22. 烏丸宅へ行こう
平野小太郎は、かつての夜露死苦隊の構成員達に接触を試み、そのバックにいた萩原組の関係者にも話を聞くべく街をひたすら奔走していた。
夜露死苦隊のとある構成員の母親はこう言った。
「ウチのクソガキが死んでくれて清々するよ。あんなロクデナシになった挙句、マシン改造のために金ばっかせびりやがって。死んで保険金も来てホクホクだわ」
また、萩原組のとある組員の父親と弟はこう言った。
「親ながら、俺はあいつが死んでくれた方が助かったんだがなぁ。保険金がよ……萩原組を殺ったやつ、今からでもウチの馬鹿殺ってくんねえかなあ」
「親父言い過ぎじゃね? まあ、兄貴がクソだったのは確かだが。女から堕ろす金とかせびってきたりマジでクソだったな」
また、萩原組のとある組員の妻はこう言った。
「ウチのクソ旦那生き残っちゃったの。屋敷にいなくてね。死んだら保険金でがっぽがっぽだけどねぇ。まあ、正直なところ生きてても仕方ないやつだと思うわ。ヤクザや暴走族なんかクソよクソ。死んで当然。昔はあんなクズじゃなかったのになぁ」
どの親族も、萩原組の組員や夜露死苦隊の構成員だった家族に対してうんざりしていて親族の情が完全に切れていることがわかった。
この事実を知り、小太郎は自宅で状況を整理する。
(まず、萩原組や夜露死苦隊の遺族の中で、その死について悲しんでいる者が一人も……たった一人もいないのは意外だった。どんなに悪人でも一人くらいそういう人がいると思ったが……)
遺族は当人が死んだことでむしろ喜ぶ者さえいた。
(遺族に被害者意識は一切なし。むしろ喜んでいた……これでは、実際に出た被害者の死に対して、加害者へ追及する構図は生まれない。つまり、辰上氏は誰にも……魔法ならば、法にさえ追及されない。もし追及する者がいるとしたら、死んでしまった当人達だけ。でも当人は死んでるから……)
小太郎は悩んだ。被害者は死んでおり遺族に被害意識はないからある意味被害者がいない状況である。
(悪いのは……やはり辰上氏にほかならないか? でも……)
友人という名のフィルターがまたもや小太郎を悩ませる。
(……かといって、辰上氏を殺すと言い張る親父殿が正しいかと問われれば……引っかかるのだ、正しいはずがないと)
正しさがわからない。絶対的な正しさなどきっとこの世にはないのだろう。
ならば最後に判断材料があるとすれば。
「結局は、感情……ってことか」
自分がどうしたいか。そう小太郎は結論付けた。
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翌日、月曜日。
武蔵多摩高等学校は昼休みの時間帯。
漆紀の席に相変わらず小太郎や蒼白、七海がやってきて大した益などない雑談を始めるが、ふいに七海が提案を出す。
「烏丸、お前ん家って暇?」
「家が暇ってどういう表現だよ下田……オレん家?」
「クソゲーをやっているのなら、拙者のようなキモオタ向けゲームのクソゲーもあるのでござろう? 遊びに行っても良いですかな?」
「いいけど野郎の部屋なんて汚いもんだからな」
蒼白が自室の状況について予防線を張るものの、話の流れとしては蒼白の家に遊びに行く運びとなった。
漆紀もなんとなく友達の家に遊びにいくという高校生らしい行動に惹かれるものを感じたのか興味を示した。
「烏丸ん家か……クソゲーだらけだろうけど、俺も行くか。どんなヤバいクソゲー持ってるのかは少し気になってたし。んで、いつ行く?」
「拙者としてはできれば今日放課後に……」
「だな。アタシも放課後どうせ暇だし」
「お前ら思いつきからの行動が早すぎたっての。オイ、辰上はどうすんだ?」
「俺も今日の放課後で問題ない、いけるぞ」
「よし、決まりでござるな」
そこで漆紀はふと一つ聞きたいことが思い浮かぶ。
「他のICCのイツメンは呼ばないのか?」
そう聞くと、小太郎や七海は少々表情を曇らせる。
「アタシが思うにあいつら友達の家に遊びに行くって行動自体を陽キャがやるもんって言って臭がってるんだよなぁ。写真とか撮ろうっていっても写りたがらないし」
「拙者も人間関係に関して淡泊すぎるのもいかがなものかとは思いますぞ。彼らは誘うだけ誘ってみても良いですが、おそらく乗らないと思いますぞ」
「んじゃ、連絡してみっか」
漆紀が蒼白の家にて集まって遊ぶ旨をSNSのグループに書き込むが、すぐに返事は返されない。
「では、今日の放課後ということでよろしいですな?」
「いいぜ、オレん家クソゲーばっかだけど」




