児院に居たとか、知らなかったよ……でも、孤児院の院長と子供たちがヤクザに……」
日記だけでは推し量れないが、この時の宗一の心情はいかに沈んだものであっただろうか。因果応報、結果だけ言えばその通りだろう。
「日記、まだ続きあるじゃないですか」
「ああ。読んでみるか」
漆紀は気を取り直して日記を読み進めた。
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1986年 7月8日。
もう一度孤児院へ行くと、警察が取り調べをしていて封鎖していた。
雨も降っているし江戸会の店へ戻ろうと思ったが、中学生ぐらいの女が俺に話しかけてきた。オヤジの世話になったし、世話もしたというのだ。
世話になったはわかるが〝世話もした〟ってのは引っかかる。俺に話があるっていうから暇だし付き合ってやることにした。
だが、正直話に付き合わない方が良かったかもしれねぇ。頭の中がぐちゃぐちゃだ。
あの女は〝ケイ〟と名乗っていた。
俺の生業を院長との会話で察していたようで、説教垂れるつもりかと言ったら「違う」と否定した。なんでもこの世の中には魔法というものが実在するだなんて言いやがる。女子が好きそうなオシャレな戯言だと思ったが、俺の目の前で手のひらで小さな火を出して見せやがった。手品なんかじゃない。
これから先、仕事で戦い続けるなら普通の銃や射撃センスだけじゃ生き残れないから俺に魔法を教えるって言いやがった。
正直怪しい。おかしなカルトの催眠かなにかじゃねえかとも思うが、俺も銃と爆弾だけでは限界を感じてる。次々出てくる敵組織の組員や警察連中、武装市民勢力や場を引っ搔き回したがる暴走族……敵の数が多く、銃と爆弾では倒しきれない。
もうどうにでもなれ。もし俺から奪おうものなら、ケイとかいう女……魔法が使えようが殺すだけだ。




