25. 宗一の過去・その1
1986年 4月5日
高校入学早々に喧嘩をやっちまった。ロクに事情を知らねぇ粋がる馬鹿がオヤジを馬鹿にしやがるもんで、鼻っ面を殴り飛ばしてやった。勿論、教師どもに呼び出されるハメになったが小学の頃から喧嘩ばかりの俺からしたら奴らの身のねぇ説教など屁でもねえ。
それに俺は、人を殴る程度でビビれる立場じゃない。クソヤクザにはならねぇが、やつらのもとで今日から俺は傭兵になる。
手始めに江戸会の傭兵として、暗殺に抗争、幹部警護をやることになる。オヤジはどうせガタガタ抜かすんだろうが関係ねぇ。俺は元々家族がいねぇ天涯孤独。何も持ってねえなら、赤の他人をぶち殺してでも幸せになってやる。
1986年 4月7日
銃の扱いは簡単なもんだが、拳銃だけで戦うのは無茶苦茶だ。敵の組はマシンガンにロケットランチャー、なんでもアリでぶっ放してきやがる。
だから敵を撃ち殺したあと、そいつの武器を奪ってやった。あの激しい戦場だ、武器を取るぐれぇバチは当たらねぇだろうよ。
生きた心地がしねえもんだな、戦場って。
1986年 5月15日
敵との戦いには慣れてきた。テレビじゃ全国でヤクザと警察が起こしまくってる銃撃戦のことを大抗争時代だとか言ってるが、確かにそう呼んでもいいだろうな。
相変わらずうちのオヤジはどこに行ってるんだとか、何日も外に出っぱなしで何をしてるんだとか説教抜かしやがる。もう俺はテメーでなんとかやっていけるってんだ。
もういつどこでドンパチ起こるかわからねえから、拳銃と爆弾を絶対持ち歩くようになっちまってる。この調子で金をためて、俺は独立した傭兵になってやる。
1986年 5月27日
オヤジがギャーギャーうるせぇから孤児院の他のガキ達に金をバラまいてやった。そしたら「どこで手に入れた金だ」とか余計に問い詰めてきやがる。どこでもいいだろ、これで金が入って素直に喜べってんだよ。
傭兵として独立すんにはまだ金が要る。もっと戦わねぇと。
1986年 6月13日
今日は銀行強盗の仕事だった。組員の連中と銀行に突入してそそくさと金を詰めて、警察と戦うことになった。何人か仲間が撃ち殺されたし、SATとかいう連中も出て来やがった。あいつら銃が全然効かねえし爆弾でようやく殺せた。
このまま無茶な仕事ばっかりやってたら身が持たねぇ。学校の方も相変わらず粋がってる馬鹿なヤンキーばかりだ。どうせ銃も持ってねぇし人も殺せねぇ癖に粋がりやがって。
1986年 6月17日
学校の馬鹿野郎を殴り倒したが、オヤジが謝りに行くんだとか言った。いい機会だと思って、俺は金を持ってオヤジと一緒に謝りに行ってやった。
馬鹿の家に着いたら、そいつの顔を札束で殴ってやった。悪かったな、これで臭い口を閉じろって言ってやったが、オヤジはキレるし相手の親と馬鹿は泣き始めやがった。うるせえんだよ黙って許せよ馬鹿が。
1986年 6月20日
オヤジにヤクザと仕事してることがバレた。殺しや撃ちあいをやってるまではバレてないが、何かしてることは知られちまった。早くヤクザと手を切れとオヤジが言い出すが、もう嫌だった。
俺は自分の力で金を手に入れ幸せになる、そう突き付けてやった。もう孤児院に帰ってたまるか。俺は銃の扱いだって上手くできるし、命中率だって良いんだ。
しばらくは江戸会がケツモチやってる店で寝泊まりすることにしよう。
1986年 6月25日
江戸会が敵組織の一つの秋豊組にカチコミかけることになった。俺もその部隊に編成されて戦うことになる。江戸会は相変わらず金払いがいい。命の危険が高い仕事だけあってたんまり貰える。俺もしっかり毎回敵を殺してるしな。
中規模組織だが江戸会みたいにデカくなる夢を捨てられねぇようで、江戸会に徹底抗戦を続けていやがる。秋豊組とは前にも何度か撃ちあったが、今度のカチコミで組長や若頭、その他幹部を皆殺しにして勝負を決めるようだ。
俺としても腕が鳴るぜ。とっととぶち殺して金をもらおう。
1986年 7月6日
カチコミは成功した。なんなら俺が大手柄を上げた。秋豊組長の暗殺に成功しちまった。
それだけじゃない、幹部級である相談役も俺が殺した。だが、相談役って言われたあの野郎、気持ちの悪ぃことを言い残して死にやがった……『お前の事は知ってるぞクソガキ、痛みを知れ』って言いやがった。何を知ってんだってんだ。確かにここ数か月で結構俺は戦いで貢献できて名も上がってきてるし、存在感が上がってるが、何を知ってるってんだよ気味悪い。ホモ野郎か?
1986年 7月7日。
最悪だ。最低最悪の日だ。
秋豊組の相談役、野郎の言葉がどうしても引っかかって孤児院を見に来た。
だが孤児院に入ったら、みんな死んでやがった。ガキどもも、オヤジも。
銃でハチの巣にされたんだ、みんな撃たれてやがった。恐らく秋豊組の報復だ。カチコミのあと、ほかの江戸会の組員も、女房を殺されただの、カタギの弟やら娘が殺られただの言っていた。
七夕の日だってのに最低だ。何が天の川だ、クソくらいやがれ。こんなの、三途の川じゃないか。
俺のせいなのか?
俺のせいでオヤジや、ガキ達が死んじまったってのか?
俺が悪いのかよ、そんなはずねえだろ、だって殺したのは俺じゃなくて秋豊組の誰かだ。
オヤジは孤児院の院長として、人生を捧げてた。誰がどう見たって善人なんだ、俺を拾ってくれたからオヤジなんだ。ふざけんなよヤクザども。
学校の粋がってる野郎共が好んで見てるヤクザもんのドラマ……男気溢れる任侠ヤクザなんて全部嘘っぱちだクソったれ。カタギだろうと平気で殺すし搾り取るだけ絞って食って殺す。
許せねぇよクソ野郎どもが。孤児院のみんなは関係ねぇだろ。こんな理不尽絶対許せねぇ。天涯孤独の俺からこれ以上奪うなら、誰だろうとぶっ殺してやる。
オヤジやガキどもを殺したヒットマンを必ず見つけ出してやる。秋豊組の組員どもを片っ端から尋問して、絶対に聞き出してやる。




