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ガンギマリズム3 日常編  作者: 九空のべる(旧:ジョブfree)
第二章「流転する関係」
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24. 古き記録、父の過去

その日の夜。

「ただい」

「どこ行ってた馬鹿弟子!」

漆紀が自宅の玄関を開けるなり、新南部世理架が漆紀の額へとチョップをぶち当てた。

「痛って! なんだよ! なんであんたが俺ん家に」

「放課後にいつもの場所に来なかったからだ! どこに行ってたんだ!」

「今日は友達と遊んでたんだって。まさか人間関係蔑ろにしてまで修行やれとか言わないだろうな」

「連絡くらいしろ! あと、彩那ちゃんずっと家で待ってたんだぞ! 旦那ならちゃんとしろ!」

「だからなんで世理架さんまで結婚ネタふるかなぁー!?」

「とにかく早く上がれ!」

世理架から促され、漆紀はそそくさと自宅に上がる。

「今日……竜王様が料理の番ですよ?」

リビングには少し不貞腐れた様子の彩那が体操座りでソファーにかけていた。

「あっ……ごめん、本当ごめん。今から爆速で作らせて頂きますマジごめん」

漆紀はすぐさま洗面所で手を洗ってから学ランを脱ぎ、台所に立つ。冷蔵庫の中身を見て何を作るか素早く考える。

(肉は豚バラがある。卵もある。野菜は……大根、人参、トマト、ニラ……軽く切ればすぐフライパンに投げ込めるな。缶詰の具も視野に入れろ。爆速で作るなら炒め物一択。だがただ野菜と肉の炒め物では何か足りない……今の竜蛇は不機嫌気味! 何か、何か……ああそうだ!)

冷蔵庫にある具材から漆紀が考えたメニューは。


30分後。


「待たせて悪かったな竜蛇。出来たぜ……先に食べててくれ。後片付けをしないとな」

漆紀が大皿に盛ってテーブルに置いて見せた料理は豚ニラ玉だ。

漆紀はすぐさま台所に戻って、フライパンやその他調理器具の片づけを始める。

「世理架さんも食べてっていいからなー! そのつもりで多めに作ったから!」

漆紀がそう声を張ると、世理架は「うんうん」と頷きながら「やるじゃないか」と小さく零した。

5分ほどで漆紀が片付けを終えると、既にテーブルでは彩那と世理架が茶碗に盛った白米と共に豚ニラ玉を食し始めていた。小皿に豚ニラ玉を取り、そのまま口に運んで頬張る。

「漆紀君、チャーハンに入れたりするような中華系の調味料はなかったのかい? これ醤油味がひたすら強いじゃないか」

「流石にそこは許してくれよ世理架さん……俺も食べるからなー」

漆紀は茶碗を片手に炊飯器の前に立ち、白米をそそくさと茶碗に盛る。食器棚から小皿を一枚と箸をとると、食卓につく。

「じゃー俺もいただきます。竜蛇、今日は本当に悪かった。俺が当番なのに」

「友達の家に遊びにって言ってましたけど、例のICCの?」

「そ、ICCの中でも写真とか写りたがるほう」

「なんだ、ICCって?」

聞きなれない単語に世理架は首を傾げる。

「ICCは陰キャコミュニティーの略だよ世理架さん」

「陰キャってのが何なのだ。わけがわからない造語だ」

世理架の反応から彩那は「あ~」と声を漏らす。

「とりあえず世理架さんがかなり歳いってる事は今の反応でわかりました」

「はぁ!? わ、わたしをからかってるのか? わたしはこれでも……これでも見た目女子高生で通ってるんだぞ!」

「どこで通ってんだよ世理架さんそれ」

「世理架さん、見た目だけめっちゃ若いけど実年齢50歳とかとうに超えてるんじゃないですか? 魔法使いならなおさらその線高い気がしますけど」

「わたしの年齢を知りたいなら私と結こ」

「もうそのネタいいから世理架さん。それ父さんにもどうせ何度も言ってたんじゃないの?」

「もちろん言ったぞ。婚姻届付きで」

「聞くんじゃなかった」

漆紀、彩那、世理架、少なくとも三人は食卓を囲える程度には友好な関係であることは確かであった。

______________________________


食事を終えて片付けを済ませた漆紀は自分の部屋に戻るべく階段を上がる。世理架は食事を終えると潔く帰って行った。彩那は相変わらず真紀の部屋に泊まるつもりのようだ。

二階の廊下に出ると、ふと漆紀は父・宗一の部屋に目が行く。

「……」

漆紀は扉を開けて宗一の部屋に入る。特に遺品についてあれこれ動かすことはしていない。部屋は宗一の生前そのままであり、漆紀は部屋を見渡す。

(目立つものはない。整えてある部屋……いつも父さんが使ってるノートパソコンも机に置きっぱなし……)

漆紀は本棚に近づき、眺める。

(害虫・害獣に関する本、水道の本、銃の手入れ、狩猟に関する教本……仕事の本が多い……ん?)

本棚の一番下列、目に付きにくい低い位置に本ではなくノートが何冊も入っていた。

「このノートは?」

一番左端のノートから手に取る。色の劣化から見てかなり古びたノートであるが、表紙には「日記1」とマジックペンで書かれている。

「父さんの日記……」

父の日記。思い返すと、宗一は自分の過去について一切話したことがなく、初めて父の過去について聞いたのも世理架の口からだった。

「読んで……みるか」

漆紀は少々の好奇心を持ちながら日記を開いた。

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