21. 固有魔法
日曜日。
世理架は漆紀の自宅で魔法のことについて授業をしていた。
「魔法使いは血筋もあるが、唐突に才覚が現れる場合もある。いわゆる無自覚の魔法使いってヤツだ」
「へえ。世理架さん、その理論だと世の中には案外魔法使いがたくさんいるってことで?」
「ああ。本当に小さなことでも魔法を発揮してたりする。ものを保温、温めたり、脚力や腕力を僅かに上げたり、気付かないレベルの微妙な魔法だと無自覚だったりするからな」
漆紀と世理架の他にもう一人、彩那もこの場に来ていた。
「えーっと、私が知る限りだと魔法使いには精霊術とか召喚術とか、そういう型に当てはまらない……アメコミのミュータントみたいな固有の特殊能力の魔法使いが存在すると聞いてますが、これってどういう人たちなんです?」
体系化された魔法に当てはまらない、その人だけの固有の魔法を生まれ持った魔法使いの存在について彩那が世理架に問いかける。
「ああ。あれについては未だに理屈が判明してないんだ。ただ、どういう人間が固有魔法を持ちやすいとか傾向はわかっている。独自の価値観を持つ者、そういう者が固有魔法を持ってたりする。他人に理解されにくい独自の価値観ってやつだね」
「へぇ……でも、固有魔法ってどんなのが例えばあるんで?」
固有魔法といわれてもイメージが全く思い浮かばない漆紀は世理架に具体例を求める。
「固有魔法はその人限定で人によりけりだが……そうだな、空気を圧縮するとか、瞬間移動ができるとか、変身できるとか……魔法っていうよりミュータントみたいな感じだな」
「ところで世理架さん、ご自身は?」
ふと思い立った彩那が世理架にそう問うが、世理架は首を横に振る。
「わたしに固有魔法はない。ただ歳だけ重ねてる魔法使いってだけさ」
かくいう彩那はまだ疑問がある様子で手を挙げる。
「というか、世理架さんほんと何者なんです? 竜王様のそばに居る立場の私としてはちゃんと把握しておきたいんですけど……」
立ち上がるなり少し威圧を含んだ笑みを浮かべつつ彩那がそう問いかけるが、世理架は全く表情を変えることなく突っぱねる。
「わたしの素性を知りたいなら結婚しろといつも言ってるが」
「そういうネタとか要らないので。あの、ほんと何者なんです?」
決して彩那がぶれずにそう問いかける。
「しつこいなぁ。まあカルトならしつこくないと務まらなさそうだけどさ。人には知られたくない事の一つや二つってあるもんなんだからさ。それに、漆紀君を鍛えてる時点でわたしが害になることはまずないってわかるだろう? 状況から相手を推し量ることも重要だよ彩那ちゃん」
「ぬ……わ、わかりましたよ。ただ、私が常に目配りしていることは忘れないでくださいよ」
彩那は引き下がって歯ぎしりしながら座る。
「ふと思ったんだけどさ世理架さん。独自の価値観持ってるヤツが固有魔法持ちならさ……俺と竜蛇以外にも、学校に魔法使いが居たりするってことなのか?」
「いる可能性はある。といっても、誰なのかとか無理に調べる必要はないと思うよ。今まで君たちが無事であることがその証拠だ」
「頭のおかしい魔法使いだったら、全校生徒皆殺しとかありえそうですもんね」
「え?」
彩那が何気なく放った物騒な予想に漆紀は目を丸くしてしまう。
「そうだ。だから、学校に君たち以外の魔法使いが居たとしても常識はある人物のはずだ」
「じゃあ気にしなくていいな」
そう結論を出して、漆紀は違う話を世理架に求めた。




